4、ローゼの言いつけ

 来日も、来日も勉強・授業。ついこの間までこんなこともなかったのに。

 あれは、2ヶ月くらい前だろうか。

 こうなった原因の出来事を思いだし、ザフィーアは顔をしかめた。

  ◇◆◇

 ー今から2ヶ月ほど前ー

 

 母の様子がおかしい。

 

 最近、食事を共にしていて、母が変になった。おそらくヴァイスもそう感じているだろう。

 

 母から異常な空気が漂ってきてるのだ。

 

 なんかこう、執念というか、目が異常だ。鋭く光っているが、ここにある何かを見つめているわけではない気がする。怖すぎる。

 ふとしたときに眼光がないが、そのときの母をみたときは悲鳴を上げずにはいられないほどだ。

 目は虚ろで、焦点が合ってなく、光がない。そしてぶつぶつといつも何かを呟いている。このせいで怖さが倍増している。

 良く聞き取れない程小さいため、正確に聞き取った者はいないらしい。ただ一人を除いて。


 実は、ザフィーアはとんでもなく地獄耳なのである。

 

 “ガイアルディア王子の許に”とか、“お父様、貴方の本望を遂げてみます”、そしていつもの口癖であり、うんざりするほど聞かされ、母に関する記憶のほとんどを占めている“いつかのために全てを知りなさい。”などだった気がする。

 “いつかのために全てを知りなさい。”は実は私たち双子の最初の記憶なのだ。嘆かわしい。


 話を戻し、ある日、食事中にいきなりガタンと音をたてて母が立ち上がった。

 制止する者を一睨みし、大きな声で“大事なことが決まりました。ヴァイスとザフィーアはインポザント王女並の教養を付けること。”と言ったきり倒れた。

 意外なことに、父は拳を握りしめて目を瞑っている。まるでこの事を知っていたかのような表情だった。

  ◇◆◇


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る