第30話 街を綺麗にします
街を綺麗にします
黒い髪を跳ねさせて飛ぶマリィさんの後に付いて多目的バイザーを上げたまま魔導鎧のスラスターで飛び上がると眼下には無数の魔導フロートが倉庫の間を飛び交い栄えるローナの街が見えます。
「イレイザ先生!不快なアレをアレでやっちゃってください!」
マリィさんの指差す先には路地に積まれたゴミの山が見えて、確かに不快ですね!
私の昔は怖いだけだった今はクリーニング屋さんとしてのメインスキルが火を噴きます!
「やっちゃうよ~!」
「消滅の光線!」
私の視界が白くなるとゴミの山は消えて、線状に綺麗になった路地だけが残ります。
「へへ、流石はイレイザ先生だァ!」
マリィさんのワザとらしい称賛も耳に嬉しくて微笑んでしまいます。 レベルアップのお陰で制御力が上がって、消す対象を細かく選べるようになったのです。
私のスキルは消滅と呼ばれていて、何でも消してしまう危険スキルに当たる物です。
同じようなスキル持ちや、身内に強者が居る人以外には受け入れづらい性質でしたので孤立していたのですがマリィさんが街を作るときにこのスキルが大活躍したおかげで街での評判はとても良いです!
私の様な危険スキル持ちは一定数いるのですが、同じ境遇の子たちの希望となれるよう、戦いも!日常も!頑張りたいと思っています!
暫く、マリィさんの便利すぎて羨ましい空を蹴る固有スキルとニクス2型の魔導スラスターを合わせた、ドラゴンすら翻弄する鋭角で華麗な飛行にゆっくりとついていきます。
「あ、思い出した。先生!アレも吹っ飛ばしておくんなせぃ!!」
マリィさんが今度指差したのは港の外れに浮いている遠巻きに休憩中の労働者に見物される半壊したフネです。
半壊しても機材類が残っていると勿体ないので確認を取っておきます。
「消して大丈夫なの?中身はどうなって?」
「昨晩ラピッドアームキャノンで吹き飛ばしたフネだから中身は皆の臨時収入だよ!」
そういう事なら安心して撃ち込めます。
「わかったよ!やっちゃうからね」
一応、生物を対象から外して…
「消滅の光線!」
私の視界が白く染まると、船は消え去ってバタバタとネズミたちが海に落ちていきます。
労働者さん達の拍手がここまで聞こえてきます。
「あぁ~黙とう!じゃあ次へ行こうか!」
「なんだか都合よく私を街の掃除に使って無い?クリーニング料取りますよ?」
「ソンナコト、ナイヨ」
目を逸らされます図星ですね!
「本当です~?」
「ワタシ、ウソツカナイヨ、ホントヨ」
お金持ちなのにケチなギルドマスターさんです!
家の裏に戦艦二隻も隠し持っていて武器と変に高級な食べ物以外には全然お金を使わないので、街の寄り合いでも良く問題に上がります。
服も同じような虹色の服ばかり買うので、一品物というだけで流行にはなりません。
「あぁ~門の前にごみを集積済みだった、それは公費で落とすよ!金貨2枚ね!!」
「金貨!2枚!やりましょう!任されました!」
ガルト金貨はセーラ銀貨100枚分です!
市民の日給はセーラ銀貨1枚でリーブ銅貨10枚です。
リーブ銅貨1枚はパン1個なので…
パン2000個分の仕事です!!
家には友達の近所で魔道具店を経営するエールから貰った火の魔道具が置いてあるので焼き立てみたいなパンが!
食べ放題です!友達も呼んで、焼きパンパーティーです!
結局公費というのは気になりますが、お金を貰える私には関係のない事ですね!
問い詰めていた時のうろうろした飛び方とは一転して逃げる様にロールしながら巨大なマントを翻して飛んでいく様は訓練で見た旧文明の戦艦が見せる回避運動の様で、レベルが上がってなければ見逃してしまったでしょうが、ゆっくりとついていきます。
家一軒くらいの雑多なゴミの積まれた区画が見えてきました
「では、イレイザ先生頼みます!」
「やっちゃいますよ!!」
「消滅の光線!」
私の視界が白く染まると家一軒くらいのゴミの山は消えてなくなりました!
金貨2枚は私の物ですよ!
「今日のギルドマスター補助業務は余計に出たダンジョンの排除で終わりだよ」
「頑張りますよ!」
「私がちゃんと護衛するから安心して?」
やる気の上がった私は元気いっぱいにマリィさんについて行って、途中でへばり運搬されます。
「大丈夫?今日は休もうか?」
「消滅の光線使うだけだから大丈夫…」
私の消滅の光線は戦士のスキルと違って発動句と言う訳ではないので暴発しません。
自分の意志のままに使うと出るだけなので、単純な私の意識づけに名前を付けています!
マリィさんに地面へ降ろされた私はこちらを気遣う灰色の目に振り返り確認されつつ、ダンジョンの暗い穴に入っていきます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます