藍晶水仙の後悔

プロローグ 報われなくても

私には幼馴染みが居た。

小さい頃からずっと一緒で、とっても仲が良かった。

遊ぶ時も、学校生活も、祭りを見に行った時も、何をする時も一緒で。笑ったり、泣いたり、多くのコトを共有してきた。


そんな本物の姉妹みたいに過ごして来て中学生になった頃、ある事が起きちゃった。

その幼馴染み…英理歌の両親が通り魔に殺されちゃったんだ。英理歌も、私も、私の肉親もとっても悲しんだ。

葬儀の時は英理歌と私でずっと泣いてて、そのまま泣きつかれて二人して寝ちゃったかな。


あ、ごめんね、関係ない話しちゃって。

その後英理歌は身寄りが無くて私の家に来たんだ。あの時は英理歌と家族になれる嬉しさで悲しみなんて吹っ飛んじゃって凄いはしゃいじゃった。


そしてね、そうやって家族になって過ごして行く内にね段々肉親が狂い始めたの。

英理歌の両親はお金持ちだったから遺産が沢山あったみたいで、その遺産が英理歌に相続される事になったんだ。だけど、その時英理歌は幼くて管理ができないだろう。って私の肉親が管理したんだ。


最初の方はお金にも手を着けないで放置してたんだ。だけど、おじいちゃんが病気になって入院しちゃって、その治療費とかに少しだけ使っちゃったの。

そしたらね、一度使ったからなのかちょっとした物の買い替えとかにも使うようになって、どんどん気軽に使っていっちゃたんだ。

それと同時に性格も変わって凄く醜い物に見えてきたんだ。


私は永遠にあれを両親だとは思わないよ。あれは血の繋がっただけの物。英理歌を傷付けたんだからあれを人間だなんて絶対に認めない。



次に私の事だね。

私は英理歌が家に来てから何か気持ちが落ち着かなかったんだ。英理歌と居るとずっと胸がドキドキして、風邪じゃないのに体が熱くて、もっと英理歌と一緒に居たい

そんな気持ちが止まらなくて、収まるどころか日が経つにつれて大きくなっていったんだ。


私はどうすればいいか分からなくて友達に聞いたの。

そしたら「それは恋というモノですじゃ、いやーとうとう(長くなるので以下略)」って言われて初めて私が英理歌に恋してるって分かったんだ。


私が英理歌に恋してるって自覚したら何だか顔を見るのも恥ずかしくなっちゃってちょっと余所余所しい態度しちゃったな。って反省してます。

当時の私は恋愛クソザコだったから恋愛小説とか読み漁ってた友達にアドバイスを貰って、英理歌にアタックしまくったんだけど何にも反応してくれなくて……


でね、英理歌に「最近おかしいけど、どうしたの?」って聞かれちゃって咄嗟に「いや、えっと、そのー…好きな人ができたの!」って誤魔化しちゃった。今思えばこれが一番の原因だったなぁ…


色んな事をしたけど全然無反応で困りに困った私達は策も無くなってどうしよう!って騒いでたら当時彼氏持ちの恋愛強者が「じゃあ恋じゃなくて別の特別な感情を感じさせたら?」って言われて馬鹿な私達はそれを鵜呑みにして実行したんだ。


まずは英理歌に嫉妬させてみようってなって架空の好きな人の惚気をしまくったんだけど効果無しどころかその惚気を生温かい目をしながら頷かれて……

友達に完璧な男装してもらってそれに抱きついても嫉妬どころか生温かい目で見られて……

デートしに行ってくるって言っても生温かい目で見送られて……

何かずっと生温かい目でこっちを見てきたの。何をやっても全然気にしないし、果には応援してきたし…


そしてね、もうヤケクソでその男装した友達に告白してみたんだけど嫉妬してくれなくて…

その時は英理歌によしよししてもらいたかったから振ってもらったんだ。その後よしよしされて嬉しかったんだけど嫉妬してくれなかった悲しみが上回ってその日はずっと泣いちゃった。


その後、本当にどうしようもなくなって、何をしても靡いてくれない英理歌をどうすれば落とせるかまたリア充に聞くことにした、しちゃったの。


そうしたらこう言われた「周囲から孤立させて自分に依存させちゃえ」って。

当時馬鹿だった私はそれに納得しちゃて英理歌を周りから孤立させようと嘘を言ったりしちゃったんだ。

本当にこの頃の私は馬鹿だった。今すぐ殺したい位自分でも恨んでる。


そして、英理歌を孤立させる事に成功したから次は私に依存させようとした時だった。

あの弁護士が自殺しようとしてた英理歌を救ったの。

弁護士が英理歌に色々教えて英理歌が全部私がしたって気付いたんだ。


英理歌がクラスの虐めてた皆を葬っていって、残ったのが私だけになった時、英理歌は苦しみと悲しみと憎しみと、色んな表情が混じった顔で、涙を流しながらこう言ったんだ「君と過ごした日々は楽しかった…君はどうして…いや、何でもない。さようなら」って


この時初めて私が何をしたのか、どれだけ酷い事をしたのか。私はやっと分かったんだ。


それからずっとずっと後悔してた。後の中学校生活も魂を抜かれた抜け殻のように何の感情も無く、只々無駄に過ごしてた。


そしてね、そんな姿を見かねた友達に諭されて思い出したんだ。英理歌への思いを。

私がどうしてあんな事をしようとしたのか。

私がどんな気持ちであんな事をしたのか。

全部思い出した。


私が英理歌をどれだけ傷付けたか分かってる。

だけど、あの喜びは、あの幸せは、あの恋は、忘れられない。何よりも、英理歌に謝れてない。

だから、許されなくても面と向かって謝罪をする。

そして、私がどれだけ嫌われても、報われなくても、どんな手を使ってでも、絶対に英理歌を手に入れてみせる。

待っててね、英理歌。

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