第27話 梅田クラン


 事務所に帰ると大型バスが停まっていた。

「あら、やっと帰ってきたん?まっとったよ」

 そう言う女の人は暗い茶髪、首に金魚のタトゥー?

「うちは大阪で梅田クラン言うのやっとる狭間いいます。できれば仲良くしたってな」

「あ、ホープクランのレクトです」

「私がヒナで、こっちがミアにアズサ」

 こちらも自己紹介が終わった。

「で?梅田クランさんがなんのようで?」

「そりゃ、きまっとります。アイテムボックスの話し合いに来させてもらったんです」

「あぁ、なら中で!?」

「あぁ、クランマスターが中々しぶとぉてな?ちょっとかましただけで」

『マスター収集』ポーションを振りかける。


「あら?マスターさんは触れん方が良かったみたいやな」

「こらゴミ!さっさと大阪帰るなら抑えてやる」

「帰らへんかったら」

「殺すぞ」

「やれるもんなら“キンッ”なっ!?」

「姉さん、ここは引きましょう」

「あ、あぁ、引きましょうか」

 大型バスは走って行った。


 

   ♦︎



 あれはなんやったんや?見えへんかった。

「柳は見えたんか?」

「微かにですが。間に合って良かったです」

「あれが一番やな、マスターしばいたのは失敗やったか」

「だからあれ程いったのに」

「のらりくらりとわけわからんことを話すからやないか!それもレクト君が……レクトってあいつのことか」

「そう見たいですね」

「あぁー!あかん!やってもうた!」



    ♦︎



「マスター無事ですか?」

「あぁ。ありがとね」

「あいつら今度あったらきっちり落とし前つけさせる!」

「俺が殺す」

「いや殺すのはまずいよ、穏便にね」

「まず穏便じゃなかったのはあいつらでしょう?」

 なんの関係も無い者をいたぶってなんになる。

「必ずまた来る」

「その時は迎えうちましょう」

「当たり前!」

 ヒナもミアもマスターをやられて憤っている。

「もう。もうちょっと穏便に済ませましょうよ」

「アズサは黙ってなさい!」

「これは親であるマスターをやられたのよ?舐められたままで済むと思ってるの?」

「ですが」

「アズサは優しいな。でも俺も同感だ」

「師匠……」



 次の日は朝から大型バスではなくタクシーで来た梅田クランの狭間は土下座だった。

「ほんますんませんでした!クランマスターをしばいたのは私です」

「すいませんでした。止められなくて申し訳ない」

 二人で来て二人とも土下座から始まる。

「とりあえずは座ってもらおうよ」

「マスターさん!ほんま申し訳ありませんでした!」

「いいですから、とりあえず座りましょう」

 俺らの目を見ているのでソファーに目をやる。

 おずおずと座りまた謝る。

「レクトさんいいはるのは?」

「俺だ」

「アイテムボックスのカードは」

「俺が持ってる」

「ですよねー」

 俺たちは腕組みしながらみている。

「申し訳ありません、話をさせてもらえないでしょうか?」

「あんたは?」

「はい!補佐をしている柳ともうします」

「で?」

「マスターさん同士で話し合いをしていたのですが、レクトさんの話がないととのことで何故マスターにその権限がないんだと、うちのマスターが怒ってしまったのがことの始まりでして」

「マスターが全権限を握らないといけないのか?」

「いえ。けっしてそのようなことはありません。いまはことの顛末を話しただけです」

 こいつはキチンと筋立てて話をしているのだな。

「今回こちらに来たのはアイテムボックスのカードをお譲りして頂きたくまいりました」

「よく言えるな、柳さんは自分のマスターがされたらどう思う」

「殺してくれようと思いますね」

「正直だな」

「ここで嘘をついてもしょうがないので」

「なら答えはわかるだろ?ノーだ」

「そこをどうにか曲げてくれへんやろか?」

 狭間が間に入ってくる。

「話だけでも聞いてもらえないでしょうか?私の首を差し出しますので」

『ナイフ収集』

「あ」

「こんなとこで死なれちゃ迷惑なんだよ」

「柳!あんたなんてことしようとしてるの!」

「いや、流石に謝って許してもらうなんて虫がよすぎると思いまして」


 ほんと厄介だな。こう言うやつは。

「そこまでして欲しいなんて思てへんから!柳が死ぬんが一番だめや」

「そりゃ同感だ。で?いくらで買い取りたいんだ?」

「は、はい!できれば三億くらいで」

「分かった三億な!持ってけ」

 カードを一枚渡す。

「ありがとうございます」

 受け取った柳は涙を流している。

「あ、あんたいいやっちゃなぁ」

「柳に感謝するんだな」

 あんただけだったら蹴散らしていただろうさ。

「レクト君、ありがとうね」

「いいえ、マスター」

「マスターもほんまにごめんなさい」

「いいですよもう」

 マスターはニコニコしている。

「柳、ありがとな、今度からちゃんと言うこと聞くさかい」

「分かってくれたのならいいです」

 狭間と柳は三億置いてもう一度謝ってから帰って行った。


「マスターも自分の命が危ない時には売っていいですから」

「それはレクト君達がとってきたものだからね、僕じゃ決められないよ」

「本当にもう」

 事務所のポーションだけは切らさないようにしとかなきゃな。


 

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