転入生はドラゴンキラー

第13話 新入生の勉強 


新入生の勉強


ここはアテナ、ガルト王国南の魔法学校がある大都市だ。


 秋ではあるが南方の街のため、まだまだ暑い日が続いている、ある日。

このアテナ魔法学校・開拓科に転入生が来ることとなった。


〜〜〜

 アテナ魔法学校は3つの校舎と大きな門に別れていて、入口付近には両脇に守衛室がある大きな門。


 門の正面にある大皿を重ねたような噴水は水面に歪んだ渡り廊下を映していて、その渡り廊下で3つの校舎が全部つながっている。

 渡り廊下は校舎並みの広さが有りそれぞれの雑務を請け負う庶務課が入っている。


 渡り廊下に入って右側は魔法科、真ん中の道の先は職員室と特別教室、左側はその他の科の校舎になっている。


真ん中の校舎の特別教室

今回の物語はここからはじまる。


 落ち着いた顔で真新しいアテナの制服を着た少女が肩に大きなケースを担いで廊下を歩いている。


長い黒髪を右肩から前へと髪飾りで纏めた少女、マリィだ。

 

アテナ魔法学校の制服は複数あり、魔法科は裾の長い黒ローブで、他は茶色のブレザーだ。


マリィは開拓科のため茶色のブレザーを着ている。


「ここかな?開拓科、特別教室」


マリィがドアのネームプレートを見て、声に出す。

首から胸に下がった発火器がピカリと青く光る。

重厚なドアをノックをすると、どうぞと返事が返される。


これから学生として勉強だ!



 何故そんなことになったのかと言えば。

前回の戦いでもって、もしかして自分は人間離れした存在なのでは?

と、ようやく自覚を持ったマリィが将来を不安視して相談した結果だ。(将来なんて考えてたのか?)


 将来の不安をエレノアに相談したところ。

マリィは栄え有る戦いに恵まれている事

戦いの末には大戦士への道が開かれる事

大戦士になったら、開拓が許可される事

等を順序だって説明されて、大戦士としての開拓をオススメしてきた。


エレノアが自信満々で


「金!力!権力!を持ってれば不安はないかも!」


 などと言い切る?ものだからマリィは乗り気になってしまった。

さらに商会のバックアップで学校で共に開拓する意思のある仲間達と勉強できることになった。


エレノアの学校の生徒はみんな優秀だったとのお墨付きの後の


「私の母校で良き開拓仲間を集めてほしいかも」


との誘いについにマリィは飛びついた。


 今、マリィはレベル9であり大戦士直前、開拓をやるにも、やらないにも相応の知識、人手が欲しかった。


 その上に、マリィは封印してしまったマリィの同胞?を抱えており。

どうにかして、できるだけ、安全快適、左うちわ!はともかくとして

 向かうところに強敵が出てくる今の状況を変えるべくやってきたのだ。


まずは、危険に飛び込んでいく自分が変わらなければ、難しいと思われるが…。



~~~マリィ


 朝日の差す半円状の教室で13人、26の目がこちらを見ている。


 紹介のために、アテナのドラゴンキラーである高齢な見た目のシールド学園長が立ち会ってくれているのだ。

正面の一人以外みんな…ガチガチだ!??


「アレスからの推薦で来てくれたマリィ君なんだ!彼女はレベル9の戦士!自己紹介をして欲しいんだ!」


シールド氏がマリィを教卓前に導いてくれる。


 ここは一つ緊張をほぐそうと思いついた。

肩に掛けていた長いケースを教卓に置き開けて見せると、中には1メトルほどの白銀の長物。


「マリィです!自己紹介はコイツで皆と交流したいんだけど!どう思う?」


 簡素な槍にレバーや引き金が付いている。


 機械槍だ、最近、マリアからも許可を得られたマリィの元メイン武器。

新入生が開拓に近い戦士ということで集まった、実力ある生徒たちは乗り気だ!


「話が早いな!俺はデビット!優秀な戦士と聞いている。よろしく頼む」


大柄な、スキンヘッドの男子生徒が真っ先に反応する。


「アレスの長槍工房製か、いい趣味だ。俺はバレット!俺も機械槍使いだ」


今度は、真剣に機械槍の品定めをする男子だ。


「落ち着きなさいな!ところで、目標は学園地下の自律魔導兵器はいかが?」


素早く場をまとめる女子、彼女がリーダーか?


「近くに良いところがあるんだね!よろしく!」


渡りに船と飛び乗った。


がやがやと、アリスというらしい少女の後をみんなで続く。


「若いっていいもんなんだ!アリス!がんばるんだ!」


教室でシールド氏がやけに感動していたのが印象的だ。

後で聞いたがアリスはシールド氏の孫らしい。


~~~

 みんなで庶務課から預けている装備を更衣室で装着すると、入り口にあった大きい門へ向かう。


 「特別教室のマリィ様が学園地下の自律魔導兵器との戦闘をご所望ですわ。」


守衛さんに話を通してくれた生徒アリスはマリィを振り返る。


 「入るとすぐに1機出ますから、まずはお手並みを拝見いたしますわ」


親切に教えてくれるアリス、アリスのことが好きになれそうなマリィだった。


軽い注意を聞きながら、地下へと向かう。


~~~マリィ


 機械槍というと複雑な機構がありそうに聞こえるが、見た目は中折れ式の巨大な銃に槍の先が付いた武器だ。

 リロードのために折らないといけないわけでは無くちゃんと弾倉が有って。

 弾倉を手元にセットしてレバーで装弾すれば、後は機構がどうにかしてくれる。

機械槍の中間が折れて短銃身では連射モードで連射可能、抑え手として槍を使う。

 槍を前面に展開した状態は長銃身の狙撃モードで槍も使える。

銃身の部分を自分で動かして、連射と単射を使い分けるのだ。


 長々と構造を説明したが、最初に言った通り、槍のついたでかい銃だ。


使い方は単純で、敵に向けて、引き金を引くだけ、だ!



~~~


広い地下の意外とカラリとした空間でシャカシャカと放浪する存在がいる。

自律魔導機械だ。


「こ~んなかんじに~♪」


 マリィは敵を認識すると、ふわりと飛び上がった。

丸いボディに8つの足が生えた蜘蛛型機械に一気に接近、連射モードでダカダカと快音を響かせながら。蜘蛛型機械の斜め上を煽る様に飛びまわる。


空薬莢がカラキャラと床に転がる。


その間、折った長銃身をしっかり握り保持していて短銃身はずっと敵の方を捉えており、機械と足元の床はハチの巣だ。


着地、引き金の近くのレバーを引き、ゆっくりと手元の使い切った弾倉を抜く。

そこに、ポケットから出した新しい弾倉を差し込むと新しい弾倉があったポケットに使い切った弾倉を突っ込む。


リロードのため、銃口近くのレバーをガチャリと引く。

手慣れた動きだが、慎重に行っているようだ。


「えげつねぇな、さすがは最新の龍殺し、飛行はドラゴン以上か?」


 ハチの巣になった機械を警戒し拳銃を向けている男子、ロックが面白そうに呟く。

金髪に黒目の男子で線が細い。

それを聞いた、閉所なので警戒のフォローをしている桃髪の重砲使い、ガリア女子。


「龍殺し?彼女はレベル9では?あの飛行速度、練度は匹敵すると思いますが…」


どうやって、ドラゴンの装甲を抜くのか?とマリィの武器を髪と同じ色の目で見つめる、機械槍では火力不足だ。


「以前、隠された宝物庫で勇者の剣と盾を得たらしい、確かな筋の情報だぞ!」


「今の目的はマリィ様との交流ですわ。無粋でなくて?直接お聞きになればよろしいですわ」


話が目的と脱線している二人をアリスが注意する。

強さの評価はいいが、今は本人が目の前にいるのだから本人と話せばいい、と語る。


それに対して、顔を見合わせた二人、代表してロックが返事をする。


「でも、ドラゴンキラーだぜ?シールド氏の孫のあんたなら平気だろうが…」


なあ?とガリア女子に言えば、ガリアは桃色の目をそらした。

そんな様子にアリスはマリィの目的と思われる事を語る。


「マリィ様は大戦士として立つため、私たちとの交流を望んでいるのであって、恐れ敬われる事は望んでおりませんわ。」


大志のためには仲間が必要なのだと二人に語るアリス。

その間、敵を撃破したマリィの周りに生徒たちが集まっていた。

マリィは使い切った弾倉に装弾…弾を込めながら話を聞く。


「この自律魔導兵器は偵察タイプですね!通路の奥に本隊がいるはずです。」


 機械が得意なエリス女子が解説する。

エリス女子は青い髪で黄色い眼の女の子だ。

ごついロボ鎧を着こんでいるが。

じっと見る。


「この鎧ですか?ニクス型魔導鎧です!貴方ほどでは有りませんが飛行能力もあるんですよ!傑作鎧です!」


ふわりと飛んでみせる。着地はガシンと言っている。

両腕に付いた砲身をブンブン振って幸せそうだ。


「ニクス型は重武装な上で脱出装置も生存率が高いからな、実績ある良い装備だ」


 横から頷きながら大柄な男子、デビットが来た。

彼もニクス型装備だ。


 この学校の生徒の装備はかなりの高級装備と思われる。


「ニクス型は積載性も良いからね!ベヒモス型なんて、ニクス型二人分の席を占領する上に、着たままで乗れないから輸送担当としては辛いわね!」


 輸送担当を自称するカルラ女子はワハハと茶髪を掻きながら赤い眼を細めて笑う。

彼女もニクス型だ。


「ベヒモス型は…重さが厄介だ…」


 土木担当らしい男子ホルスからもベヒモス型は寡黙に辛口評価だ。

彼もニクス型。


耐えきれなくなった、赤い髪のバレット君が青い眼を見開いて叫ぶ。


「ベヒモス型で悪かったな!硬くて強くて皆を守れるんだぞ?格好いいだろ!!?」


強さと格好良さを主張する男がここに一匹…


自律魔導兵器の本隊は、ニクス型のアームキャノン掃射で壊滅した。









~~~転入から1か月後


ので!ドレッドノート型魔導鎧の大型キャノンの一斉発射を見たのですがそれは…」


 夏の名残を感じさせる暑さの特別教室でマリィは名前を呼ばれる。


「マリィ!あなたの遺産装備レガシーウエポンの解析が終わったそうですわ。庶務課の方が呼んでおりました。」


大きな声でマリィを呼んだのは学園長の孫のアリスだ。

皆をまとめるのが得意で、面倒見がよいこのクラスのリーダー、

何故か、魔法使いなのに魔力が伸びづらい体質なので魔法使いなのにレベルアップ志望のチャレンジャーだ。


「はーい、ということでエリス、ドレッドノート型魔導鎧の話はまた今度で~」


機械好きなエリスのマシンガントークを回避して、庶務課へダッシュするマリィ。


「マリィ!廊下は走らない!」


アリスに即怒られて、背筋を伸ばしゆっくり歩きながらここで覚えた事を思い出す。


〜〜〜


ひとつ、開拓団の結成は大戦士の特権で、開拓した場所を所領として認められる事。


ふたつ、再利用しやすい前文明の基地か、都市の遺跡を開拓地の礎として利用する事。


みっつ、人を集めるために、おいしいダンジョンを見つける事。



 美味しいダンジョン探しが、開拓の目的なのだ。

実は、全然ヤクザな商売から抜けれていなかったりする。



現在は大都市に人余りが起きていてチャンスだとか。


開拓地の選定は大都市から遠いほど、推奨され大都市から強い援護を受けられる。


開拓担当講師が、今は東部が熱いと熱弁していた。


 乗り気になったマリィはちょっと東寄りに開拓しようなんて考えていた。


すぐに、影響を受けてしまう子なので…


ちょっと援護をもらって、ステップアップ!開拓しようと考えていた。


教育したマリアは泣いていい。


開拓地の未来はマリィの優秀なクラスメイトに託された。


うまいこと修正してくれるはずだ。


 マリィのクラスメイトにはエキスパートが揃っている。

クラスメイト以外にもマリアは知識が豊富だ。

エレノアは商人としてサポートしてくれる。

総合商会も商機に全力投資することだろう。


開拓への道は遠いが、頼れる仲間を揃えることに成功したのだ。



[確認]ニクス型魔導鎧_鉄製_機構で行動補助_アームキャノン 誘導弾


[確認]ベヒモス型魔導鎧_鉄製_機構で行動補助_アームキャノン 前面シールド


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