第28話 新暁


『収集、焼却』

 あれから上級ダンジョンに二度ほど入りもうすぐ百層に到達するところだ。


 梅田クランからはお土産が大量に送られて来たりしたが仲がいいとは言えない。柳なら仲良くなれる気がするが。

 今回は俺一人で潜っている。何故かと言う とヒナやミアが五十層辺りからキツくなって来たと言ったので、レベルあげをしてもらっている。最初は反対されたが、もう一度五十層から付き合うと言うことで納得してもらった。


 にしても、レベルが上がりすぎたのか歯応えが全然無いな。百層まで行ってもこれなら楽勝かもな。

 百層に辿り着くとアダマンタイトゴーレムというモンスターだった。

「これじゃ刀がダメになっちまうな、『アダマンタイトゴーレム収集、粉砕』」

“ガリガリ”と飲み込まれていくアダマンタイトゴーレムは粉砕によって粉微塵になり煙になって消えた。ドロップアイテムはアダマンタイトのインゴットが三つに魔石だった。

 宝箱の中身を確かめるとアダマンタイトのインゴット×三だ。計六個のアダマンタイトのインゴットなんて何に使うんだよ!


 オーブに触って一層に戻る。

時計を見てまだヒナ達はレベル上げしてる頃だろうと時間を潰す。ギルドビルに行きドロップ品の換金だけ行い、ギルドビルを出ようとしたところでいきなり腕を掴まれ反射的に払い除けると、そこには男が三人立っていた。

「何の用だ?」

「いや、ホープクランの瀬古さんでしょ?」

「そうだがなんだ?」

「たまたま見つけたんで挨拶ですよ。クラン暁の玉名っていいます」

 暁は解散したはずじゃ?

「暁は解散寸前で私が立て直しましてね。いいクランになったんですよ」

「それにしちゃ手荒だと思うが?」

 急に手首を掴むなんて、

「それはすいません、すぐ出てしまうんですよこの手は」

「そうか、これ以上話すことはないと思うが?」

「そうですか?サイ君には色々と聞いたのですが、人のクランを解散まで追い込んどいてそれはないんじゃないですか?」

「あ?別に?」

「あぁ、なんて非道な人なんだ。人は一人では生きていけません。だからクランがあるのです。そしてそのクランを潰そうとして」

「何が言いたい?」

「いや、ホープクランならアイテムボックスくらいで手を打って差し上げますよ?」

「くだらないな、今からでも暁を解散させるんだな」

 男は笑うと、

「今の暁を昔の暁のように思ったら大怪我しますよ?」

「今も昔も変わらんだろ?人からものを取ろうとしてんだから?」

「そうですか、交渉決裂ですね」

「あぁ、そうだな。今からやり合うか?」

「いえ、後ほど」

「あぁ、一つだけ忠告だ。俺の周りのものに手を出すと殺すぞ」

「おぉ、怖い。肝に銘じておきますよ」

 そう言うと男達は去っていった。


「あいつら何企んでんだ?」


 ヒナ達と合流して車の中でその話をする。

「暁の奴らまだなにかするつもりかしら」

「さぁ?まぁ注意しておいてくれ」

「分かったわ」

 事務所に帰るとマスターにも注意しておく。


「はあぁ!」

 ふう、これでまた百層終わりか。

 ドロップ品と宝箱の中身を回収してオーブに触って帰還する。

「暁でーす。お兄さん百層から降りて来たの?凄いねぇー」

「なんだお前?」

「そんなこと言っていいんですかー?」

「なんだ?」

「ケントとダイスケ」

「あ?」

「二人とも可愛いですね、それではクラン暁に来てもらえますか?」

「忠告を破ったな」

「まさか?二人ともピンピンしてますよ?」

「何処だ?」

「今から行く所です」

 俺は車に乗せられて小一時間ほど連れ回される。

「ここですよ」

 ずらっと並んだ暁と思われる面々。

「で?ケントとダイスケは?」

「あちらにいます」

 一キロくらいさきだろうか?視認できるのは豆粒程度しか無い。

『ケント、ダイスケ収集』

「あ、」

「わっ!」

 二人とも無事か?

「大丈夫です!」

「僕も!」

「そうか。じゃあ後ろにいろよ」

 とりあえず殴って行くか。

 武装した集団を次々とぶん殴っていく。

「いいからそいつを殺せー!」

「ウオオオオォォォォ!!!」

 鈍いので全員にパンチを繰り出す。

『暁収集』

 めんどくさくなったのでここに居る暁を収集し俺の目の前に集める。そしてブン殴る。

「「「うわあああ」」」

 集団で吹き飛ぶがそいつが見えたので逃さない。

「お前だな」

「お、お前レベル幾つだよ」

「さあな、では」

 四肢を殴り折って行く。

「ウグゥゥゥ」

 他には見たことない奴らばかりだが言っておく。

「解散なお前ら」

「イテェェ」

「誰だよ!」

「バケモンじゃねぇか」


 んじゃ帰ろうか。

「ケントもダイスケも無事ならそれでいい」

「「はい!!」」

 外でタクシーを捕まえ事務所に戻る。

「お前達無事だったか!」

「「はい」」

 マスターが飛んでくると奥にいるやつの顔が青くなる。

「おい。お前が今回のことを企んだのか?」

「いえ、私はこれで」

「待て。お前見たことあるな」

「み、見間違えじゃないですか?」

 明らかに挙動がおかしい。

「サイってやつだったかな」

「うわあぁあぁぁぁ!」

「逃げるなよ」

「た、助けてください!」

「あ?」

 取り押さえると、

「そのひとにアイテムボックスのカードを」

 マスターがいうので、

『アイテムボックスカード収集』

 一枚のカードが目の前に現れたのでそれをマスターに渡す。

「も、もう持ってません!これ以上は」

「あぁ、あとでわかってるな」

 と言って逃してやる。

「ひぃ」

 こう言うやつは殴っても効かないから脅しておく。いつ来るか隠れながら過ごせ。

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