第22話

 平日に入って学校に行き、教室に入ると。

どよ〜んという雰囲気が教室を支配していた……。

なんか重い。重くないこれ。

 「どうしたのこれ……。」

 「ああ。ユイ、おはよう。」

 あおいに挨拶したけど、あまり元気が見られない。

理由はまあわかる。わかるけども。

 「ユイさん。おはようございます。」

 「おはようアカネ。君は……大丈夫そうだね。」

 「はい。こういうのはまあ現場ではそれなりによくあるので。」

 へぇ……。

あるんだ。

まあそれはいいとして……。

重いです。この教室。

うぅ……。居ずらい。

早くみんなが元気になって欲しい。

僕はそれだけでいいのに。

 「あ。ユイとアカネさん。放課後に体育館の備品の片付けをお願いできますか?。」

 「はい。大丈夫です。いいよねアカネ。」

 「私は大丈夫ですよ。」

 「ありがとうございます。」

 とりあえず今日は乗り切ろう。

その後になんか考えよう。


 放課後。

体育祭実行委員の少女に頼まれた体育館の備品の片付け。

本来だったらここは対熱中症対策室だった。

クーラーの完備された体育館で、簡易的な休憩所にもなっている。

パイプ椅子や長机、ダンボール製のベッド付き個室。

スポーツドリンクが入ったサーバーなど、とりあえず手の空いている者総出で片付けをしている。

 一通りの備品を倉庫に片付けて、何段も重ねたマットの上で休憩……。

疲れた……。

こうもいっぱい動くと疲れるのね……。

あぁ……。

なんか眠たい……。

でも……。

……。

…………。


 …………。

……。

 「……さん。」

 ん……。

 「ユイさん。」

ん〜……。


 「ユイさん。」


 はっ。

僕は勢いよく起き上がると、ゴツンと何かにぶつかった。

 「アイタタ……。ってごめん。アカネ。」

 「うん……。大丈夫よ。ユイ。」

 お互いにおでこを押さえながら落ち着きを取り戻す。

どうやら体育館を倉庫で寝ていたらしい……。

ん?。待てよ。

なんで僕はまだ倉庫にいるのだ。

そしてなぜアカネまで一緒にいるのだ。

 「あの……アカネさん?。」

 「ん?。なんですか?。」

 「どうしてアカネもここにいるの?。」

 「あぁ……。ユイの寝顔が可愛かったから思わず見惚れちゃった。てへぺろ。」

 てへぺろじゃないが。

さてどうしたものか……。

幸いスマホの電源は生きているので連絡できる人には連絡しておいた。

……。

……。

それにしても暑い……。

外が雨のせいか余計に蒸し暑い。

女の子になってからというものの。

特に胸が蒸れる。

少しブラウスのボタンを解いて熱を逃がす。

 「ふぅ……。」

 不意にアカネを見る。

長い黒髪が蛍光に反射して綺麗で、汗で透けたブラウスからブラ……おっぱ……。

 「どうしたですか?。ユイ。」

 「いやなんでも……。」

 「顔が赤いですよ。」

 思わず顔を背けてしまう。

いちいち動作が色っぽいのなんなの。

ついつい意識してしまう。

 「もしかして、意識してくれます?。」

 「……。」

 「かわいいですね。」

 はい意識してますはい。

これでも感性はまだ男のままなのだ。

だから腕で胸を寄せたり、スカートから太ももを魅せる動作したり、意識しない方が難しい……。

 どさぁ……。

 「嬉しいですよ。私を意識して貰えて。」

 押し倒されてる。

身体が覆いかぶさってる。

胸と胸が重なって少しきつい。

 「私はずっとこの時を待っていたの。」

 「待っていた?。」

 「そう。」

 「んぅ……。」

 アカネはそのまま僕に口付けをした。

優しく、苦しくないように。

包み込むような。

 「好きです。ユイ。」

 「っ……。」

 「あの日からずっと。」

 「そう……。」

 「だから……。」

 ピピピと着信音が倉庫に響き渡る。

 「時間ですか……。残念です……。」

 「アカネ……。」

 「嘘じゃないですよ。今度、来月末に花火大会に行くのですが良かったら一緒にどうですか?。」

 これまでの出来事と突然の提案に頭が混乱している。

ガラッと重い扉が開かれて光が差し込む。

 「良い返事を待ってますよ。」

 アカネはそのまま倉庫を出た。

僕は放心した感覚で唇を撫でる。

アカネの口付けは妙に甘かった……。




―――――



 あぁー。やってしまったー。

何やってんだ私は。

なーにが「意識してくれてるですか。」だ。

そうだよ意識させてんだよ。

ユイがいちいち手で顔覆ったり、目線を逸らしたり、赤く照れたりしてるのが可愛くて思わずやってしまったんだよ。

オマケに口付けまで……。

…………。

思い出すだけで恥ずかしい。

ユイちゃん。かわいいすぎるよ。

汗で透けたブラも可愛かったし、寝顔も……。

ムゥ……。

穴があったら入りたい。

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