ムーンフェイス


 恋愛中毒の君には、何を話してもさ、一切のムダね。

 窓際に咲いた金木犀きんもくせいの香りに鼻をつまんでも、

 指にからまるよ、君の飲み干した愛のジュース。

 胸の上っ面に、盲目の灰汁あくが溜まるの。


 朱く染まった夕暮れと朝焼けをリピートして、

 幸せと不仕合せの鼻歌をつなぎ合わせては、

 つながらない誘惑の煙を夢想してくよ。


「恋に味はあるの?」とキスをして、

 向かい側の窓に反射するまんまる満月を、

 無言で瞳にかき集めて、

 君を抱いたまま夜を忘れた頃に、

 浅い眠りにつくの。


 まぁ、いっか。

 私もたぶん、恋愛中毒。




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