異世界生活・5日目

ここに来てから5日も経っていたなんて信じられません。毎日が充実しているからでしょうか?日本に帰りたい…と思うこともありますが、意外とここの生活も悪くありません。

日本ではとにかく色と音と情報に溢れていて、心の底から休めた事は無かったように思います。ここの暮らしはとにかく穏やかで、静かです。夜は本当に暗いですが、月の明かりがこんなにも美しくて明るいなんて知りませんでした。夜でも自分の影が見えるなんて!


夜の月明かりも良いのですが、夜明けの空も良いのです。ここの皆さんは朝早くからお仕事をするので、私も同じように行動します。

夜明け前に目覚めて、身支度を整えるのですが顔を洗うために外の井戸で水を汲んでいると、深い青の空が徐々に明るくなります。枕草子の一節を思い出して、どこの世界も自然が見せる美しさは変わらないのだな…と少し感動しました。


今日は休息日といって、日本で言う日曜日のような日です。娯楽施設などないこの街では休息日にピクニックをするのがお約束。私が子供達と花冠を作った丘も、家族連れで賑わっています。日本のお花見のような感じですね。


休息日に伝統菓子を食べるのもこの世界の定番です。ポルポーロと呼ばれるナッツやドライフルーツを混ぜた生地を細長く伸ばし、三つ編み状にして揚げたもので、これが素朴ながらも美味しいんです。最近はとても固いクッキーのようなポルポーロも売られてるのよ!と近所の奥様が教えてくれました。形は三つ編み状になっているので、三つ編みなのがポイントのようです。


教会では朝からエドさん、マルクスさん、マーサさんがお祈りに訪れる人達の相手をしています。休息日は特別な祈りをする日なので、いつものように大勢が一斉にお祈りをするのではなく、一人ずつ女神像の足に触れながら感謝の祈りを捧げるのだそうです。

私もお手伝いを…と思ったのですが、休息日の風習を知らない私の為に、こうして丘まで足を運ぶ時間を作ってくれました。優しさが嬉しいですね。


様々な種類のポルポーロを頂いたので、孤児院の子供達にもお裾分けすることにしました。教会の分は別で受け取っていますよ。きっと、私が子供達に分けることを見越して沢山頂いたのだと思います。子供たちも、沢山のポルポーロに大喜びでした。その後は孤児院の庭で少し遊んで、教会に戻りました。


人波も落ち着いた頃だったので、頂いたお菓子でお茶にしました。エドさんが「このように忙しい休息日は初めてです」と言っていました。3人には休んでもらって、夕方の礼拝前にかるく掃除をしておきます。なんとなく、この忙しさは自分のせいなんじゃないかと思ったので…


そういえば、女神様のお花もそろそろ交換したいなっておもいました。お花はまだまだ枯れそうにないですが。女神様もずっと同じものは飽きますよね…?そんな風に思いながらお祈りしていると、女神像が肯定するように点滅していました。

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