27. 調査結果
朱雀とはB4階にある洞穴で会った。胡桃をB1階で見送った後、朱雀のもとへ駆けつける。
「お待たせしたでござる」
「大丈夫。私もちょうど今、来たところだ。それで、今回話したいことについてだが、あのカベツヨとかいう男についてだ。まず、結論を言うと、彼は嘘を吐いていた。2年のブランクがあると言っていたが、どうやら1年前から頻繁にダンジョンを訪れていたようだ」
朱雀がスマホの画面を見せる。そこには、様々な日付とともにダンジョンを訪れるカベツヨの姿が映し出されていた。
「よくわかったでござるな。過去の動画を見返すのは、大変だったのでは?」
「そこはAIの力で何とかしたよ」
「外の世界も中々にファンタジーでござるな」
「で、この男がダンジョンに来て何をしていたかについてなんだが、動画の中に、私の見知った人間と映っている動画があってね。その人を頼りに調査した結果、テイマーとして活動していたことがわかった」
「テイマーって、モンスターを使役するジョブのことでござるか?」
「そうだ。1年位前に、テイマーの寄り合いに顔を出しては、モンスターの育成方法などを熱心に聞いていたそうだよ。しかも名前まで変えて」
「名前を変えて、テイマーの寄り合いに参加する……。何のために?」
「さぁ? 私が話を聞いた人によると、目的まではわからなかったそうだ。でも、とても熱心に聞いていたそうだよ」
「なるほど。というか、その人もよく覚えていたでござるな」
「ああ。それは、その人が、彼の事故現場に遭遇していたからだよ」
「事故? もしかして、恋人が亡くなったという?」
「知っていたのか」
「胡桃殿から偶然聞いたのでござる」
「なら、話が早い。2年前、彼は恋人とダンジョンを探索中に強力なモンスターに襲われ、恋人を殺されてしまった。その人は、救助のためにその現場に駆けつけて、失意に沈むカベツヨの姿を目撃していたらしい。だから、再び現れた彼のことが強く印象に残っていた。あの事故があったのに、またダンジョン探索をやるつもりなのか、って驚いたそうだよ」
「ふむ。確かに、拙者も驚くであろうな」
「以上が私の知る情報だよ。君の方で、何かわかったことはあるかい?」
「それで言うと、あの男はまだテイマーとして活動しているみたいでござる。先ほどまで一緒に行動していて、彼が1人で行動すると言っていたので、分身に尾行させたのでござるが、あの男はB11階の森でゴブリンやオークの調教を行っていたでござる。わざわざ隠し持っていたジョブの実を食べた後に。レベルは30くらいだったでござる」
「そうか。ゴブリンとオーク……。なぜ、そいつらを育成しているのかは気になるな。しかも、B11階はレベル帯が25くらいだから、そこそこ強いモンスターということになる」
「どうするでござる?」
「目的が分からないからな。引き続き、監視するしかなさそうだね」
「そのことについてなんでござるが、罠を張ってもよろしいか?」
「罠?」
佐助は不敵な笑みを浮かべて答える。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず。冒険者なら、知りたいことは危険を冒して知るものでござるよ」
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