第2話 これはチャンス?

「よお!兄ちゃん!」


 青杜さんはとても迷惑そうな顔をしながら、口パクで『こっち見んな』と言っている。あ、これが私の知っている”冷酷男”か。確かにあの顔は見覚えがある。というか、お二人さん、顔似すぎてない?!


「えー兄ちゃん!兄ちゃんが言ってた、ださくらと話さないのー?これから妹になる存在なのに、話さないなんて不自然だよ?」

「お前マジでうるさい。別にいいだろ。血は繋がっていないんだし、そもそもクラスメイトなんだぞ。変なことをクラスに流されたら嫌だろ。」

「ださくらはそんな子じゃないと思うな〜?」

「あ、あの…そろそろださくらって呼び方、卒業してもらえませんか…?」


 晶人が青杜の方を向いて、ニコっと笑った。

 相変わらず、青杜は不機嫌そうな顔をしている。


「俺は別に構わないけど、ださくらって呼び方、なんだか面白くない?」

「私の名前で遊ばないで!」

「わりぃわりぃ(笑)兄ちゃんのマネ、したくてさ(笑)」

「言っとくけど、俺はださくら呼び続行だからな。お前みたいなやつは、その呼び名が一番似合う。」


 青杜がそう言うと、晶人はニコニコしながらそんな言い方すんなよ〜と言っている。

 大丈夫だよ、慣れっこだから。でも、まさか、冷酷男が双子の弟を持っているなんて知らなかった。しかも、冷酷男が晶人ではなく、青杜だということも初耳だ。かなり驚いた。


「で?なんだっけ?ださくらが今日から俺の妹?ふっ、笑わせんな。こんなきしょいやつが俺の兄妹だなんて、周りにバカにしかされねえよ。」

「そうかなぁ?香菜ちゃん、普通に可愛いからバカにはされないでしょ。逆に尊敬でしょ。」

「こんなやつがか?頭がおかしくなりそうだ。」


 なんだろう。この黒王子と白王子みたいな感じ。なんかあったよな、こんなアニメ?ドラマ?これもどっちにせよ、クラスメイトだから、実質あのドラマ?まあいいや。あんなに、この3人の関係が変わるわけじゃないし。血が繋がってないから恋愛はできるけど、兄妹という関係柄でもあるから恋愛に発展することはまずそもそもしないだろう。発展した場合?その場合は私によるかもね。発展したら絶対私は白王子を選ぶ。理由なんて皆わかってるでしょう?


「香菜、青杜くん、晶人くん。突然再婚という形での家族ができてしまってごめんなさいね。受け入れられない部分もたくさんあると思うの。でも、これだけは覚えていてほしい。私はあなた達のお父様の収入が良くて結婚したのではないの。人柄が良くて、同じ職場で働いていて、一目惚れだったのよ。それがたまたま、お互い子持ちの、相手がいない状態だったってだけなの。そこだけは、違うからね。」


「大丈夫ですよお義母さん。僕たちはそんな事考えていませんから。我々の父を再婚相手に選んでいただいて、息子の僕としても光栄に思っております。これからは、僕の母親として、お義母さんの息子として生きていくので、よろしくお願いいたします。」


 すごい。あの冷酷男こと青杜があんな礼儀正しい言葉を使っている。お母さんに普段の青杜を見せてあげたいわ…。そういえば、私の部屋はあっても二人の部屋はどこにするんだろう。


「お母さん。青杜と晶人の部屋はどこにするの?」

翔平しょうへいさんと話したんだけどね。ふたりとも男子高校生なのだから、二人同じ部屋ってのは窮屈すぎるし、なんだったら兄弟揃って一緒にいないと親近感が湧かないだろうってことで、家ごとリフォームしようかってなったの。だから、とても広いお部屋になるわよ。」

「父さんが金出すの?」

「俺の提案したことだ。提案者が責任を取らなくてどうする。」

「やっぱり父さんはすごいな。」


 わかってる。ちゃんと理解してる。お母さんはお義父さんの資産目当てで再婚したわけじゃない。そのうえで、お義父さんもお母さんと結婚したんだ。


「それで?俺たちがこれから住む家はどんな感じで仕上がるの?」


 晶人が興味津々な顔でお義父さんに聞くと、お義父さんは、


「晶人。そう早まるな。またお前の悪いところが出てるぞ。でもまあ、お前たちの家でもあるから、言わないことはできないな。少し伝えるとな、お父さんたちが住んでいた家に少し似ている間取りになる。」


 なるほど。つまり、私の感覚としては、クラスメイトの部屋にお邪魔しているような感じか・・・え?ちょっとやばくないですか?男の子の部屋だし、思春期真っ只中の男子部屋に女の子がひとり入っていいんですか?


「え、お義父さん。その部屋に私という女が入ってしまっていいんですか?晶人とか青杜、嫌じゃないんですか?」

「別に構わんだろ?なあ?ふたりとも。」

「俺はどちらかといえば賛成な人だぜ!だって、兄ちゃんといるといつも冷たいこと言われるから嫌なんだよ〜!もう一人、俺たちの部屋に住居人が来るのはめっちゃ嬉しいことだよ!!」


「俺は、できればこいつらとは別の部屋に行きたい。静かな環境で一人楽しみたいんだ。そこは父さんも理解してくれるだろ?」

「青杜のことだから、理解はしているよ。でも、この期に及んで、まだそれを言うかい?あのときは二人だったからちょっと考えてはいたんだ。だが、今は3人だ。それに、今お前は高校生なんだ。そんなことで駄々をこねる奴に育てた覚えはない。」


「弟の言うことにしか耳を傾けないから俺は父さんが・・・」

「父さんが何だ?言えないのか?自分の口からはっきりと言えないようなことはまず口に出すなと言っているだろう。なぜ守れないんだ。」


 私には伝わってくる。青杜はお義父さんのことが嫌いではあるけど、逆らえない存在なんだ。でもなんで、逆らえないんだろう?


「ねえお母さん」


 私は小さい声でお母さんに話しかけた。


「お義父さんって何やってる人なの?」

「あれ、香菜、知らなかったっけ?翔平さんはね、私の会社の社長なのよ。」


 社長…か。だから、いくらの青杜でも、強く言うことはできないんだ。社長の息子だから。息子が恥をかく真似をしたら、社長であるお義父さんも恥をかく。社員からの信頼もだいぶ失うであろう。なるほどな~。なんか、すごい人がお母さんと結婚しちゃったな。


「ごめん、父さん、、、。もうこれ以上は言わないから、、、。」

「そうだ。それでいいんだ。」

「あの、お義父さん。少し、青杜と晶人と相談したいので、席を外してもいいですか?」

「ああ。構わないよ。こちらもこちらで、妻と今後のことを話さなければいけないから、ちょうどいいときだね。お母さんがまた、夕食のときに呼ぶであろう。それまで、3人で過ごしていなさい。」


 私達は、私の少し狭い部屋に移動した。






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どうも皆さまこんにちは、凪です。少しだけ宣伝をするお時間をください!

私の代表作、自信作となっている、『幼馴染のアイツ』をぜひ読んでみてください!

10話未満の小説(完結済み)となっていますので、時間があるときにサクッと読めるかな〜と思っております。読んでみたって方は、ぜひ応援・応援コメントよろしくお願いします!

作品数少ないので、私のアカウントに飛んでいただければすぐにでも『幼馴染のアイツ』読めます!失礼しました!引き続き、お楽しみください!

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