第15話 アパートへの訪問者

 小屋でリュノと別れ、大樹さんや朱里ちゃんと会った日から5日経った木曜日、大学の講義が終わりアパートに帰ってくると、ドアの前に女子高生が制服姿で座り込んで居た。

 女子高生は近づく俺に気付くと、ジロッとコチラを見ながら立ち上がり…って朱里ちゃんだ。

艶のある黒髪をポニーテイルにまとめた制服姿は、凛々しい顔立ちの朱里ちゃんに似合っていて、この前の印象とガラッと変わってなかなか破壊力がある…じゃなくて


「朱里ちゃん?どうしたの?」

「小屋の扉がまた開いたみたいだから連絡したんだけど、繋がらないからコッチに来てみた」


へっ!?…あっホントだ。1時間前に着信あるや…マナーモードにしてカバンに突っ込んでいたから気づかなかったよ…しかし、いきなり来るとはアグレッシブだな…


「ご、ごめん、気づかなかった!とりあえず直ぐに開けるから、ちょっと待って」


そう言って部屋の鍵を取り出してると、アパートの隣の部屋のドアが開いた。


「おい藤堂、知り合いか?こんな可愛い女子高生を外に待たせておくなんてどういうことだ?色々許せねぇんだけど……というかねぇ君、大丈夫?だまされてない?」

そう言って、コチラに青筋を浮かべながら、朱里に愛想笑いを浮かべながら出てきたのは、同じ大学に通う1年先輩の隣人(彼女居た気配なし)だった。

 うわっまたややこしいことに…


「いや、この子は知り合いの娘さんで」

1番穏便にすむように説明しようとすると

「和真君は今1番気になる人」

と朱里ちゃんがぶっ込んできた。

(…おい!)

(中途半端だと紹介してとか何とか面倒そうだし…それに今異世界のことで気になるのは嘘じゃないし〜)


何かダメージを受けてのけ反っている先輩にアハハッ冗談ですよーと愛想笑いをしながら、もう早く部屋に逃げ込むしかない!と思い、ドアの鍵をガチャッと開けてドアノブを回し、ドアを開けようとした。


 すると、ドアから白い手がにゅっと出てきて、ドアを開きかけた俺の腕をガシッと掴んだ!


「うわあっ!!」


思わず悲鳴をあげてドアを閉めて固まっていると、ドアから顔が現れて!…あっリュノじゃん…いや、登場が怖すぎだって


動揺が治まり我に返って周りを見ると、朱里ちゃんも隣人の先輩も驚いて後ずさったあと、正気を疑うような目でコッチを見てた。


…またやっちまった。

言い訳も思いつかずにいると、


「部屋見られるとマズい状態だからって叫び過ぎだろ藤堂。お嬢さん、藤堂の部屋が片付くまで俺の部屋で待ちませんか?」

「和真君、エロ本くらいなら大丈夫だよ?」

と先輩と朱里ちゃんが言ってきた。


「いや、違うから!」

「え?和真君、実はそんなにマニアックなの?」

待て待て、なぜそうなる?


『カズマ、誰?』

「『えっと女の子はこっちの世界で助けてくれる協力者って感じかな?』」

あっ、またリュノの問いに声を出して答えてしまった!


「あぁ!こっちの世界ってどんな世界なの!?私は和真君のマニアックな趣味に染められるのね!」

それを受けて朱里ちゃんが身をくねらせて応え…あぁ!そのニマニマした顔は感づいているだろ!


「藤堂おまえ…」

先輩の白い目が突き刺さる…!!


「じょ、冗談ですよ~。さ、朱里ちゃん隠す物はないんで、どうぞどうぞ〜」


「和真君〜?そう言いながら動きがぎこちないんだけど〜?」


くっ!それはリュノがつっかえているからね!?


「お嬢さん、ヤバかったら叫びなよ!直ぐに駆けつけて警察呼ぶから!藤堂、何かあったら許さんぞ!」


「ちょ、だ、大丈夫ですから!先輩は部屋にお戻り下さい!」


勘違いの正義感から一緒に部屋に入ってこようとする先輩をなんとか押し戻し、リュノとニマニマしている朱里と部屋に入るのだった。


…くそ〜、リュノが絡むとポンコツ化が止まらん…何でや

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る