第1章ー6話 闇に陥った鳥空

 今日も布団にくるまったまま一日が過ぎてしまった。

 そんな自分は嫌だけど、今はそうするしかない。今普通にしたら、もっと狂ってしまって、壱鳥たちを傷つけてしまうかもしれない。それだけは避けたかった。


 今日もまた布団にくるまったまま一日が過ぎてしまった。

 こんな生活していいのかって思ったよね。でももういいんだ。俺は飛べない。どうやっても。飛べない=カラスに負ける。つまり俺は本当に〇ぬことになる。だから、もう何もしなくていいんだ。こんな生活していい。


 今日もまたまた布団にくるまったまま一日が過ぎてしまった。

 なんかマジでどうでもよくなってきた。壱鳥は今頃何してるんだろうか。楽しく過ごしているのかな。わからないけど、飛べるようになったんだから、さぞ楽しいだろうな。俺なんかと一緒に過ごしてきたことを後悔してるだろうな。俺なんか、ただ邪魔なだけの鳥だから。


 今日もまたまたまた布団にくるまったまま一日が過ぎてしまった。

 もう三日も誰とも会ってない。壱鳥くらいでも心配してきてくれてよかったのに、誰も来ない。俺はもう見捨てられたんだろうな。壱鳥と鳥三郎さんは今、二匹楽しくやってるのかな。俺は楽しくないのに。あと数ヶ月、カラスの襲撃まで待てば、解放されるのに。早く時よ流れてくれ。もう何をするのも疲れたんだ。布団にもぐるのも飽きたんだ。早く、早く。


 今日もまたまたまたまた布団にくるまったまま一日が過ぎてしまった。

 今日もまたまたまたまたまた布団にくるまったまま一日が過ぎてしまった。

 今日もまたまたまたまたまたまた布団にくるまったまま一日が過ぎてしまった。

 このままずっと一日が過ぎていった。


 一ヶ月後、俺は精神を取り戻しつつあった。でもすぐ考えてしまうんだ。

 俺は飛べないってことをね。布団からは定期的に出ていたので、動けないわけではなかった。でもポストを覗くのは久しぶりだった。そこには一通の手紙があった。


 ***


 鳥空、元気にしてる?

 元気になんかできないよね。僕が飛べるようになったのに、自分だけできなくて、最終兵器を使っても、鳥に乗るだけっだたもんね。

 ごめんね。

 僕は鳥空がいなくてとても寂しいです。家に直接行くのは流石に良くないと思ったので手紙に書きました。迷惑だったらごめんね。

 僕には鳥空の気持ちなんて一ミリも理解できないと思う。だけど、たまには外に出たらどう? カラスに勝ちたいんじゃなかったの? 本当は飛びたいんじゃないの?

 僕もあの時のカラスを懲らしめてやりたいと思ってる。鳥空とにね。

 無理してとは言わない。自分の決めたとおりに生きてほしい。でも、僕はまた一緒にかけがえのない時間を過ごして、一緒に飛ぶ練習をしたいよ。

 迷惑かもしれないってわかってる。自分の気持ちを最優先にね。

 壱鳥より。


 ***


 俺はその手紙を読んだ。なぜかはわからない。涙が出てきたんだ。それも大量に。

 もうどうでもいいとか思ってたのに。カラスの襲撃にやられるまで待とうと思っていたのに。多分そこから一時間は泣いていたと思う。壱鳥は後悔なんかしてなかったんだ。俺と一緒に過ごしたかったんだ。

 俺はこの手紙を読んで、本当の自分の心に気づけた気がする。


 俺はやっぱり、ようになって、カラスに勝ち、壱鳥たちと過ごしたかったんだ。


 俺が飛べないなんてただの思い込みだったんだ。

 今考えれば、最終兵器も一回しか使ってないし、鳥が入ってこなかったらできてたかもしれないんだ。やっぱり飛びたいんだ俺は。


 でも一番は、壱鳥とんだ。


「久しぶりに練習しようかな」

 気づいたらつぶやいていた。

 今俺は歩みだした、特別な場所へと。


「行け! ……無理か。まあ、久しぶりだから当然か」

 俺は前よりポジティブになっていた。


「鳥空⁈」

「あっ! 壱鳥! 手紙読んだよ。ありがとう。心が回復した気がするよ」

「本当に? よかった。鳥空、おかえり」

「ただいま。やっぱ俺も、壱鳥と過ごしたかったんだよ」

「だよね。じゃあ、まず飛べるようになって、カラスに勝てるようになろっか」

「そうだね。飛ぶ練習頑張るよ」

 俺は飛ぶ練習を再開した。

 カラスの襲撃まであと七ヶ月。

 そこまでに俺は、飛べるようになってやる――。

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