第25話 ギルドビル崩壊


 屍ダンジョンも無くなってしまった俺は、今度は中級ダンジョンに行こうと思ってギルドビル近くに来ていた。

「他の上級に行かないの?」

「行きたいんだけどまだ続いてるだろ?」

「あれはもうしょうがないよ」

 毎日のようにくるアイテムボックスくれくれおじさん。動画に載せてもびくともしなかった。

「あげないっていってんだからくんなよって感じよね?」

 ヒナが言う。

「だよな、そのうちなんかしそうで怖いからさ」

「わかる」

 ミアも恐怖を感じてるらしい。

「あのおじさんちょっと変だもん」

「口の端の泡がキモい」

 アズサはそんなとこ見てるのか。


 “ゴゴゴゴゴゴゴ”

 ダンジョン変動だ。この頃多いな。

「俺は中級ダンジョンにいく!」

「私達は被害がないか見て来る」

 中級ダンジョンに走って行く、すぐに中に入ると崩れていたので飛び降りる。

「大丈夫か?」

「は、はい!」

「よし、ここで踏ん張っててくれよ」

 上級ダンジョンになっているだろうから上から出るのはかえって難しい。

 次の階層は、多分ボス部屋だな。

 次の階層まで行くぞ、そこで待機だ。

「分かりました」 

 ボスのミノタウロスを倒して、転移陣を使うと使うことができた。

「これで上に戻ってくれ」 

「了解です」

 冒険者達はちゃんと言うことを聞いて外に出ていく。ここじゃないのかと思っていたら緊急ダンジョンアラートが鳴り、ギルドビルの方を指している。

 外に出てギルドビルに向かうとヒナ達が戦っている。

「どうなってる!」

 戦闘に参加しスケルトンを蹴散らすと、

「わからないわ?急にギルドビルから湧いて来たの」

『スケルトン核収集、焼却!』

 一帯のスケルトンはいなくなった。

 中に入って行くとギルドビルがダンジョン化している。

「なんだこれは?」

「ギルドビルが」

「危ない!」

 ミノタウロスの斧が飛んできたのでヒナを連れて飛んだ。

「ギルドビルの外にいてくれ」

「わかったわ」


 俺はギルドビル内のモンスターを一掃しながら上へと進む。逃げ遅れた人にはポーションを使いながら、

「まだ逃げ遅れた人はいないか?」

「まだ上の方に沢山いると思います」

「チッ!くそったれ」

 上に進みながらドンドン強くなって行く敵を蹴散らして行く。

 ポーションが尽きそうだ。

 ギルドビルは地上三十階建てのびるだったはず。

 だが、ダンジョン化していてどれだけ上に伸びてるのかわからないな。

 休憩もせずに上に登って行くと途中で戦ってる人と合流した。

「どうなってる?」

「みりゃわかんだろ!ダンジョン化だ!」

「わかるけどここが最前線か?」

「そうだ、ここから上はまだだ」

「なら俺が行く!」

「おい!チッ!援護してやれ」

「おう」

 俺は援護を受けながら登って行く。


「おい誰かいないか?」

 声はしないなまた登る声をかけるを繰り返して行く。

 まだ上につかないのか?

 と、唐突に上が拓けて屋上に出た。

「お、誰が登って来たのか」

「おい、おまえが今回のダンジョンに関係してるのか?」

「いや、まぁそうだけど、話をしようぜ」

「はぁ、なんだよ?」

「まぁ、俺たちはダンジョンから生まれてきてるんだけど、飽きたんだよ」

「飽きた?ダンジョンにか?」

「そう。能力者が来てくれて倒されてくれればいいけど、俺たちが倒されたらリセットだぜ?」

 この黒いスーツの羽の生えた男からしてみればそうだろうな。

「でもこっちはリセットが効かないんだよ」

「そうなんだよね。それでトントンだと思ったけど、あまりにも俺たちだけ不憫じゃないか?待ってるだけだからさ」

「それで外に出て来たのか?」

「そう言うこと、俺らも倒されたら終わりだからこれでトントン」

 こいつもあの侍と一緒かもしれないな。

「なら戦うとしようか?」

「嫌だよ!なんで、やっと外に出て来れたのにそんなことすんだよ?俺は遊びたいの」

「何して遊ぶんだよ」

「え。決まってるでしょ?人間を殺して遊ぶんだ」

 俺の後ろに急に現れると蹴りを入れて来る、ガードごとぶっ飛ばされるがなんとか外に飛び出さずに済んだ。

「いやぁ。ここまで登って来るからどんなもんかと思ったら弱そうでガッカリだ」

 頬をかきながらそう告げる。

「ならこれでどうだ?」

 一段階ギアを上げると吹っ飛ぶ男。

「ゲホッ!ゴホッ!ふぅー。結構やるみたい。前言撤回」

「早いな。もうちょっとなめててくれてよかったんだが?」

「そんな馬鹿な。これでも、強さの把握には自信がありますよっと」

 黒い炎を出して来るが剣で斬り裂く。と同時に蹴りがしたから迫って来るのをバク転で躱しながら蹴りを放つ。

「ガッ」

「ふぅ」

「で?どうやって殺すつもりだ?」

「チッ!ちょっと分が悪いね」

「ちょっとの差だといいけどな」

 俺は『千手』を使い刺突を繰り返す。

「アガガガガガガガ」

「どうだ?痛いだろ?」

「いつつ。テメェは殺してやる」

「お前にできればね」

「うおおおおおおおおおおお」

 人間の形から異形の者になると。こちらに突進してくる。

 精密鑑定でこいつの名前はわかってる。

「よっと!オラァ」

 剣で斬り裂く。


『ヴァンパイア・テッド収集、焼却』


「ウゴオオオォォ」

 ヴァンパイアは燃えて灰になって消えていった。ドロップ品は宵闇のマントと魔鉱石というものだった。

「ここでも宝箱出るんだな」

 開けるとカードがニ枚、闇魔法と影魔法。


 そして真っ赤になったオーブが出て来たので、オーブに触ると『ダンジョン消失します』といって割れてしまった。


 ギルドビルは崩壊していないが、だいぶ変形したな。降りて行くとさっきのおっさんたちが登って来た。

「ダンジョンは?」

「消失しましたよ」

「そうか、ではな」

「うっす」


 下まで降りるとヒナ、ミア、アズサがヘトヘトになっていた。

「大丈夫か?」

「そっちこそ」

「俺は大丈夫だぞ?」

「そう。なら良かった」

「師匠心配しましたよー」

「ヨシヨシ。頑張ったみたいだな」

 ヒナとミアはブー垂れている。


「クレープでも食べに行くか?」

「「「行く!」」」

「レクトの奢りね」

「何食べよう」

「甘いものー」

 はぁ、現金な奴らだな。

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