第1章ー7話 頑張れ、鳥空!

「行け! ……駄目だ。まあ、頑張ればいつかできる!」

 プールも有効的に使って、練習に励んだ。いつかできるって信じてる。数日前の俺からは、全く想像できないだろうな。

「鳥空、頑張ってんな」

「そりゃあね、飛びたいからね。壱鳥はいいな、飛べて」

「頑張ったから飛べるようになったんだ。鳥空も頑張れば本当にできるようになるからな。応援してるよ」

「ありがとう、壱鳥」

 山に登る。これで成功してほしいとかはない。いつか頑張りが報われればいいんだ。(まあ、カラスの襲撃の前までに報われないとだめだけど。)

 飛び降りて滑空したけど、飛ぶことはできなかった。

「鳥空、頑張ってるな」

「ありがとうございます、鳥三郎さん」

「鳥空、最終兵器の砲台使うか?」

「はい! ぜひ」

 ついにリベンジする時が来た。今度は他の鳥に邪魔されないように、飛ぶことに集中しよう。

 砲台に体を突っ込み、発射できるような体勢になる。

 3……

 2……

 1……

 発射!

 俺の体は放物線を描き、一番上まで行き、滑空した。しかし、飛ぶことはできなかった。でもなぜか満足した。他の鳥に邪魔されず、前よりも形になってきている気がする。

「鳥空、砲台でやってそのくらいできるのなら、山で一気に成長できると思うよ」

「本当ですか? 鳥三郎さん」

「うん。ガチで頑張ればね」

「はい! 頑張ります! 期待していてください」

「わかった。期待してるよ。鳥空」


 それから約一ヶ月後。

「行けえ!!」

「頑張れ! 鳥空!」

「俺ならできる、できるんだああああああ!!!!!!」

 俺の中で記憶がフラッシュバックしていく。


 クレーンゲームで、大地が取ってくれたこと。

 掛が壱鳥も取って、一緒に孵化したとき、これから一生一緒に生きていくんだろうと悟ったこと。


 大地たちがご飯を持ってきてくれて食べたこと。

 カラスに奪われ、壱鳥が追いやってくれたこと。


 火事が発生し、追い詰められ、鳥王国に転生したこと。


 鳥三郎さんと出会い、カラスの襲撃について教えてもらったこと。

 その後、襲撃があり、病院で鳥三郎さんをお見舞いしたこと。


 飛ぶ練習を始めたこと。くちばしから刺さり笑いあったこと。

 壱鳥が飛べるようになったこと。


 俺はできないと思い込み、引きこもってしまったこと。

 手紙を受け取り、泣いて崩れたこと。


 カラスに勝ってやると決めて、練習を再開したこと。


 全てをフラッシュバックした俺の脳内。

 飛びたいと思う気持ちで、飛べるようになるんだ!!!


「行けええええぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!!」


 その時の感覚は一生忘れられない。浮遊感が漂い、俺がついに…


 ことを示してくれた。


「やったああああ!! 飛べたぞ!!!」

「おめでとう、鳥空!!」

「よし、この調子でジャンプから飛ぶぞ」

「いや流石にそれは……」

「で、出来たああああああ!!!!!」

「えっ⁈」


 俺は完全にコツをつかみ飛べるようになった。

 やっと、念願の……


 俺は泣いていた。


 カラスの襲撃まであと半年となった。

 絶対勝ってやる。そういう気持ちがより一層強くなった――――。

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