第6話

「出したい音が出せるっていいですね・・・」


「でしょ?!私たちは演奏したい曲ができたらすぐに楽譜を調べて練習を始めるような人間だからね。この短い時間で少しでもギターを楽しいって思えた?」


「はい!」


俺は嘘偽りない気持ちを答えた。


「じゃあ小野君は才能があるよ。音楽は音を楽しむと書いて音楽だからね!楽しむってことができるならもうそれは才能だよ!」


先輩は楽しそうに言う。そして今度は懐かしむように言葉を続ける。


「これは私も一年生の時に当時の部長に言われたんだ。それで今私はギターを凄く楽しんでる!だから私を信じて軽音部に入部しない?」


考える必要もなかった。気づいたら口からこの言葉は出ていた


「もちろん。入ります!」


そういうと横から紫苑が嬉しそうな声を出す


「マジで?!よっしゃ!これで葉月とももっと仲良くなれるな!」


あれ・・・紫苑って俺が部活に入ることよりも俺と仲良くなれることに喜んでる?

彼のそういう隠さない態度と、無邪気さに俺は恥ずかしさと嬉しさを感じた。


「そういえば咲桜はどこ行ったんだろう・・・用事があるとか言ってたけど・・・」


と俺が言うとすぐに外から大きな音が聞こえてくる。

ここって結構防音しっかりしているはずなのになんでこんな大きな音が・・・と思っていると扉があき、7人の人間が入ってくる。しかも全員一年生だ。


「入部希望者を連れてきました!しかも全員もうすでにやりたいポジションは決まっているみたいです!」


と咲桜が手を上げながら元気に言う。

先輩たちの顔を見ると部長はとっても嬉しそうな顔、二人の先輩は唖然、もう二人の先輩と紫苑は苦笑いをしていた。俺はどんな顔をしているのかは分からない。


「どうやってこんな人数を集めてきたんだよ。」


と紫苑が聞く。気になるのは当然だろう。だって咲桜が出てってからまだ数十分しか経っていないのだ。その間に一人でこんな人数を集めるなんて簡単なことではないだろう。


「そんなの簡単だよ。校内を練り歩いてまだ部活を決めてない一年生に声を掛けていけば数人はつかまるって分かってたからね。私たちもバンドメンバーを集めないといけないでしょ?」


咲桜はピースをして笑っている。絶対に簡単なことはないだろうが、咲桜なら可能かもなと思った。彼女は不思議と人を集める力を持っているのだろう。さっき会ったばかりの俺も彼女に対しては素直になれているし、彼女コミュ力なら初対面でも仲良くなれるだろう。


「咲桜ちゃん本当にお手柄!大好き!」


佐伯先輩が咲桜に抱きつく。なんかこう美少女がいちゃついているのを見るのは少し目のやり場に困るからやめてほしい。

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