第2話 蛍?の正体

きゃっっ!って誰の声?


 気付かない内に後ろに女性でもいたのかと思い、後ろを振り返るが、近くには誰もいなかった。


「え~~っと?」


 不思議に思い周りを見渡すと、先ほど思わず叩き落した蛍(?)が地面でピクピクしていた。


「あれ?」


 羽の下が黒っぽい色の蛍ではなかった。

というか、昆虫のフォルムではなく、人のような…


いやいやいやっ!!


 混乱しながら凝視すると、ピクピクしていた何かが振り向きばっちり目が合った。

するとその何かは目を見開きしばらく動きを止めたあと、


『見えてる?っていうか触れた!?聞こえてるなら助けて!』


と問いかけてきた。


「ななな、何だと?」


思わずしどろもどろにつぶやくと


『そうじゃない。しゃべるのじゃなく、おもいを念じて』


と伝えてきた。


えっと!?何?ってことはテレパシー的な?

というかコレって俺にしか聞こえてないの!?

周りに人は……いないし!とゆーか、あっちの蛍見てる人らはコレ見えて無かったっぽいよな!?

うわっ、何?助けて?伝えて?ここは見えない聞こえないふりをして…は今更無理か!?

ってか叩き落としたの俺だし逃げるのも非道いか…とりあえず話を聞くか?


と俺は散々混乱してアタフタしたあげく、念じるってどうやるんだと思いながら相手を見すえて


『まず、えーと誰?というか何者?一体どういうこと?』


と強く思ってみた。すると、


『そう、それで伝わる。私は違う世界から来た妖精族のリュノ。あなたはこの世界の猿族?』


と返事が届いた。


「『誰がサルだ!!ニンゲンだ!ニンゲン!』」


思わず激しく反応してしまうと、相手は申し訳なさそうに片手を挙げた。


『あぁ、“ニンゲン”っていう種族名なのね。ゴメンね。イメージで伝わるのよ。私の中では2足歩行の知能が高いのは猿族なので。ちなみに私の種族名は“フーリル”よ。そして名前がリュノ・アンミ。…あと気付いてないかもしれないけど貴方あなた、かなり大きな声で叫んでたよ。』


それを聞いてハッとして周りを見渡すと、向こうの蛍を見ていた人達が怪訝けげんそうにこちらを見ていた。

うわっ、1人で変なことを叫ぶ怪しい奴になってるじゃねーか。

それに確かに人と猿は遺伝子的にほぼ同じというから…。

いや今はそんなことに引っかかっている場合ではないな。

とりあえず話を聞かないとどうにもならんし、この道の途中で立ったまま聞くのは辛い、とゆーか早くここから移動したい…。


『分かった。それじゃあ、えっとリュノ・アンミ?さん、状況を詳しく聞くから、とりあえず移動しよう』


『リュノだけで良いよ。うーん、飛ぶのも力使うから連れて行ってくれない?』


…う~む。

『手をだしたらんだりしないか?』


びくびくしながらリュノに近づき手を伸ばすと、


『聞こえてるわよ…。私はねずみか!』


とプンプンしながら手の上に乗ってきた。

 乗ってきたリュノを改めて見るとホントに小さい人間に美しい透明の羽が生えている感じで、透き通るような白い肌に腰まである蒼い髪をしており、スタイルの良い体をボディーラインが強調されるようなぴっちりとした黒色のレオタードのような服で覆っていた。

 リュノは手に乗った時に驚いたような顔をしたあと、興味深く手の感触を確かめているようだった。


 問題なさそうなので落とさないように気をつけながら立ち上がると、

『それで、貴方は何て名前なの?』

と問いかけてきた。


『俺は………これで名乗ったら変な契約を結ばれたりしないだろうか?』


思わず連想してしまい答えに躊躇ちゅうちょすると、


『だから聞こえてるって…。私は悪魔か!さっきから、もう!!』


と頰を膨らまして睨んできた。ただそのリュノの顔が可愛く見えたので


『あぁ、ニンゲンの藤堂とうどう 和真かずま、カズマって呼んだら良い』


と少し顔を逸らしながら答えて、足早にテントに向かった。

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