5話 デートという困難
「ねぇねぇ、デートしようよ!」
「早速行くのか?」
余りにも急過ぎるのではないのだろうか?しかも今は一応授業中な訳だし流石に警察とかに声を掛けられるのではないだろうか?
「もし警察とかに声掛けられても「私達紅美高の特例です」って言えば逃げられるよ」
「…逃げられる?」
「うん、逃げられる」
「一体何があったんだ?」
「知らなーい、けど先輩達がやらしまくった結果「紅美高の特例に会ったら全力で逃げろ」って教えられるんだって」
「そこまで酷いのか!?」
私達の先輩はどんだけやらかしたんだ?警察の方に逃げられるとか警察署に攻め込んだりしたのか?
「とにかく!行こうよー!」
「わかった、わかったから揺らすな」
「やった!」
きっとこれからも学校を抜け出すことになると考えると胃が痛くなるな…
というか流石に何も言わずに学校を抜け出すのは問題があるだろう。いや、特例クラスだから問題ないか?まあいい、言っておいて損はないだろう
「一先ず教師に一言言ってから行こう」
「わかった」
「せんせー!私達デートしてくるね!」
「おう行って来い。というか今度から言わなくてもいいぞ」
「そんなんでいいのか…」
「こんなんじゃなきゃやってらんねぇよ!というかそろそろ道懸の「百合に挟まるな、殺すぞ」って視線が痛いから早く行け。頼む、早く行ってくれ。やばいやばい!目がキマってきてるから!頼む!近付いて来てる!やb…あっ(察し)」
「天誅」
「ぐわぁぁぁ!!!」
道懸が台田に向かって勢いよく手刀を放つ。私の動体視力でギリギリ見えたから恐らく常人なら首の骨が粉砕される威力だろう。
台田が勢いよく床に倒れ込む。哀れ、台田
『R.I.P.』(全員)
「勝手に殺すな!」
「え…今ので死なないんだ…」
「殺す気でやったってコト!?」
「本当に人間?」
「人間だが?逸般人だが?」
「逸般人…一般じゃないんだね」
「そうだぞ、というかそうじゃなかったら俺もう死んでる」
「それじゃあもっと耐えられるね」
「ヒェッ」
「……先生強く生きてください」
「私達はデートに行ってくるから!じゃねー!」
「この薄情者共がぁぁぁ!!」
「ばいばい」
多分台田はあの雑な扱いで合ってるんだろう。少し楽しそうだったし。
…今悲鳴聞こえたな。
「それで、何処に行くんだ?」
「まずー服買いに行こうよ!どうせ興味無くてオシャレしてないんでしょ」
「ああ、確かに無駄だと思ったからしていなかった」
「勿体ないなー!せっかく素は良いのに!」
「やめろ、近い」
「えー?まだ馴れてない?」
「あぁ、馴れてない。だから密着するな」
「えいっ」
「聞こえていなかったのか!?密着するなって言ったんだ!」
また忍に抱き着かれる。何か友達になってからスキンシップというかボディタッチが増えた気がする。というか震えが止まらないので早く離れて欲しい
「えー?でも満更でもなさそうだね」
「…ノンデリ変態馬鹿やめろ」
「えっ…ノ、ノンデリ…変態…馬鹿…ぐはっ」
「そこまでなのか!?」
忍が吐血しながら地面にへたり込む。ノンデリや変態はそこまで酷い言葉じゃないはずなんだが…あの脳筋弁護士に言っても吐血まではしなかったはず。白目剥いて気絶はしたけど
「ふぅ…ふぅ…今のは効いた。だけど、好きな人からのジト目&罵り…ちょっと興奮したかも…」
「変な道に行かないでくれ」
「あ、安心して。そんな事はないよ。……多分、きっと、めいびー」
「余計に心配になった」
忍が変な扉を開いてしまったら裏切られるより深刻な傷を負うかもしれない…
「よしっ、切り替えよ。もうすぐ着くけど何か着たい服とかある?」
「忍が好きなのでいい。私は何も分らないし」
「言質は取ったよ!いっぱい着てもらうからね!」
「…失敗したか?」
何か、凄い嫌な感じがする。もしかして私はとんでもない事を言ってしまったのか?いや、そんはずはない。唯の買い物だ、そんな何時間も掛かる訳がない。
「いらっしゃいませー!」
「それじゃ、早速選ぼっか」
「頼んだ」
「頼まれた!」
忍は意気揚々と飛び出して服を選んでいく。
「うーんこれも似合いそう。あっ!これも!あっちも」
「………」
…やばいかもしれない。なんか両腕を塞ぐ勢いで服を選んでいくんだが?これ全部着るのか?私が?いやいやいや、流石に多過ぎる。こんな量着ていたらいつ終わるのか分かったものではない。
「これを全部着るのか?」
「え?そうだよ?」
「……本当に?」
「本当に」
終わった…どうしたらこんな量の服を着るという発想になるんだ?いくら何でも多過ぎるだろう。というか一番気になるのはメイド服や執事服が入ってる事だ。私にコスプレさせようとしてるのか?
「いやー、英理歌って髪型ショートだし男装似合いそうだからついつい沢山着させたくなっちゃうんだよね」
「だからってその量はやり過ぎじゃないか?」
「全然やり過ぎじゃないよ!とーにーかーく!さっさと試着室へゴー!」
「押すなっ!」
「いやー、沢山買っちゃったね!」
「私は着せ替え人形じゃないし荷物持ちでもない。次は絶対に拒否する」
今日は散々な目にあった、二時間ほどファッションショーの様な物をして数着購入した。
もう二度と絶対に服を忍と買いに行かない。こんな事を毎回していたら私の精神が擦り切れる。絶対に行かない。
「えー!やだやだやだー!」
「幼児みたいに騒ぐな!注目されて不愉快極まりない」
「ボクのせいなの!?ボクじゃなくて英理歌が綺麗なせいだよ!」
「……そうか、その、忍も可愛いぞ」
「っ!や……や……やったー!ついに英理歌がデレた!デレ期だ!録音しとけば良かった!」
「や、やめろ!」
「えへへへへ、嬉しいな。だって英理歌も私に心を開き始めてるって事でしょ?」
「それは…私にも分らない」
純粋な好意にどう対応すればいいのか分らない。今まで他人に純粋な好意を抱かれた事なんて無かった。幼馴染は何か…こう…ねっとりしていた。だから、どうすればいいんだ?私がどういう感情なのかも分らないしどう対応すればいいのかも分らない。
『おい、逃げろ』
「分かった。忍、さっさと帰ろう。」
「え?突然どうしたの?」
「あの黒フード、多分やばい」
「う、うん。分かった」
忍の手を引き人混みに逆らい早歩きで人混みを抜けていく。女はやはり私達が目標の様でピッタリと後ろについてきている。何処かで撒かないと絶対に面倒な事になる、それだけは避けないとならない。
『おい!後ろ!』
「どうし…」
「お前のせいで!」
「え?」
ナイフを忍に向かって振り下ろそうとしている女と唖然としている忍の姿があった。
────ザシュッ
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