天国への階段

 静まり返った夜、“みりん”は取り戻したテリトリーを眺めていた。


 俺がこの街に生まれてからいくつ夜を超えてきただろう……


 まだ幼い頃、この世界の主導権は人間達が握っていた。


 人間達は自然を壊し、空気は穢れ、我々ネコにとっては住みにくい世界を作り上げていった。


 物心ついた頃、この街、いや、この世界を俺のテリトリーにすると心に固く誓った。


 やがて俺の元には仲間が集まり夜ごと人間達へ復讐のbluesを歌い始める……


 現在、人間が言うところの西暦20XX年


 コンクリートの建物は廃墟と化し、道を埋めるアスファルトには雑草が生い茂る。所々に廃車となった車が転がり、それぞれネコの住み処となっている。


 生き残った人間達は集落を作り、我々ネコ達に怯えおとなしくしているようだ。


 取り戻したテリトリーを眺め、情報屋の“いちご”が俺に言う。


「みりんさんのおかげで素晴らしい世界になりましたね!」


 それを聞いた白猫の“しらす”は横槍を入れてきた。


「やりすぎよ……あぁ憐れな人間達」


 それらを聞いて俺は答える。


「いや、まだだ……俺はこの取り戻した世界を天国に変える……そう、ネコの天国だ!」


 俺は夜の王様

 この“世界”は俺のテリトリー

 これから俺達は天国への階段を駆け上がる

 一旦、お前ら人間とはさよならだ……

 しかしまたお前ら人間が俺達の邪魔し始める時、また極上のbluesを聞く事になるだろう

 忠告はしたぞ!


 そう言うとみりんは夜の闇に消えて行った……


 evil cat blues “天国への階段”







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evil cat blues 遠藤みりん @endomirin

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