第21話

 翌日。外は雨だった。

接近している台風の影響でどうやら今後一週間程度は雨のよう。

 こんなことになるなんてね。

せっかく身体も良くなってきて、やりたいことやりたいようにやろうとしていた時に……。


 僕は雨はそれほど嫌いではなく、むしろ好きな方であった。

まだ体調が悪く、ベッドの上での生活が当たり前だったころ。

窓から覗く白銀の空模様と雨音の旋律が、退屈な時間を癒してくれた。

 だけれど、今日だけは雨が嫌いになった。

楽しみにしていた体育祭。

それがあえなく中止になってしまった。

皆で練習した。チアだって、あおいとアカネの3人で夜遅くまで頑張って練習した。練習したのに……。


 とは言っても、もうなってしまったものは仕方ない。

今日はテレビゲームでもして過ごそう。

なんか今日は動き足りないし、買ったはいいものの前の体調じゃできなかったスポーツジム系のゲームでもして紛らわそう。

よーしやるぞー。



――――


 はぁ……。はぁ……。

結構疲れるなこれ。

正直チアの練習の時より辛い。

でも楽しい。

身体をめいいっぱい動かせるってこんなに嬉しいだ。知らなかった。

前世では特にそういうのはなかったから余計に。


 それから僕は疲れからか寝てしまった。

 「おはようございます。ユイ。」

 ソフィアの膝枕の上で目を覚ました。

ふ……太もも……。

ソファーの上で膝枕。

結構心地よい……。

 意識が飛びそうになる前に僕は起き上がった。

リビングの机には体育祭に持っていくはずだった弁当が並ばられていた。

 「こんなのしかできませんが。」

 「うん。ありがとう。」

 嬉しかった。

少しでもその気分であろうとしてくれることが。

 そこからお弁当を食べて、2人でゲームをして、僕の体育祭は終わりを告げた。




――――――



 雨で体育祭が中止になった日。

私は悩んでいた。

ユイちゃんが落ち込んでないか心配で。

でもユイちゃんはそんな私の心配をよそに1人でゲームを楽しんでいた。

身体を動かして、鍛えながら敵を倒していくゲーム。

ここに来た時からずっとあったけれど、ようやくそのゲームがやれるようになったのは喜ばしい……。喜ばしいのだが……。

 私はまた何もできなかった……。

元気づけることも。立ち直らせることも。


 ユイちゃんを寝かしつけて私はある程度散らかったリビングを片付けた。

ふとあるプリントが目に入った。

それは体育祭のしおり。

名前の欄にはユイちゃんの名前が。

私はページをめくった。

そこには日程と自分のする行動、楽しみにしていたものがめいいっぱい書かれていた。

 私はそれをユイちゃんの部屋に持って行って、机の上に置いた。

来週はきっと体育祭の備品の片付けだろう……。

何も起きないといいのだけれど……。

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