第19話

春の陽気が短期で終わり。

まだ梅雨前なのに若干暑い今日この頃。

体育の授業のため、僕達は更衣室にいる。

 「それにしてもまた一段と大きくなってません?。」

 「ん?。」

 「本当だ。ブラ、少しキツくありません。」

 あおいとアカネが私の胸をまじましと見ている。

恥ずかしいし、隠したい。

 「少し……苦しい。」

 「ほらやっぱり。」

 本当によく見てるよなこの変態。

アカネのおかげである程度はスキンシップは抑制されてると思ったら、隙あらば抱きついてくるし。

 「この前も思いましたが、ユイさんって結構着痩せするタイプですよね。」

 アカネも割と容赦無くなってきてる。

この前なんて……。


 「次の撮影でキスのシーンがあるので良かったら練習に付き合って貰えますか?。」

 と言われ思わず了承しちゃったけれど。

アカネよ。

僕の脚の間に脚を挟んで壁ドンするな。

しかも僕よりも身長が高いからアカネ脚に僕の股が食い込む……。

 「どうしたんですか?。もしかして緊張してます?。」

 「うるさい……。」

 勝ち誇ったように僕の逸らした顔を空いてる方の手で首クイの容量で強制的に向かい合わさせられる。

 それにしても綺麗な顔だ。

引き込まれるような瞳。

空間が。視界が。彼女しかいないと思わせてくる。

これが……。

 「なんてね。ごめんね。こんなことに付き合わせて。」

 僕を解いたあと背を向けながら、「あぁ〜。やだやだ。」といった感じで上機嫌そうに必死に逸らしているが。

これ絶対顔を赤らめてるやつだ。

直前で急に意識しちゃったやつだ。


 なんてことが昨日あったばかりなので僕の身体を意識してるっぽい視線がする。

 「改めて見ると細いですね。」

 「まあ仕方ないよね。」

 「安定してきたとはいえまだまだ油断出来ないので、今日もゆっくりしていてください。」

 体調良い日が続いているとはいえ、油断ならないのは確かであって。

正直、僕も前世ほど運動できてない。


 着替え終わって校庭へ。

準備運動を済ませたあとは、僕は木陰でゆっくりしている。

これまでの15年間に比べたら準備運動できただけでもだいぶ良好なのだが。

……。

それにしても、やっぱり2人ともすごいな。

長距離走で一向にペースが落ちてない。

さすが元アイドルといったところ。

体力がものをいう世界なのだな。


 「お疲れ様。」

 「ありがとうございます。」

 「ありがとう。ユイ。」

 息を切らしながら帰ってきた2人。

原因は僕にあるのだが……。

いやぁね。

調子よさそうだから頑張って応援したらなんか速度あげて周回完了しちゃって。

そしてこの状態。

 「はぁ……はぁ……。思ったよりも体力落ちてませんね。あおい。」

 「はぁ……はぁ……。そっちこそこれから撮影あるでしょ。そんなんで大丈夫なの。アカネ。」

 こんな状態でもいつものが始まるあたり安定してるな〜君たち。

 「はいはい。そこまでですよね。」

 何となくだけれど。

頭を撫でてみた。

それがいい気がしたから。

 「今回は引き分けですよ。」

 「そうですね。そういうことにしておきましょう。」

 うーん。相変わらず勝負しているな〜……。

まあ景品は僕なのだが。


 再び更衣室。

長袖のシャツとスカートを履いて、少し暑くなったからブレザーは朝以外は来てない。

 「それにしても……。」

 まじまじと僕を見つめるあおいとアカネ。

何となく察するけどどうしよう。

 「こう見るとエッチよね。」

 「うん。こう胸のテント具合が。」

 えぇ……。

共感しあって語り合ってる。

こういうところは本当に仲良いだよな。2人。

 バタン。とわざとらしく大き音で牽制して。

 「2人とも。行くよ。」

 「は、はい。」

 「はい。」

 少々怯えた2人を連れて僕達は教室に戻った。

次はもう少し運動出来るようにしよう。





⬛︎⬛︎⬛︎




 私はスポーツは得意でもなければ、苦手でもない。

好きでもなければ、嫌いでもない。

……。

けれど、好きな人と一緒にやるのは楽しい。

親友ともそう。

家族ともそう。

そしてユイちゃんとも……。


 これから6月に向けての体育祭の期間が始まる。

まだまだ先の話なので気が早い気もするけど。

楽しいがあるとすればユイちゃんのチア衣装。

諸事情で出れる種目がない以上、せめてものということで。

幕間の応援で出ることになったことが決まったみたい。

体育祭は青軍、赤組に全学年、全生徒が2つ別れて争う行事である。

ユイちゃんは青軍で、私は赤軍……。

運がない……。

1/2のくじ引きで決めるから仕方ない部分もあるけれど。

去年も赤軍だったので来年こそはと思いつつ私はとりあえず出る種目の練習することにした。


 校庭のトラック。

リレーのバトン練習をしている。

学年合同で最後の種目。

 「お疲れ様。」

 「ありがとうございます……。っ!?。ユイちゃん!?。」

 「へへっ……。」

 なんと練習終わりにユイちゃんが水分補給に来てくれていた。

まあ、他の人にもやってるけれど。


 練習も終わり。

私たちは着替えて、帰り道。

 「楽しみだね体育祭。」

 「そうですね。」

 汗と日の光で透けたブラウスに若干の興奮を覚えしまった私。

ダメダメ。ユイちゃんをこういう目で見ちゃダメ。

 「どうでした?。チアの練習。」

 「ぼちぼちかな〜。あんまり無理のない範囲でやってもらうようになってるから。」

 「そう。」

 ユイちゃんのチアは楽しみではあるけれど。

どういう衣装だろうか?。

ノースリーブのワンピースみたいな感じ?

それともお腹出したり?。

脚あげたりしたら見えたりしない?。

大丈夫?。

 色欲に満ちていく妄想に私は頭を抱えながらそのまま家に帰った。


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