第24話 畳の上で晩ごはん
ここの休憩所は畳敷きで、端っこの方にマッサージチェアが三台設置されていた。
反対側には座布団くらいの大きさのマットが山積みされていて、漫画でいっぱいの書棚がある。
マットは低反発で、二枚並べると布団代わりになった。
なるほど。
寝転がって昼寝するなり、漫画を読んだりするところなのね。
いやー。それにしても。畳って久しぶりだな。なんか落ち着く。
ここって飲食禁止かな? ま、そんなの関係ないか。
こういうゴロンとできるところで一杯やるのもいいねー。
「よっし。注文だ」
もちろんビール!
ひとっ風呂浴びたら、ビール!
もう慣れたもの。居酒屋のタブレットよりも早く注文できちゃう。ちゃちゃっと注文して、すかさずキャッチ。
「ぷはー。これこれこれー! ふー!」
ああ喉を鳴らしちゃいそう。
うまーい!
今更だけど、配達手数料とか気にせず注文できるって最高だな。
それに、最低注文金額もないし。
昔は、1,200円ギリギリを狙って二つ組み合わせても1,180円とかになって、「ちっくしょう!」て、よくぼやいてたもんな。
あ、もう晩ごはんもここで食べちゃおう。すぐに横になれるのも楽だし。
風呂に入る前に通った食事処は、人がいないためか稼働していなかった。
多分、ウオーターサーバーみたいに据え置きのものだけが有効なんだ。
でも問題なーし!
なんたって、ご飯問題は最初に片付けたからねー。
晩ごはんは――うーん。今日はこれかな。
ラーメン!
えーと。とんこつ醤油にしよう。チャーシューとメンマとネギをトッピング。あと餃子も。
おっと。どうやって受け取ろう?
ビチっとラップはしてくれてるだろうけど。熱いし。
とりあえずしゃがんで、この表示を畳スレスレにしてから、ポチッと。
ボトンと、見慣れた丼の形が着地した。
おっほ! 大成功―! フー! やるな俺。
「ああ、懐かしい。このスープ。ラーメンて何日ぶりだろう」
ズズズーと麺をすすって、スープをゴクリ。もういっちょゴクリ。んまいっ!
トップングも豪華だよね。いつもならこんな注文しないけど。
ああ俺、本当に金持ちになったんだなー。
ラーメンとビール――結局、三杯飲んじゃった――を堪能してゴミを片付けて、コーラのLを注文した。
それから棚にある紙のコミックを読んだけど、結局、最新巻がないのでいつものWEBコミックに。
寝転んで両手を下げても画面が消えないのが嬉しい。
そういえば、WEBコミックの更新時間のお陰で、こっちの異世界の時間と前の世界の時間がほぼ一緒だっていうことが分かったんだよね。
体感的にもしかしたら、とは思っていたけど。ま、一緒だから何って感じか。
コミック読んで、コーラ飲んで。ちょっとうたた寝。また読んで、飲んで、ゴロゴロ。
ああ幸せー。もうこのままの生活が一生続いてほしい。
ほんと、スマホの神様、感謝します。
――って、感謝の祈りを捧げたところで、突然、お尻の下が冷たくなった。
目の前には宮殿の部屋のドアがある。
「え? いきなり追い返された?」
しかも着ていたはずの館内着がなくなっている。
真っ裸だ。
洗濯してびしょびしょに濡れた下着類も、べちゃっと床に転がっている。
そっか! 閉店時間になったんだ。なるほど。それで強制的に追い出されたのか。
「よしつねー。突然消えたでしゅー」
キュウが目を回しながら、ぷにょんと転がっている。
「キュウ。よかったー。お前も一緒に追い出されたんだな。びっくりしたねー」
あーあ。せっかくお風呂に入って綺麗にしたのに、真っ裸で床に放り出されちゃったよ。
うへっ。お尻拭かなきゃ。
トントントン。
は? とんとんとん? ――ってノックの音じゃん!
「よしつね様。夜分申し訳ございません。実は――」
アドルフが思いっきりドアを開けて、テオドールと隊長がその後ろに立っていた。
いや、そんな! 三人とも固まらないで! お願いだから。
「あ、いや、こ、これは――」
これは違うんです。あなた達に見せつけるために、こんな風にドアに向かって大股広げて座っていた訳じゃないんです。
「ちがっ、違う! アドルフ! 違うから! だから、テオドールも! 頼むからそんな顔しないで! あ、あの、隊長も、誤解です! 誤解なんです!!」
「ええと。その。よしつね様」
アドルフが目を逸らしながら、「こちらをどうぞ」と、新しい制服を差し出した。
何はともあれ、とりあえず受け取った制服を大急ぎで着た。
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