Case3-34 少女

 途中でパネル台に頭をぶつけたり……と、はたから見ればなんとも滑稽なさまではあったが、もちろん少女は真剣そのものだ。なるべく急いで、ぶつからないようにと、手探りをしながら階段から離れようとした。

 だが、足音の雰囲気からして、その勢いはいずれ簡単に少女に追いついてしまうほどだ。

 確実に迫ってきている正体不明の足音達に追い詰められ、ますます体が強張り、冷や汗が止まらない。もっと離れなきゃ、もっともっと!――「っ!?」

 そう思った矢先だった。少女はとうとう闇の中で行き止まりにぶつかってしまった。

 大急ぎで、ぺたぺたぺたと壁を触り、先に続く道を探る。しかし、いくらやっても壁は横に横にと続いていく。どれだけいっても、行き止まりがなくなってくれない。

 そうしている間にも足音は無慈悲に着々と大きくなっていっている。奴らはもう、すぐそこまで降りてきているのだ。

 ――どうしようどうしようどうすれば!

 ひどく焦る少女。その視界の隅に、不意に微かな光が差し込む。

 振り向くと、階段の上の方から、幾つかの白く鋭い光が揺れ動きながら伸びており、丁度階段の零段目にあたる踊り場床を照らしているのが見えた。その反射光が少女のいる行き止まりの壁にまで届いたのだ。

 おしまいだ。頭が真っ白になり、足が固まって動かない。このままでは、見つかるのは時間の問題……

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