龍の話 ドラゴンがあらわれた日常

 〜〜〜ドラゴン


 夢を見ている。

 飛行夢を見ている。

 何度この夢を見たのだろう。

 ぼんやり、そんな事を考える。


 思い返されるのは僕の死因、死因、死因……。

 これで35回目だ。


 最初は体が勝手に動き、夏鳥のつばめにつられ、ふらふらと街に向かうところを両断された。

 次はコツを掴んだが、どうしても身体が街の方へ向かってしまう。

 また街に近づいて、前とは違って必死に人々が街の遠くに、遠くにと僕を誘導していた。


 街の近くで倒されると良くないのか。

 身体の自由は利かないが、迷惑になりたくない。

 なら、僕なりにこの不自由に抗ってみせよう。



 ひかりにつつまれる。



 その次からは、できる限りすぐに見つかって、早く、遠くで倒してもらうようにしていた。


 倒されるたびに僕が希薄になっていく。

 まるで心に残った思い出の色を洗い落とされているみたいだ。


 もう夏なのか。

 雨を受けて山々の緑が色濃くなっている。



 何度も何度も繰り返して、同じ場所は迷惑だろうと様々なところで倒されて、わかったことがある。


 僕は黒いドラゴンと呼ばれていること。


 僕は本能で、高く飛ぶ生き物や人間の街に釣られてしまうこと。


 僕は普通のドラゴンと違うらしいこと。


 そして、僕は何度も同じ場所から出ていること!


 急転回して攻撃を打ち込む、僕の心にこびり付いて残った色は壊す思い出と本能ばかりだ……。


 ひかりが貫く!


[龍の怒り]火力倍加[勇者の一撃]魂砕き[ドラゴンブレス]範囲攻撃 が地下施設を破壊!


 何か偉大な物を打ち砕いた感覚がある。


 僕の攻撃で不自然にくり抜かれた山を後にする。


 僕も我慢の限界だから、終わらせてもらおう。


 最後は、最初に来たところに向かう。


 ……これが最期になる事を祈る。


 #####


 人々が投げる槍の雨に驚いた!

 ここはやはり他の街とは違う。


 どの街も必死で時間稼ぎして強い人を呼び、僕を倒したけれど

 ここは、たくさんの戦う人間が出てくるんだ。


 例えば、南の大きな街は巨大な防壁にこもり、出てきたのは巨大な機械?の騎士だった。


 ……いつも通り本能に抗いながら分裂する槍の雨に打たれる。


 しばらく待つが、前とは違って中々、光が飛んでこない。

 困った。介錯を頼むつもりで来たのに迷惑をかけてしまっている。


 すると、槍の雨が止まった。なにかあったのだろうか?


 本当に困った。


 足元から飛んでくる影が見える。


 僕はそれに気を取られて、見下ろした。


 僕と同じように青く光る眼と、僕の青く光る眼が合う。


[確認]マリィ_勇者?龍?人げん_友好_15s後 封神剣


 ぼくと、にている?


 ――少女は封神剣の発動動作なのか、空中で光り舞い踊っている。


 本能に操られてないのか、恥ずべきことに羨ましく思う。


 ――青く光る眼に雫が見える。


  泣いている……。 友好、この世界で初めて見た。


 ――苦悩する顔に雫が流れた。


  僕のことで泣いてくれるの?


 ――君にも僕と同じものが見えているのだろう。


 たくさん倒されたから、君の行動の予告に期待してしまう。


 もし次があれば、もう耐えられないと身勝手なことに折れてしまう。


 きっと僕と同じな君に、僕を背負わせてしまう。


 願わくば、君こそ僕を終わらせる者と望んで。


「とわにまどろむ、あなたをゆるす」


[封神剣] で勇者龍を封じた!


 彼女の剣がまばゆくひかり、夢が焼かれた。


 #####


 ~~~ドラゴン?



 焦げ臭い場所にいる。


 街の近く、小さな丘の上に墜落している。


 終わってない、と残念に思うと、体が動かない。


 体が動かないのに視界は自由に動くようで、彼女が近くに見える。


 随分と近いが、落ち込んでるみたいな彼女を励ますには都合がいい。


 コミュニケーションが取りたくて、目をパチパチ光らせる練習をしたんだ。


 今までは、ダメだったけど彼女にだけは伝わるだろう。


 何度も、目を青く光らせる。




 落ち込んでる彼女の灰色の目と、目が合った。


 灰色の目が青く輝く。




[確認]決戦儀式魔法陣_オリハルコン製_それは砕かれている_[勇者召喚]





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