ghost house
俺は夜の王様
恐れるモノなど何もない
そう……何も……
俺達ネコの界隈で、ある噂が持ちきりとなっている。
ある近くの廃墟から夜な夜なネコの鳴き声が聞こえるって話しだ。
もっぱらネコの霊ではないかと噂されてしまっている。
人間達が勝手に発展させたこの科学の時代に何を言っているんだか……俺はそんな非科学的な事は断じて信じない!
情報屋のいちごが近づいてきた……何か嫌な予感がする。
「みりんさん、例の噂聞いていますか?」
「噂?あの廃墟から聞こえるネコの鳴き声の事か?」
「そうです!しらすさんなんて怖がって震えていますよ!」
「唯の噂だろ?ネコの霊なんてバカバカしい」
「みりんさん……声が震えていますよ?本当は怖いんじゃないですか?」
「怖いわけないだろ!?俺には恐れるモノはない!」
思わず声を張り上げてしまった。俺はネコの霊等怖くない……
「流石です!ではいつもの様に霊の正体を暴きにいきましょう!しらすさんも真実を知りたいでしょうから同行させましょう!恐れるモノはないんですよね!?」
いちごの奴に乗せられてしまった。仕方ない……一肌脱いでやるか。
真夜中、家を抜け出し俺といちごとしらすは廃墟の前に立つ。
割れた窓、散乱する廃棄物、伸びっぱなしの雑草、見るからな不気味な雰囲気に圧倒される。
「さぁ行くぞ!」
俺の後に続き二匹は歩き出す。
「あれ、みりん震えてない?」
しらすがそんな事を口にする。
「みりんさん!怖いんだ!!」
いちごがそれに続き茶化し始める。
「俺には恐れるモノはない!」
俺は振り向き様二匹に“シャー”と威嚇する。
恐る恐る建物に入ると開き掛けた扉が見える。俺達三匹は頭で扉を開け中に入った。
“ギィィィ”
「あれ?人影が見えますよ!?」
いちごそういった瞬間。
“ガタッ”と物音がした。
「にゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
物音に驚いた俺は大きく飛び跳ね叫び声を上げぐるぐると回る。
「みりんさん!落ち着いて下さい!」
「みりん!よく見て。唯のマネキンよ!」
マネキン……マネキンか……全く驚かせやがって……マネキンね……ふぅ……
よく見ると“ファッションセンター ラッキー”と看板が出ている。どうやら昔は服屋だった様だ。
「服屋のマネキンか!全く驚かせやがって」
「みりん驚き過ぎよ!それに尻尾が狸のようだわ!」
俺の尻尾は狸の様に何倍にも膨れ上がってしまっている。
いちごはそれを見てニヤニヤしていやがる……全く嫌な奴め!
「さぁ行くぞ!」
しばらく廃墟の中を散策すると奥の部屋からニャーニャーと小さく聞こえてくる。
「あそこよ!正体を確かめなくちゃ!」
しらすは廃墟の雰囲気に慣れたのか勢い良く部屋の中へ入る。そこには箱に入った仔ネコが三匹、お腹を減らして鳴いていた。
身勝手な人間達が責任を持たずこの廃墟に捨てた事は容易に想像がついた。
「霊の正体、見たり!ですね!」
いちごがそう言うとふわふわとした短い尻尾の中に隠した餌を仔ネコに与える……ボブテールとは便利なモノだな……
「ネコのオアシスに連れて帰りましょう」
俺達三匹は仔ネコをそれぞれ口に咥えネコのオアシスに帰った。
廃墟からの鳴き声が止み、それ以降噂される事はない。
俺は夜の王様
恐れるモノなど何も無い
そう……幽霊以外はな……覚えておけ!
evil cat blues “ghost house”
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