第26話

 長い長いランニングコース。

アカネに多少の荷物を持ってもらってるとはいえ、このか弱い身体ではこの重量でも辛い……。

 「大丈夫ですか?。ユイさん。」

 「うん。大丈夫。」

 「息が少し荒いですね……。少し休憩しましょう。」

 「ごめんね……。」

 「大丈夫ですよ。」

 さすがというかなんというか。

俳優や舞台をやってるだけあって、全然息を荒くしてない。

 「アカネは大丈夫?。疲れてない。」

 「私は大丈夫です。それに時間もありますからゆっくり行きましょう。」

「そう……だね……。」

 アカネが優しく頭を撫でてくる。

優しく、なだめるように。


 あれから全体の半分くらいは歩いた。

あと少しで中間のチェックポイントに着く。

そこで昼食をとるタイムラインになっている。

 「もう少しですよ。頑張ってください。」

 アカネに励まされながら、疲れの蓄積とともに重くなっていく足取りを頑張って歩かせる。

 「あと少しです。着きました。」

 「はぁ……はぁ……着いた……。」

 「お疲れ様です。ユイさん。」

 「ありがとう。アカネ。」

 「いえいえ。」

 適度な大きさの公園の広場。

そこで僕はアカネが先に敷いたレジャーシートに倒れた。

足がだいぶきつい。

 「はい。これでも飲んで。」

 「ありがとう……。」

 アカネが学校側が置いた休憩テントからスポーツドリンク入りの紙コップを僕に渡す。

 「ふう……。」

 「前半お疲れ様〜。」

 「もう動きたくない……。」

 「お昼食べて後半も頑張ろう。」

 「……頑張る。」

そして僕達は昼食を食べることにした。

僕のお弁当はソフィアの手作り。

彩り豊かで、疲れてても食べやすいサンドおにぎり。

これがなかなか良いのだ。

アカネのお弁当は……お弁当って呼んでいいのだろうか……。

災害時にでも役に立つ栄養食、羊羹、チョコ、それとスティック野菜。

偏りが……。

 「アカネさん……。それが昼食?。」

 「そうですよ?。」

 マジかぁ……。

普段は向こうが用意してくれるお弁当を食べるからこうなのか?。

それとも今回だけなのか……。

 「アカネさんは普段からそれなのか?。」

 「さすがにそれは無いですよ。今回だけの特別仕様です。」

 さいですか。

ほれほれとスティック状の食事たちを振ってくる。

犬か僕は。

ええいままよ。

 はむっ。

 「なっ!?。」

 はむはむ。

 「ユイさん……。」

 カプっ。

 「そこは……。」

 ぺろっと。

 「意地悪しないでください……。」

 「ごめん……。」

 「そういうのはもっとこう……。」

 「2人だけの時間の時に……。」

 ぶんぶんと照れながら手でほほを覆って、顔を横に振るアカネ……。

まさか効くとは……。

……。

やっぱり変態だこの国民的高校生女優は。


 そんあこんなで昼食も食べ終わって、後半。

後半は何事もなく終わった。

アカネと別れて家へ帰った。


 家に帰った僕は荷物を置いてベッドに倒れ込んだ。

 「疲れた……。」

 蓄積され続けた疲れがここで一気に押し寄せて、僕はベッドの中で寝落ちした。

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