第6話 歴史の明暗

 もう一つ、一人の人間が浮かんでくるとすれば、長曾我部元親である。

 彼は、そもそも市億を平定したことで、光秀の仲介で、信長から、四国を任せるように言われていたものを、急に、四国の沙汰について、元親の不利になるようなこと言われたことで、仲を取り持った光秀の面目は丸つぶれになった。

 だから、

「光秀は、元親のいうことに逆らえないのではないか?」

 ということである。

 しかし、この説はかなり強引であり、信憑性としては、かなり低いだろう。

 そして、もう一つ、こちらは、信憑性というよりも、その裏にあるもんを考えた時、このお話の信憑性に近づくという意味で、興味深い説として、そして、この小説における話を一本にするという意味で、この本能寺の変の話に言及することになったのだが、それを理解してほしいと思ったのだ。

 その説というのが、

「宗教団体設」

 というものである。

 信長は、結構宗教団体を敵に回している。

 例えば、

「本願氏の蓮如」

「一向一揆の一向宗の門徒」

「比叡山の僧兵たち」

 などであるが、

「寺の坊主は、庶民を救うなどと言って、自分たちは、女を抱き、肉を食らっているではないか。それで特権階級のように荘園を所有したり、僧兵を使って略奪をほしいままにしているのは許せん」

 というわけだ。

 確かに当時の僧侶の堕落はひどいものだったようだ。

 とんちで有名な、一休宗純がいるが、彼は、そのような、

「生臭坊主」

 を戒めるかのような行動を、晩年に取っている。

 それと信長がかぶって見えるのは、自分だけであろうか。

 信長が宗教を敵にするのも確かに無理もないが、ここまで徹底的に敵視するというのは、他に理由があったのではないかというのは、無理な発想であろうか。

 そこで一つ考えられるのは、当時、外国からキリスト教というものが伝わっていて、信長はそれを奨励した。

 もちろん、貿易で利益を上げるのが第一の目的なのだろうが、ひょっとすると、

「国内における、仏教の僧侶に対抗心からだったのではないか?」

 と考えるのは、無理のあることであろうか?

 そんな風に思っていると、

「信長の後ろには、キリスト教がついている」

 という考えが浮かんでくるのだ。

 そう思うと、比叡山を焼き討ちにされたりした僧兵や僧侶たちが協力して、

「打倒信長」

 で結束したとも考えられる。

 では、そこで、

「信長をそそのかしたキリスト教を後ろ盾にしたのは、どこの国だろうか?」

 ということになる。

 当然、キリスト教を広めた張本人である、

「スペイン人」 

 あるいは、

「ポルトガル人」

 ではないだろうか。

 彼らは別に聖人君子ではない。

「植民地獲得のための工作員」

 といってもいいのではないだろうか。

 実際に東南アジアの国などは、キリスト教を広めるために、その国内で信者を増やしていく。そのうちに、国が混乱するようなことを信者に吹き込んで、実際に国が混乱してくると、そこに自分たちの国の軍隊が入ってきて、制圧することになり、気が付けば、植民地にされていたということである。

 つまり、キリスト教布教のための宣教師は、ただのクーデターの工作員だということになる。

 信長はそのことをわかっていたのだろうか?

 一応、不況を許しながらも、

「政治への口出しは許さん」

 とは言っている。

 たぶん、危険性は気にはしていたが、貿易での利益と天秤にかけたのであろう。どっちが重たかったのかは、ハッキリとはわからないが、貿易による利益だったのだろう。

 布教に関しては、目を光らせていれば大丈夫だし、何よりも、仏教の坊主たちに対しての刺激になると考えたのではないだろうか。

「ひょっとすると、キリスト教と、仏教の衝突を考え、キリスト教が、仏教の抑えとして使えると考えたのかも知れない」

 とも思えるのだ。

 共倒れでもしてくれればいいと考えたとすれば、信長も、なかなかの策士ではないだろうか。

 そんな状態で、

「均衡を守ってきた」

 のであるが、今回の均衡を招いた調本人が、信長だということに気づいたのだとすれば、いや、それよりも、このことを密告したのが、光秀だとすれば、光秀と宗教団体とでは、結びつきがあったと考えられ、光秀をそそのかしたのが、宗教団体だとすれば、信長を葬ることで、キリスト教も追い出すことができると考えたのだといえるだろう。

 キリスト教が、どれほどのものなのか、彼らにはもわかっていないが、まずは、信長を倒すことを優先し、そのあと天下を握るのが、光秀だとすれば、自分たちにとって、操りやすい人物でもあり、天下取りに一役買ったということで、これから有利にふるまえるということになるのだろう。

 ただ、キリスト教の方も、そう簡単に信長がやられるのを見過ごしたとも考えられない。

 確かに信長を立てておけば、自分たちの立場は安泰だと思ったのも事実だが、スペイン人には、それ以外にも、別の問題を抱えていたのかも知れない。

 そし、それが、蝦夷地のイギリス人と絡んでいるとすれば、面白いといえるのではないだろうか?

 本国では、イギリスと、スペイン、ポルトガル系の民族では、争っていたはずだ。キリスト教布教においてもそうだが、元々、蝦夷地でイギリスが暗躍しているのも、スペインとしては、気に入らなかったのかもしれない。

 しかし、だからと言って、イギリスのやっていることを表立って避難もできない。なぜなら、イギリスが推している

「南部蝦夷地」

 というものが、ロシアの推す、

「北部蝦夷地」

 と対峙しているからである。

 それぞれの国の立場を考えると、この二つの均衡を今崩すのは得策ではない。蝦夷地で緊張してくれている間に、日本本土を植民地にしてしまえば、北部蝦夷地だけを根拠地として、ロシアも簡単には攻め込んでくることもできないだずだからである。

 だが、スペインが知っていたかどうか分からないが、イギリスが、本土において、ひそかに暗躍している動きがあるのだった。

 もし、それを知っている人間がいるとすれば、信長ではなかったか。だから、日本において仏教が余計な力を持つのを嫌ったのだ。

「もし、仏教勢力に、イギリスが絡んでくると、我々としても、勝ち目はないかも知れない」

 と思っていたのだ。

 スペインの方も、利用するだけ利用しようと思っているので、海外勢力をやたらに増やして騒動を起こすのは、望ましくないと思っていたはずである。

「宗教団体は、内外を問わず、厄介なものだ」

 と、信長は感じていたことだろう。

「いらない部分は徹底的に排除して、利用できるところは利用する」

 というのが、一番であった。

 そうやって考えてくると、

「本能寺の変」

 という事件の黒幕がいるという説はかなり信憑性があるのだが、まさk、

「海外勢力の覇権争い」

 という構図が見えてくるとは、思ってもみないことだろう。

 しかも、日本本土としては、

「イギリスとスペイン」

 というのは、想像がついているだろうが、まさかそこにロシアという国が絡んでいるとは思ってもいないだろう。

 そもそも当時の日本には、ロシアなどという国が存在しているということすら、分かっていないのだから。

 ロシアの暗躍を一番懸念しているのがイギリスである。もちろん、スペインもロシアを警戒はしている。そういう意味で、イギリスとの共通の利害があるとすれば、

「ロシア対策」

 ということであろうか。

 今のところ、ロシアが、何の目的で、北部蝦夷地を占領しているのかということはイギリスにもわかっていない。

 だから、イギリスが表だって出てくるのではなく、南部にアイヌ民族によって築かれるという、

「南部蝦夷地」

 を、かつての本土の武将にやらせるとう方法をとったのだ。

 集団で何かをするには、アイヌに任せておけばいいが、曽その場所を占領し、統率できる人間は、アイヌにはいない。

 そこで、内地からの武将を利用して、この土地をおさめさせようというのだ。

 イギリスが表に出てきていないので、ロシアの方も、

「アイヌ民族も、侮れない」

 と思わせることができるのだ。

 決して油断しているわけではないだろうが、ロシアも、自分たちが占領し、奴隷のように扱っているアイヌ人に、いつ寝首を掛かれるか分からないということで、なかなか、動くことができないでいるのだった。

 イギリスとスペインは、最初、お互いに睨み合っていたが、蝦夷地の沙汰を考えているうちに、それぞれ話し合いを持つようになっていた。

 そこで考えたのが、日本本土への政治介入だった。

 得意の諜報戦略を使って、当時の日本の体制を調べ上げた。

 封建制度の元、京都の室町に幕府を築いた足利氏であったが、次第に勢力が衰えてきて、応仁の乱において、決定的なダメージを受け、そこから先は衰退の一途だった。

 諸国には、元々守護大名というものがあって、それが群雄割拠お戦国大名となり、戦に明け暮れる、戦国の世となってしまった。

 日本には、昔からの、万世一系である、

「天皇」

 というものがいて、

 いくら幕府の勢力が強くても、日本の元首といえるものは、天皇でしかないということになっているのだ。同じ王国でも、イギリスや他の国とは大違い。実に感慨深い国だということだ。

 そこでスペインも、イギリスも考えたこととして、問題なのは、

「信長の使い方」

 だった。

 今はまだ天下を統一するところまでは行っていないが、信長がいないと、混乱したままの世の中になってしまう。

 だとすれば、

「ある程度まで、信長にやらせておいて、その後誰がやっても、土台はできているということで、信長を排除すればいい」

 と考えたのだとすれば、本能寺の変も、違った形が見えてくるというものだ。

「信長を泳がして、じゃあ誰をけしかけるか?」

 一番は光秀だったのだろう。

 光秀であれば、クーデターに失敗するということはないだろう。だが、そのあとの政治を任せるには、心もとないということで、光秀を、

「捨て駒」

 に使って、最終的には秀吉に天下を継がせようということであったとすれば、本能寺の変の辻褄も合ってくる。

 もちろん、このことが、誰かに漏れると大変なことになる。特に朝廷にバレるわけにはいかないに違いない。もしバレてしまい、この件にイギリスが絡んでいるということが国際的に分かってしまうと、ロシアに感づかれてしまい、蝦夷地での暗躍も難しくなってくる。

 蝦夷地は、極東であり、本国からかなり離れているので、あまり重要視するところではないように思うのだが、逆に、そんな遠く離れた場所の蝦夷地で、ひそかに暗躍するようなことをしているのかということを考えると、何もないとすれば、矛盾しているということである。

 彼らには、

「明国を征服して、領土を広げる」

 という目標がある。

 明国を手に入れエバ、今欧州尾国々が先を争ってやっている、東南アジアでの、

「植民地計画」

 にくさびを打ち込むことができるだろう。

 自分たちが介入することもできるし、独立させて、それまでの努力を無駄にすることもできると考えたのだ。

 だが、そのことをいち早く察したイギリスが、南蝦夷地に、強力な要塞を作り上げ、国家を形成し、ロシアの極東進出をけん制しているのだった。

 彼らがなぜ、日本建築であると思われる城郭を作ることができたのか疑問である。

 母国である、イギリスや、欧州各国において、このような城郭を建設しているという歴史はないからだ。

 ということは、やはり、この建築方法は、誰か天才のような人がいて、その人物による創作なのではないかといえる。

 ただ、

「火のないところに煙は立たない」

 ものである。

 つまり、中国大陸や、朝鮮などの建築方式をヒントにしたのかも知れない。

 多重の層になった建て方も、五重塔のような仏教建築から来ていると思えば、考えられないということでもないだろう。

 そんな建築様式を誇っている、

「南部蝦夷地」

 であるが、実際に出来上がったこの土地は、

「すでに、最先端の技術を生かした要塞」

 のはずではないか。

 それなのに、

「なぜ、今さら、重光と頼経を必要とするのだろう?」

 というものである。

 そのことに最初に気づいたのは、頼経の方だった。

 頼経の方は、軍事的に、もっといろいろな装備を設けて、強固な要塞にすることもできるが、重光ではそれはできない。確かに、二人はいつもセットのようであるが、頼経だけを派遣してもよかったのではないか?

 それを考えたのだが、そのことを、城主に効くと、前述のような話に戻ってくることになるのだ。

 どうやら、こちらの方では、

「外交による解決と、武力による進行」

 の両方を考えているようだ。

 それは、前述のその後の歴史でもある

「大東亜戦争を回避できれば回避したい」

 という考えから、外交面と、それと並行した軍事面とからの両面作戦だったのだ。

 外交がうまくいかなかったのは、もともと、アメリカが自分の国が欧州の戦争に参加できるようになるため、世論の意見を動かしたかったことで、日本に先制攻撃をさせるという目的に、まんまとはまってしまったのだ。

 真珠湾で、電報解読が遅れたのは、やむを得ない事情があったといわれているが、ひょっとすると、アメリカ側の策謀がそこに隠されているのではないかと思えるのだった。

 もし、それがうまくいっていれば、戦争も変わっていたかも知れない。日本が負けていたかも知れないが、長引いたり、無駄な犠牲はなかったのかも知れない。歴史の明暗というのは、一瞬で決まったりもするし、時代の流れによって、ゆっくり築かれる場合もあるのだ。

 そこに策謀などが絡んでくれば、時代の流れも、微妙な狂いから、一気にまったく違った形になる場合もあるだろう。

「ところで、一つ気になるんですが、ここはアイヌの人が中心の国家なんですよね?」

 と聞くと、

「ええ」

 と城主は答えた。

「じゃあ、北部のロシアという民族が抱えているのも、アイヌ人だということですよね?」

 と聞くと、

「何がいいたいんですか?」

 と聞かれたので、

「同じアイヌの民族同士をまったく違う民族が操って戦争をするということですか?」

 と聞くと、

「まあ、そうなりますかね? でも、そういうやり方というのは、普通にあるじゃないですか? 攻略した相手の国の軍を自分たちのものにして、さらに、先の効力に使うとか、当たり前にありますよね?」

 と聞かれて、

「それはそうなんですが」

 と、話をしているうちに、自分が何にこだわっているのか、わからなくなってきた重光は、頭を整理する必要があると思った。

「先ほど自分たちが呼ばれた理由はそれなりに分かった気がしたんですが、似たような人物は他にもいるはずだと思うんですよね? どうして、我々なんですか?」

 と、今度は、頼経が聞いた。

「私は、名前を、織田信定というのだよ。今、尾張の国から、天下に号令をかけようとしている織田信長は、私の遠縁に当たるんです」

 というではないか。

 当時織田信長というと、桶狭間の戦いで、電光石火の活躍から、、いよいよ、戦国大名としてデビューをしようとしていたところであった。もちろん、安土城などはなく、清州城にいたのだ。

 ただ、桶狭間の戦いにおいて、名前は全国区になったので、あの時代の大名で知らない人はいなかっただろう。

 ただ、

「うつけ者」

 と言われていて、まわりをいかに欺くかということにかけては天才であっただろう。

 それをいち早く見抜いたのは、信長の義父である、まむしと言われた、

「斎藤道三」

 だったのだ。

 信長は鉄砲を手に入れることに躍起になっていたが、なるほど、ここの殿様が、信長に知恵をつけているとすれば、それも当然のことであろう。

 そこまで考えていくと、逆にここの殿様が、こんな遠隔地にいても、本土のことが分かるというのも、納得がいく。先ほどの疑問であった、

「なぜ、自分たち二人に目を付けたのか?」

 ということも、

「信長の目から見て目をつけられた二人が自分たちだった」

 ということになるのだろう。

 逆に、重光の方が信長を知らない。

「信長という男は、どういう人なのだろう?」

 と、頼経がつぶやくと、信定が話し始めた。

 その内容は、歴史の教科書に載っているような内容で、歴史を知っている人間には、なんてことのない情報であったが、ここに鎮座している、

「今という時代を生きている二人」

 である、重光と頼経には、センセーショナルな話であった。

「実に、興味深い男なんですね?」

 と聞くと、

「ああ、彼は勘違いされやすい人間というよりも、むしろ、相手に勘違いをさせることに長けているんですよ。それをわかっているかいないかで、戦国の世を生き抜いていけるかどうかだということなんでしょうね。私は外から見ているので、他人事のように見えているんですが、でも、他人事のようにして冷静に見るというのも大切なことではないかと、いつも信長には教えられている気がするんだ」

 と、信定は語った。

「じゃあ、信長さんは、鉄砲の重要性を知っているということですか?」

「ええ、そういうことになります。鉄砲というのは、実際に使ってみると、結構、最初は大変です。まず、あの重たさ、そして衝撃からの反動、さらに、煙も出るので、その時に急に目の前が見えなくなることだってあります。そして、やってみれば分かりますが、打ってみると、次に打ち出すまでに結構時間がかかります。それが鉄砲の最大の弱点になるんですよ」

 と、信定は話した。

 確かに、鉄砲というのは、持つのが大変そうに見える。そして、あの音と反動はすごいものがある。下手をすれば、鼓膜が破れないか、気にしなければいけないくらいである。

 まだ、桶狭間を戦ったくらいの頃の信長なので、自分が将来、長篠の合戦で、

「鉄砲の三段撃ち」

 というものを開発するなど、思ってもいなかっただろう。

 ここにいる人間も、

「皆そうに違いない」

 と思っていたのだろうが、実際には、信定は鉄砲の使い方を研究しているようだった。

 そういう意味では、信長よりも、信定のほうが、鉄砲について精通していて、ひょっとすると、本土の人間よりもたくさん所持しているのかも知れないと感じたのだ。

「信定殿は、鉄砲を相当所持しておられるのかな?」

 と聞くと、信定がニヤリと笑って、

「ハッキリとした数は言えないが、少なくとも信長よりもたくさん持っているさ。それはそうだろう。こっちは、イギリス人と、スペイン人から輸入できるし、さらに、鉄砲鍛冶も充実しているからな」

 といった。

「じゃあ、今なら信長と戦をしても勝てるんじゃないですか?」

 と聞くと、

「それは分からない。なんといっても、本土とこの蝦夷地とでは、条件がまるで違う。なるほど、こっちで戦をすれば、負ける気はしないだろう、しかし本土での戦となると、こっちは自信がない。それを考えると、どっちが強いかなどというのは、まったく考える余地もないくらいではないだろうか?」

 というのだった。

「ひょっとして、信定さんが、信長に、鉄砲の時代が来ることを教えたんじゃないですか?」

 と聞くと、

「もし、そうだとして、私にどんな得があるというのかな?」

 と聞いてきたので、重光は少し考えたが、

「信長に天下を統一させるためですよ。もし、他の武将が天下を統一すれば、いつかは、この蝦夷地を侵略にやってくる。そんなことにならないように、親戚同士の二人が協力すれば、本土は信長が、蝦夷地はあなたが支配することになる。それぞれだと難しいだろうが、お互いに、利害関係を一緒にして、手を握れば、いいとこどりができるんじゃないですか?」

 と、言った。

「確かにそうなんだけど、私は、実はこの蝦夷地を自分の手に収めようとは思っていない。実際に南部だけで十分だと思っている。しかし、北部にロシアが干渉してくるのは困ったことなんだ。だから、北部に目を光らせているが、本土はさほど気にしていない」

 といった。

 この時代に男として生まれてきて、野心を持つことのできる立場にいる人は、天下を一度は夢見るはずだ。

 しかも、日本本土の群雄割拠を征服するわけではない。蝦夷地だけであれば、できなくもない。

 それなのに、まったく興味を示さないということは、そう見えるだけなのか、恐怖の裏返しで、何も考えていないように見えるのかも知れない。

 信長は、あれだけ野心家なのに、その親戚が、野心を持っていないといえるだろうか。

 もし持っているとすれば、隠しておく理由があるからで、それがどのような理由なのか、分かる気がするが、野心を持っていないといけないという理由としては。この国の裏に潜んでいる、

「イギリス」

 という国を意識しなければいけない。

 見ていると、どうしても、この信定の体制は、イギリスによる、

「傀儡国家」

 なのではないかということである。

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