第32話 ローナ衛兵24時!

 ローナ衛兵24時!


 ローナの港町は栄えている。

 栄えているが故に、悪事を働こうという者は後を絶たない。

 しかし、この町は屈強な衛兵隊にスーパーニクス型魔導鎧、そして強いギルドマスターが守護している!


 これはそんな町を守る英雄たちのお話である。


 ロ001ことアレスからの出向新兵殿と、ロ002ことアレスからの出向教導官殿が装備する。胸にも番号の書かれた、スーパーニクス型魔導鎧の衛兵無線が鳴り響く!


 =こちらロ015!緊急事態発生!緊急事態発生!現場に急行せよ!現場は西部倉庫街!繰り返す!~


 深夜のローナの街で、緊急事態を知らせる衛兵無線が繰り返されるのを聞いて、ニクス型よりも強化された魔導スラスターを吹かして飛び立つ。


 深夜のローナの街は、夜でも明るく魔道具の明かりに照らされているが、その明るさ故に闇はより暗く深くなっている。


 特に夜の倉庫街は、仕事をする人間が居座るわけでもないため、犯罪者が集まるには絶好の場所だ。

 

 倉庫街にスーパーニクス型が複数機、パトランプを光らせてサイレンを鳴らしている。


 ロ001とロ002が合流して、ロ015に直接話を聞く、無線は傍受される危険があるためだ。


「ロ015! 現場の状況は?」

「ロ001殿! ロ002殿! 指名手配犯を発見! 倉庫に立てこもっている模様!」


 指名手配犯を見つけたが、相手は倉庫に隠れてやり過ごそうという腹の様だ。


「犯罪者を見逃すわけにはいかない!少し待て、責任者に連絡して破壊許可を取る!」


 即断したロ001は無線の周波数をギルドマスター直通に変更すると確認する。


 =こちらロ001!ギルドマスターは居るか?

 =ロ001、こちら代理のクマノだよ。どうしたの?

 =クマノ、緊急事態が発生! 犯罪者が立て籠もった倉庫の破壊許可を頼む!

 =ロ001、代理権限で許可するよ! がんばってね!


 無線の周波数を衛兵用に戻して声を上げるロ001。


 =ロ001、責任者より破壊許可が下りた!全機ラピッドアームキャノン起動!

 =ロ002、破壊許可確認!ラピッドアームキャノン起動!

 =ロ015、破壊許可確認!ラピッドアームキャノン起動!

 =ロ032、破壊許可確認!ラピッドアームキャノン起動!


 破壊許可を受けて起動された3本のバレルの纏められたアームキャノンの砲身が回転する。


 =ロ001、ロ001より目標倉庫へ……掃射!

 =ロ002、掃射!

 =ロ015、掃射!

 =ロ032、掃射!


 4機のスーパーニクス型の両腕にあるラピッドアームキャノンの掃射により、金属で補強された頑丈そうな真新しい倉庫が崩壊していくと跡には半死半生の鎧騎士数名が残された。


 =ロ001、指名手配犯を確認!スタンロッドで捕縛後、町の外で処理せよ!

 =ロ002、俺がやっておこう!ロ001殿?人に任せられるようになって上々だぞ!


 ロ002が魔導鎧の腰から引き抜いたナイフ程度のスタンロッドを起動すると一気に2メトルほどの大剣のような長さになり紫電を纏い始める。


「セイヤ!」

 ロ002がスーパーニクスの巨体を自分の体のように制御して魔導スラスターで急接近、鎧騎士を切り払うと数名の鎧騎士は痙攣して動かなくなった。


 =ロ002より、要請する。ロ015とロ032指名手配犯を運ぶのを手伝ってくれ。


 指名手配犯は適切に処理されて、ローナの夜は更けていく。


 ガルト王国は指名手配犯に対して、期限を設けずに手配をかけるが、それは犯罪者の強者を生み出さない為でもある。



 夜が明けて朝になるとギルドマスターマリィが、朝一番の空中散歩を始め、飛びついたウォータードラゴンパピーを大剣のスキル攻撃で浅瀬に吹き飛ばし、空中からのアームキャノン掃射で仕留めている。

 毎朝見る光景だが、町の人々にとって海辺のギルドマスターが強いのは心強い事この上なく、外から来た商人たちにとってはガルト王国の土産話に丁度いいと喜ばれている。


 いつもの日課を終わらせた、でかい襟のマントを羽織った黒髪の少女は街の様子を検分して回り、クマノの許可で吹き飛ばされた倉庫に着陸すると、現場見聞する衛兵の話を聞きに行く。


「おはよう! ご苦労だったね? 此処に指名手配犯が出たって? 」

「ッハ! ギルドマスター殿! 私が発見いたしました! 衛兵長殿訓練官殿と他1名と共に鎮圧、処理しました! 一つ不安がありまして倉庫は大丈夫なのでしょうか?」

 少女の姿でもレベル12の英雄に下手な態度は出来ないとカチカチな態度を取られるのに少し眉が下がるマリィだが、これもまた仕事だと笑って対応する。


「私の名義で作ってある倉庫だからね! 契約書の補足にも犯罪者の鎮圧時は荷物の保証は致しませんって記載してあるから箱を建て直すだけだ。 ワッハッハ!」

「ハハ! それなら大丈夫ですね」

 悪そうな顔で笑うギルドマスターに、親近感を持ったのか笑いを返す衛兵。


 衛兵の見分の終わった倉庫の跡地には、魔導フロートによって次々とパーツが送られてくる。 それを手慣れた職人がパーツを組み立て、簡単に倉庫を建て直す様は文字通り魔法のようだ。


 倉庫が組みあがれば、そこでラピッドアームキャノンの掃射が行われたとはわからない元通りの状態になっている。


 こうしてローナの街の治安は守られた。


 家の窓から一連の出来事を眺めていたイレイザは「絶対犯罪者にはなりたくないなぁ~」といつも思っていることを確信して、休日の朝を寝て過ごすことにした。


 今日もローナの街は平和で美しい街だ。


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