Case3-33 少女

 もう一度…もう一度…もう一「わああああああああ!!!」

 と、いくら叫んだり叩いたりしたところで、状況は一転もせず、辺りは真っ暗なままであった。

 そうなると、少女にとっては非常に厄介なことが起こる。


 乱れた少女の心からかもし出される、旨味うまみのある血肉の香りに誘われ、じわりじわりと、いたる所から「あれ」の気配が顔を覗かせ始めた。自分の体を、心臓を、め回しながらこちらに近づいてくる――そんな想像をしてしまう。

 次の瞬間、少女の身体の中心からぞくりとした熱が一気に湧き上がり、たちまちに頭の先まで駆けけていった――本能からの警告だ。

 それを受けて、不安と恐怖で表情が埋まる。少女は、あっという間に怖じ気づいてしまった。

 引き返そう――そう思った。これ以上気配が増える前に。

 少女は、背後を守りたくて、びったりと背中を壁にくっつけると、そのまま衣服をらせながら壁沿いに階段へと向かっていった。


 ところがであった。

 ふと、少女は何かに気がつき足を止めた。

 確かめるために、そのちっちゃくて可愛げな両耳に、これまたちっちゃな手を添えて、集中して耳を傾ける。

 やはりだ。わずかにだが、誰かが……誰か達が、階段を駆け下りてきている――そんな音が聞こえる。こうしている間にも、足音達は徐々にはっきりと主張を増してきている。


 「蛇」とはまた別の恐れが湧き上がった。バレたら怒られるようなことをしている自覚があった少女は、背中をくっつけるのは続けたまま、今度は反対方向に逃げていった。

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