くじらの●


 しゃわしゅわと滝のような水飛沫を上げて、

 塗りつぶされる×に浮かぶクレーター。

 あぁ、ごめんね、今日も失敗。

 闇を削る棘のような空気に溺れて、

 うまく呼吸ができなくて。


 喧騒の波に飲み込まれて、

 黒渦のため息を吐き出して、

 晴れた夜空も冷めた青海も、

 いつものように曖昧で切れ目がない。


 一方通行の海流の、

 袋小路にたどり着いて、

 角も丸も詰め込まれたそびえる小岩に、

 つんとそっぽ向いて背を向ければ、

 誰かの噂話も耳には届かない。


 流れ木の枕を高くして宵の眠りにつけば、

 真夏に垂らしたぬるま湯のような水面が、

 頭のてっぺんを夜に濡らす。


 瞼を閉ざして、くしゃみして、

 風切り花の鋭い香りに包まれても、

 太陽も遥か彼方に逃げ惑い、

 波も離れて夜に姿を隠してく。


 そっか、僕は、ずっと独りぼっち。

 明日はきっと、

 真ん丸の夜天光に照らされて、

 人魚と妖精が踊るような、

 子守唄に包まれて眠りたいな。


 そんなふうに、かすかな願いは迷子の☆に煌めいて、

 ●を濃くしたの月は、やがて深い海の底へ沈んでく。



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