第31話 領を綺麗にします
領を綺麗にします
私たちはブレイク予定のダンジョンに居ます!
閉所での戦闘はマリィさんの独壇場です。
「ちぇすと!」
マリィさんが謎の叫びをあげて勇者の剣で小鬼を棍棒ごと両断しています。
それを隙と見た他の小鬼が剣を突き出しますが、バックユニットの副腕にマウントされた白銀の機械槍が射撃を行いフォローして小鬼に痛手を加えると流れるようなマリィさんの追撃に剣の小鬼は沈みました。
「う~ん、快適だ。閉所での副腕バックユニットはイイネ!」
マリィさんは2枚の布を大きなカバンに詰めてヘラヘラ笑っていますがあの装備の値段を考えると破損したときの出費が気になってしまいハラハラです!
「不意打ちには気を付けてくださいね!」
そんなことを言っているとマリィさんがまた、本日二回目の落とし穴を踏み越えました。
「イレイザ先生!気を付けてね!落とし穴があるみたいだよ!」
スキルの関係で良くある落下系の罠に強いマリィさんが警告してくれます。
不自然に見えますが、マリィさんのスキルは空中を踏むのです。
あらゆる落下に強いスキルで、魔導鎧の制御に失敗しても簡単にリカバリーが効いて街でやったみたいな凄い軌道を平気な顔でやります。
「ありがと!」
私が魔導スラスターで落とし穴を飛び越え感謝するのを、うむと見届けるとずんずん進んでいくマリィさんは紙一重で回避しては一振りごとに小鬼を両断していきます。
はらりと落ちる
布、布、布
そして片手剣です!
「ヤッタ!レアドロップだ!山分けしようね?」
振り返って笑うマリィさんは楽しそうに危険地帯を満喫しています。
レベリングの時も思っていましたが思い切りが良すぎる気がしますよ!
そんなことを繰り返していたら、私たちは中間地帯の関門にたどり着きました。
「ここは人に慣れてないダンジョンだからイレイザ先生のアレ!アレでやっちまいましょう!」
人に慣れていないダンジョンだと魔法陣からゆっくりとボスが出てきます。
そこに消滅の光線で不意打ちしようというのがマリィさんの目論見みたいです。
「どうかなぁ~?」
私は自分の戦闘適性を消滅の光線以外、信じていないので不安です。
「失敗したらフォローするからさ!ネ?ネ?頼みます!先生!」
フォローしてくれるとの言葉を信じてやります。 決して持ち上げられたからやってやろうかなんて思ったわけでは無いです。
「仕方ないですね~!」
マリィさんが開いた両開きの関門について行き、部屋の床中央にある魔法陣から出た首に向けて撃ち込みます!
「消滅の光線!」
全身鎧の豚鬼が無くなった首以外がゆっくり出た後に倒れて消えていきます。
「ふーむ?面白い結果になったね?」
不思議な魔法陣の働きに興味津々のマリィさんですがしっかり成功して安心した私は座り込んでしまいました。
「私もちょっと疲れたし休もうか?」
カバンから袋と水筒を取り出してこちらに近づいてくる様子は気づかわし気で口には出しませんがこうして優しくされると、とても安心してしまいます。
どうして私がこんな力を得たのかと昔はずっと呪っていましたが、今はマリィさんを中心に良い仲間に恵まれて、この力の使い方を一緒に考えてくれます。
この余分なダンジョンを排除するギルドマスター補助業務もその一つで、ギルドマスターの助手として何かと白い眼で見られる危険スキル持ちの私を守ってくれています。
戦士の時間は苦手ですが皆の私を守ろうとする気持ちに奮い立たされて、戦士の経験を積んでいきます。
渡されたお茶と小さなケーキに舌鼓を打ちつつ、ケーキをポンポンほおばる英雄さんの顔を覗き込んで聞いてみます。
「私も戦士として頑張れるかな~?」
「イレイザはもう戦士だよ?保証する!」
「こんなに人の為に戦っている」と私を持ち上げてくれます。
私は実感が湧きませんが、ダンジョンブレイクは本当に危険な仕事でモンスターを吐き出す余計なダンジョンが減ることは街道の安全にも繋がるらしいです。
こんなに難しいことをと尊敬の視線を向ければむず痒そうに「マリアの受け売りだよ」とそっぽを向かれてしまいました。
この可愛らしいギルドマスターの補助業務はこういった時に役得に思えます。
休憩の後は同じようにマリィさんがモンスターを撫で斬りにしてボス部屋のダンジョンコアを私が直接攻撃して、それでおしまいです。
残された半身の埋まった残りが「向こうにあり」動けないボスモンスターは競売にかけて経験値として売るそうです。
これもみんなが考えてくれた私のスキルの利用法その2ですね。
「イレイザ先生お疲れ様!家まで送っていくね?」
マリィさんに抱き上げられて飛んで帰ります。
向かう先には私たちの街、倉庫連なり魔法の足場飛び交う港町ローナが有ります。
これで今日の私の補助業務はおしまい。
戦士の時間から日常を満喫する時間に帰っていきます。
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