第23話

 休日。

僕はソファで寝っ転がった。

 「ユイ。ご飯ですよ。」

 「はーい。」

 ソフィアの手料理ももう半年くらい食べている。

あぁ美味しい。

これを毎日食べて良いのヤバい。

 「どうですか?。」

 「うん。美味しい。」

 「それはどうも。」

 あ〜。幸せ。

あっ、そうだ。

来月にアカネ達と花火大会行く事を伝えなくては。

 「ソフィア。」

 「なんですか。」

 「来月、アカネ達と花火大会行くのだけれど、ソフィアも行かない?。」

 「……。大丈夫ですよ。楽しんできて。」

 「……。本当に良いの?。」

 「私は大丈夫ですから。」

 「そう?……。」

 なんか不安だ。

だって、そんな曇った顔で「大丈夫。」って言うだもの。

まるで自分に言い聞かせるように。


 それから1ヶ月。

特に変わりない日常が過ぎていく。

けれど、相変わらず不安が残る。

何をするにも僕の行動を優先している。

しているのはいいのだけれど。

そこにソフィアの意識を感じ取れない。

 「ソフィア。」

 「なんでしょう?。ユイ。」

 「なにか困ってることがあるなら言って。力になるから。」

 「…………。ありがとうございます。そんなに心配しなくても私は大丈夫です。」

 「なら……良いのだけれど……。」

 「はい。」

 やっぱりおかしい。

ソフィアのモノローグが見えない。

カーテンで閉められてるような。

そんな感覚が……。

 どん……。

 「ユイ?。」

 「しばらくこうさせて。」

 「はいはい。」

 僕はソフィアに寄りかかる。

どうしたら良かったのだろうか?。

僕はソフィアの力になれないのだろうか?。

なんだか寂しい。

ソフィア。君はそれで良いの?。




―――――




 最近はよくユイが甘えてくる。

たぶん私の心を察してるのだろう。

私はどうしたいの?。

いつまでしがみついているの?。

わからない。


 𝐓𝐄𝐋<トゥルル。

着信音。少し明るい着信音。

これはユイが設定してくれた音。

私のイメージにピッタリだからと。

着信元は《市ノ瀬楓》。

人気作『人魚姫と国一の歌姫』の作者であり、音楽、作画、小説、脚本、ほか多数の創作をこなすマルチクリエイター。

 《『久しぶり。元気にしてる。』》

 「……。はい。元気です。」

 私が彼女と知り合ったのは、中学生の時に親と喧嘩して家出した時。

たまたま近くにいた楓さんに捕まって、しばらく一緒に暮らしてた。

白金のショートヘアに白いオフショルダーの服にマーメイドスカート。

青い瞳は全てを見通してるような綺麗な瞳だった。

 「なんで今、電話を?。」

 《『あぁ〜。それはね。「また君と話したくなったから。」なんて言ったらどうする?。』》

 「からかわないでください。」

 《『ごめんごめん。なんか元気なさそうだったから。』》

 「そうですか。」

 楓さんは言葉の音色だけで私の心を読む。

本当に敵わない。

 「楓さんは……。」

 《『ん?。』》

 「楓さんは、もし好きな人が傍にいて……。その人に近くにいて欲しいけど、その資格に自分はないなったらどうしますか?。」

 何を聞いているのだろうか私は。

私はユイが好き。好きだけど。

それがユイの足枷になってないか私は……。 

 《『今度の土曜日なにか予定はある?。』》

 今度の土曜日……。

あっ……。ユイが誘われた花火大会の日……。

 「いえ。大丈夫です……。空いてます……。」

 《『本当に?。』》

 「はい。ですので行けます。」

 《『そう。……。じゃあ。後でメールで場所送るからそこで集合ね。』》

 「はい。よろしくお願いします。」

 《『はいはーい。』》

 プツン。ツーツー。

切れた。

まあいいか。

 ピロンとメールが届く。

SNSがあるのに楓さんはずっと前からメールでやり取りしている。

本人が言うにはそれが当たり前の世代だったらしいから癖みたい。

……。

 「ここって……。」

 こんなことあるのだろうか。

なんでよりにもよってここなのだろうか……。

ユイが行く予定の花火大会の近く。

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