28. B11階
胡桃の動画配信を始めてから一か月が経った。B6階までの探索動画を配信したが、思うように登録者が伸びず、3人の間に停滞感のようなものが漂っていた。
「小次郎さん」と胡桃は口を尖らせる。「どういうことですか? 小次郎さんに任せれば、人気が出ること間違いなしだと思ったんですが」
「いや、拙者もインフルエンサーでは無いゆえ、伸びる配信作りなどはわからないでござるよ」
「詐欺だー!」
「まぁまぁ、胡桃。小次郎さんだって、一生懸命やってくれているんだから、それは失礼なんじゃないかな」
「でも~」
「これは僕の意見なんだけど、胡桃の動画には役立つ情報みたいなものが少ないんじゃないかな?」
「役立つ情報ねぇ。確かに、そういうのがあれば見てくれるかも。小次郎さん、何か良いアイデアはありませんか?」
「そうでござるな……。あぁ、そうだ。B11階に行ってみるのはどうでござるか?」
B11階と言った時、カベツヨの眉がかすかに動いたのを佐助は見逃さなかった。が、気づかなかったフリをして、話を続ける。
「あそこには、倒すとレベルが上がるレアスライムがいるでござる。だから、レアスライム狩りによるレベル上げっていうのはどうでござるか?」
「あ~。それはいいかも。でも、B11階ってモンスターのレベル帯はどうなってるの?」
「まぁ、5~25くらいでござる。が、拙者とカベツヨ殿がいれば、何とか対応できるでござる。カベツヨ殿はどうでござろうか?」
「そう、ですね。レアスライム狩りは人が集まるかもしれません」
「でも、レアスライムなんて簡単に見つかるもんなの?」
「拙者に秘策があるでござる」
「ふーん。なら、いいか」
こうして3人は、次の企画としてB11階でレアスライムを探すこととなった。
そして後日。3人は転送局からB11階へ移動し、レアスライム狩りを始めた。始めてから10分ほどでレアスライムを見つけ、佐助の協力もあって、胡桃はレアスライムを倒すことに成功する。胡桃のレベルは、10から13まで一気に上昇した。
「すごい! これならすぐにレベルが上がるじゃん!」
「左様でござろう。では、もっと探すでござるよ」
それから2時間ほど探し回るも目的のモンスターを見つけるができず、重い雰囲気が流れる。配信をいったん中断し、休憩することになった。佐助が胡桃の隣に座り、休んでいると、カベツヨからスマホにメッセージがあった。カベツヨはトイレに行くと言って、2人から離れていたのだが、紙を忘れてしまったらしい。
「……ちょっと、カベツヨさんのところに行ってくるでござる」
「ん。何か問題が発生したの?」
「まぁ、そんなところでござる」
佐助は森の中を進み、カベツヨに言われた場所に向かう。そこは開けた場所だった。佐助は、カベツヨを見て眉をひそめる。用を足しているようには見えなかった。
「あのカベツヨ殿」
「わざわざすみませんねぇ。でも、あなたはここで用済みなので」
「何? それはどういう意味でござるか?」
カベツヨは不敵な笑みで手を叩いた。瞬間、上から4つの影。ゴブリンである。ゴブリンは佐助を地面に押し付けた。
「なっ、これはどういうことでござるか!」
「ふふっ、言ったでしょ。あなたはもう用済みだと」
カベツヨの背後から巨体のオークが現れ、佐助に歩み寄る。佐助は必死にもがいて逃れようとするもゴブリンたちから逃れることができなかった。そしてオークは、持っていた棍棒を佐助の頭部に向かって振り下ろした――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます