3話 拭えないトラウマ
先輩達が散々暴走してくれたがそれぞれの担任に回収されて一件落着した。
それにしてもデフォルメされた熊の着ぐるみを着ている教師と遠慮なく生徒に銃を発砲する教師は教師と言えるのだろうか?
「はぁ…助かった。よし、もういい時間だな。自己紹介だけ終わらせておくぞ。まず名前順で岩花から」
「知ってると思うが俺は岩花大火!好きな物は運動と彼女で嫌いな物は勉強だ!よろしく!」
「脳筋だな、では次、胡谷」
「僕は胡谷桃也、この脳筋とは幼馴染だ。好きな物は読書と勉強。嫌いな物は運動全般だ。よろしく」
「岩花とは真反対って事か。つーわけで次、西園寺」
「西園寺樋口一条二条九条鷹司大宮高松難波綾小路光菊ですわー!!お名前がクソ長いですわ!長過ぎるから西園寺か光菊と呼んでくださいましー!!好きな物は格闘技、嫌いな物はお勉強ですわ!よろしくお願い致しますわー!!!」
「フルネームがイカれてる戦うお嬢様ってことか。次、蛇ノ目」
「私は蛇ノ目英理歌。好きな物は無い、嫌いな物は裏切りだ。よろしく」
「おう悲しいなお前。次、千玉」
「私は千玉寂星、好きな物は実験で嫌いな物は非効率な事だよ。誰か私の実験に付き合ってくれる人は居るかい?」
「マッドサイエンティストの実験に付き合ってたら命が何個あっても足りねぇよ。次、橙峰」
「私は橙峰百合、竜胆と幼馴染だよ。好きな物は美少女で嫌いな物は美しくない人。よろしくね。それはそれとして蛇ノ目君、後でお茶しない?」
「しない」
「おっと、即答か。残念、振られちゃっt──ごはっ」
「サラッとナンパしてサラッとシバかれるな。次、道懸」
「…道懸篠、好きな物は未知の物、嫌いな物は凡人。よろしく」
「おお、凄い闇深そう。次、冬原」
「ボクは冬原忍、好きな物はオシャレとか買い物!あと英理歌!嫌いな物は家族。よろしくね!」
…………………?(思考停止)
……………………は?(やっと理解)今何て言った?好きな物の欄に私が入ってたな、何故?非常に理解に苦しむな…
「何故私?」
「一目惚れ」
「そうか…」
「やはり百合。百合は世界を救う…!」
「おー、早速仲良くなってんな。次、鬼灯」
「ボクは鬼灯浄傀!これでも男だよ!好きな物はかわいい物で嫌いな物はかわいく無い物!よろしくね!」
「男の娘ってやつだな。次、竜胆」
「私は竜胆怜、この馬鹿と幼馴染だ。「馬鹿とは何だ!馬鹿とは!」うるさいぞ「はい…」好きな物は剣道や弓道。嫌いな物は煩い物だ。よろしく頼む」
「如何にも正々堂々が似合いそうだな。よし、自己紹介も終わったし自習だ自習。と言っても普通に遊んでていいぞー」
いきなり自習と言われても何もやる事が無い。勉強は意味が無いしやりたい事も無い。さて、どうしよう?
「えーりーかー!」
「っ…!私に触るな!」
「どうしたの?何かしちゃった?」
「…すまない。少し独りにさせてくれ」
「えっ!?ちょっ!どこ行くのー!?って早すぎ!待ってー!」
トイレに逃げ込んで個室に入り鍵を閉める
「はぁ…やはりトラウマはそう簡単に治る物じゃないか。どうしても考えが拭えない」
人と関わろうとすると何か裏があると疑ってしまう。それも触られると凄い拒否反応を示してしまう。たとえ相手が何もしていなくても、優しく接してきても敵であるという思考が常に付き纏う。しかも忍は同級生だ、よりその思考が大きくなってしまう。
だが、その思考は間違っていない。どうせ忍も私を裏切る。幼馴染や親友と同じように裏切られるという結果が最初から分かり切っているならばやらない方がマシだ。それに、私は友人関係を築くのは愚かで、優しさには裏があり、人は醜い物だという大事な事を知っている。
「ふぅ…落ち着け。冷静になれ。私はどうすればいいんだ?」
『そんなん決まってる。オマエは信じず、独りを貫けばいい。表面上は仲良くしとけば問題ない』
「あぁ、そうか。やはりそうするほうが合理的だ。ありがとう」
『感謝なんて要らねぇ。さあ、行け』
トイレから出て忍を探す。適当に言い訳して仲直りすれば良いだろう。
「あ!やっと見つけた!」
「すまない。ちょっと取り乱した。私は人間不信でね、触れられると拒否反応を示してしまうんだ。だから少し距離を保って貰えると嬉しい」
「へえ…なるほどなるほど。それが本心?」
「?あぁ、紛れもなく本心だが?」
「ふーん、そっかー、じゃあさ何でそんなに
「は?」
私が悲しそう?そんな事はない。有り得ない。何をもって私が悲しそうと判断したんだ?微塵もそんな事は感じていないし思ってもいない。
「どうして私が悲しそうと断言できるんだ?」
「だって、言葉の節々とか顔に滲み出てるんだもん。「独りになりたくない」、「誰かと話したい」、何より「孤独は辛い」って思いが伝わって来るんだよ。」
『オマエはそんな事思ったか?そう感じた事はあるか?無いよな。コイツを信用するな』
「そんな事思っていない」
「英理歌が思っていなくても出ちゃう物なんだよね、言葉っていうのは。英理歌が知らなくても心の奥底ではそう思ってるんだよ?」
「嘘を吐くな」
「嘘じゃないよ。嘘だと言うなら何でそんな苦しそうな顔をしてるの?本心から目を逸らしてるだけじゃない?」
『受け止めるな。コイツはオマエの何を理解している?コイツはオマエの事は理解していない。そんなヤツの言葉なんて何の重みがある?』
「…君に、君に私の何が分かる!?どうせ君も私を裏切るんだろう!?なら踏み込んでこないでくれ!」
「踏み込むよ。言ったでしょ?ボクは君に一目惚れしたって。ボクは英理歌と友達になりたいんだ」
「私と友達になりたいなら私の本心やら感情は関係ないだろう?」
「ボクは友達になりたいけど心から信用し合える友達になりたい。だから本心や過去も聞きたい、だから踏み込む。それに本当の理由も言わずに拒絶されて、はいそうですかってならないよ!」
『コイツに教えたら面倒な事になる。絶対に仲良くなるな。早く逃げろ』
「随分お節介だな、だが私は君が嫌いだ。踏み込んでこないでくれ!」
「あっ、逃げた!待ってー!」
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