3、地図

 男は、それは大きな地図を持ってきていた。


 不思議に思い、見ていると「近くで見てもいい」と言われたので私・ヴァイスとザフィーアは大きな地図を覗き込んだ。

 

 ザフィーアは興味が有るらしく、鼻がくっつきそうなまでに顔を近づけている。そう思ったら目をきらりと輝かせ、こっちを見て、こう興奮した様子で


 「ヴァイス‼️これに載ってるの、この島だよ‼️」


 と言った。驚いて私も確認する。


 「これ、ここじゃない?」


 と言うと


 「えぇぇ‼️今探してたのに・・・‼️」


 とむくれたようで、唇を尖らせている。ザフィーアの癖だ。

 

 ザフィーアは敏く、人の思っていることがよく分かる。故に、知らなくていいことまで知ってしまう。可哀相だ。

 

 私が物事を隠すことも知っているだろう。

 

 貼り付けた笑みを見せると大概の人は笑っていると取るようだが、ザフィーアは違う。必ず嫌そうな顔をして、睨んでくるのだ。ただ、素の笑顔だとザフィーアは嬉しそうに笑う。


 ザフィーアが突然「あっ」と洩らし、私の服の袖をクイッと引っ張った。ついでにこれも癖だ。


 「どうした?」


 と尋ねると


 「これ、華島?」

 

 と遠くの方の寿島より小さい島を指した。


 顔を近づけてみると知らない地名やらが書いてある。


 「本当だ・・・」


 ザフィーアは少し得意そうだ。悔しい。


 「お見事です‼️その通り、これは華島です」


 その次に紡がれた言葉は思いもよらないことだった。


 「この華島はあなた達のお父様の故郷です」


 『えっ』


 もちろん驚いた。だって、お母様が嫁に来たと思っていたから。


 (入婿だったなんて・・・)


 思いは共通しているようだ。ザフィーアの目が溢れんばかりに見開かれている。



 そんな驚きの事実を交えながら授業は終わった。

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