第16話

 あれから数週間が経ち。

僕とあおいとアカネでファミレスにいる。

なお相席で揉めてジャンケンで決めた結果、僕が窓側に。アカネが僕の隣で通路側に。あおいは反対側に座っている。

 「嬉しいです。私、ユイさんともっとお話してみたかったので。」

 「アカネ……。いい加減離れて。そんなにユイちゃんとベタベタしないで。」

 「まあ。ジャンケンで負けた分際でなのを。」

 もう日常の光景だ。

なんというか疲れる。

あおいはいつも以上に怒ってるし。

アカネはなんか程々に身体を触ってくる。

 「それにしても……。」

 「何?。」

 「あなた。肌が思いのほか白いですね。」

 「それはユイが病弱であまり外で遊べなかったからですよ……。」

 「あなたには聞いてませんよ。あおい。」

 「ぐぅ……。」

 思い吹けたように僕を観察している。

品定め……とは違うか。

なにか僕に対しての認識を改めるか。

そんな感じ。

 「ユイ。あなたにお願いがあります。」

 「なっ……。」

 あおいは動揺を隠せない。

まあアカネが僕の手を両手で握っているからなのだけれど。

 「お願いって何?。」

 「これからやる雑誌企画のゴシック令嬢で、衣装着て撮影して貰いたいのです。」

 「ふむ……。」

 「へっ……。」

 雑誌企画の撮影か。

こういうイベントはたぶん前世でも今世でもなかなかないのだろう。

でも僕で良いのだろうか?。

 「もし心配しているのなら問題ありません。私。この企画の座長なんです。企画監督さんも人選は私に一任すると言っているので。」

 「いやそういう事じゃ……。」

 そういう意味じゃない。

ただでさえ国民的高校生女優と僕が肩を並べて良いのだろうか……。

それならあおいの方が……。

いやダメだ。

あおいのあんな顔はもう見たくない。

 「悩むのも分かります。ですが、あの時に感じたあなたの景色が私には美しかった。」

 あの時って……あぁ保健室の。

 「それに。こんなにかわいいのにここで仲良くしているだけなのもったいないないです。」

 「それには同意。」

 あおい……?。

 「ですよね。こんなにかわいいのに私はなんで今まで見つけられなかったのか。」

 「わかってないな。ユイちゃんの可愛さは接して共にいるからこそ真価を発揮するのよ。」

 ん……。んん!?。

 「ですからお願いします。ぜひ出てほしいです。」

 「あ……うん……。わかったよ。」

 「ありがとうございます。」

 思わず承諾してしまった。

あおいに視線を向けるけどそっぽ向かれた。

あぁ、これは怒ってるなぁ……。

ごめん。あおい。

 「お礼としてはなんですが。」

 アカネがパフェからスプーンでひとつすくい上げる。

 「『あ〜ん』してください。」

 「アカネ。お前。」

 これはあれだ。定番のやつ。

あおいが声を荒らげるのも仕方ない。

あの子。こんなに一緒にいるのにまだ僕に対して1度もやった事ないから。

 「アカネさん?。」

 「はいなんでしょう。」

 「これはいったい……。」

 「はい。前金です。」

 はいじゃないが。

前金って聞くとどうしても某ロボットゲームの偽依頼が頭をよぎる。

騙されてないよね……。


 しばらくして僕はアカネと別れて、あおいと一緒に帰っている。

 「それにしてもアカネめ。今度あったらタダじゃいかんぞ。」

 「あはは……。まあまあ。」

 あおいが元気そうで良かった。

2人はいろいろあったから。

今こうして一緒に和気あいあいしているのが僕にとっては尊くて安心出来る。

本当に。

 「なにかあったらいけないので私もついて行きます。」

 「え……大丈夫……。」

 「少し怖いけどユイちゃんが心配なので。」

 「そ……そう……。」

 ここまで言われたら仕方ない。

まあ詳細は後日追って連絡するとアカネが言ってたからその時に頼んでおこう。





―――――




 最近……。ユイの帰りが遅い。

友達と一緒に遊んでいるから。

それでいいはず。

いいはずなのに。

私は……。

 「嫌な女って思われないかな……?。」

 だからこそ不安になる。

私では力不足なのではないのかと……。

一緒に楽しめないのかと……。

私がふさわしくないのかと……。

 「それもそうよね……。」

 だからだろうか。

成り行きで同居を始めた身。

元からそういう関係だった。

それだけで良いの?。

私は……。


 今日も私は帰りを待っている。

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