閑話 衛兵隊の攻撃

 一人と一個が巡り合う少し前。


 朝の薄青い空と白い雲の下、

足跡でボコボコな街道に苦戦しつつアレスの衛兵隊の新兵と教育係は荷車に槍を満載して前衛部隊の所に向かっていた。


「この街道、整備したほうがいいんじゃ…」


と、新兵が言うと教育係が怒鳴る。


「古強者の加護を感じないのか!」


新兵は、アルテミスの対帝国戦争で活躍してから、こちらに来たので、こちらの風習に疎かった。


加護は石碑や石像に宿るもので、足跡には宿るか?と思っていた。


 口にはしないが。


「はい!感じます!先輩殿!」


目的の場所に着く、武器の集積場所兼スキル攻撃陣地だ。

戦争の時もよく見たが複雑な模様の描かれた恐らくは合金製の掩体がアルテミスより分厚い。

 頼もしさに新兵は流石はアレスの攻撃陣地だと思う。


「「「君に栄え有る戦いを!」」」


掩体に四方を囲まれた、深緑の青々とした草地では少女を囲んた男達が、口々に聖句を送っていた。

戦いの前の壮行会だ。

少女がたどたどしく返す。


「センチたちに栄え有る。戦いを!」


 噛んだのを新兵は吹き出し、教育係に叩かれる。

配慮されている。本当に若い娘らしい。

後ろにいる僧侶が苦い顔をしていた。

そんな様子を見て、皆で和気あいあいとする。



定刻だ。


異常な圧力が発生している。


ここにいる戦士は全員が大長以上。


権力ばかりが目に付くが100人力の戦士の集まりだ。


衛兵隊長が別格だが、今の少女は追随するか?

新兵と同じく大長級のはずなのだが。


そんな存在達が闘志を全開にする。

水気を帯びて青々とした草地が潰れ始める。

と、異常事態が発生する。


街道に、草地に古今の鎧を着こなし槍を持った幻影の男女達が現れた。


戦士の闘志に反応した、アレスの決戦儀式魔法陣[祖霊召喚]の発動だ。


少女の相棒である金髪碧眼の僧侶がそれらをさらに奇跡で補助する。


[獅子心] 「奮い立って!」(いきなさい!)


戦士たちの闘志が全力を超える。




衛兵と幻影達が攻撃の合図を待っていた。


ドラゴンが来る。


 衛兵隊長が号令する。


ドラゴンが来る。


「槍!構え!」


ドラゴンが来る!


一斉で無いと圧力が分散してしまうため。

号令に合わせてスキル攻撃する。


ドラゴンが来た!


「槍よ輝け」


[ジャベリンレイン]「アタック!」


衛兵長が叫び、槍を輝かせて投げる。


衛兵たちも同時に投げつける。


「「「槍よ輝け」」」


[[[ジャベリンレイン]]]


幻影達も同じ様に


「「「槍よ輝け」」」


[[[ジャベリンレイン]]]


ドラゴンに向かい青空を割って光槍が向かう。


人と、ドラゴンその中間で光槍が分裂する。


轟音響く横殴りの槍の雨だ。


凄まじい威力にドラゴンの向こう側で古い基地廃墟群がバリバリと崩壊していく。


その規模の攻撃を三回繰り返しドラゴン以外すっかり更地にすると衛兵隊長が叫ぶ


「少女よ!次の攻撃と共に行け!」


新兵は息も絶え絶えだが今までの人生で最高の一撃を繰り出していた。


「頑張れよ!君に栄え有る戦いを!」


少女の背に新兵が聖句を送る。


ジャベリンレインで掘り返される大地に少女の背が小さくなって行く。


ドラゴンが初めてまともに反応した。


空をひかり舞い踊る少女を見ている。


最期に少女の剣がまばゆくひかるとその巨体は炎となり掻き消えた。


我々の勝利だ!


「勝利の栄えは我らのものだ!」


皆で喜ぶ。


少女が遠くの丘にゆっくりと降りていく。


力尽きたのだろうか、みんなで迎えに行く。


幻影達は手を振ったり、親指を立てながら消えていった。


英雄の凱旋だ!



[確認]決戦儀式魔法陣_オリハルコン製_それは壊れない_[祖霊召喚]

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