第24話 変動と名無し


 春が来るまでに二度オークションにアイテムボックスを出した。全てが海外に買われてしまった。

「だからオークションに出すのはやめて国に寄進して下さい!」

「金も出さずに寄進てなんだよ!斬るぞ?」

「金はもちろん出しましょう。三千万」

「億はだしてもらわねーと、対等な取引じゃないだろ?」

「な、この守銭奴め!」

「どっちがだよ?」

「もう斬りましょう」

 アズサが刀を取り出すと、

「今日のところはこれくらいにしておきます!が、明日も来ますからね」

「いまのを、編集して動画アップしようかな」

「な、撮ってたのですか?最後のはカットしてください」

「えー。カッコよかったよ?」

「だめです!」

 あれが本当に国のやることかな?

 まぁいいや、こっちはダンジョンに潜りたいのにな。

「レクト君も自分の好きなことしていいんですよ?私は大丈夫ですから」

 マスターが言う。

「大丈夫ですよ。これからダンジョンは行きますから」

 そう今からだって別に間に合うから。

 屍ダンジョン、もう何回潜ったか。だが近くのダンジョンはここくらいしかない。

「さぁ、今日もさっさと終わらせて帰るか」

 いつものようにダンジョンに入るといつもと雰囲気が違う?

“ゴゴゴゴゴゴゴ”

「なっ!ダンジョン変動か!」

 ここ屍ダンジョンは上級だぞ?それが変動するってなると上級以上?

 俺は何層落ちた?

 変動が収まるとスケルトンナイトが襲ってくる。

『スケルトンナイトの核収集、焼却』

“ボワ”っと火がついて焼却されていく核がスケルトンナイトを煙に戻す。

 ドロップ品を収集して収納していく。


 次の層に行くと侍の格好をしたスケルトンがいた。

 さて、お手並み拝見!

「はぁ!」

 刀と刀がぶつかり合う、押し負けることなく魔刀雪中に斬られていくスケルトン。

 ケムリになって消えて行くと巻物があった。雪斬りか、巻物を広げて習得する。

 あとは魔石。宝箱が出たことから十層か二十層辺りだろ。宝箱にはカードが入っていて刀術のカードか、あまりないからありがたいな。

 そのまま下に降りて行く。

 収集と相性のいいダンジョンだけあってスルスルと下に降りて行くが先が見えない。もう百層は進んだはずだ。


 つぎであれから百二十層目、

 そこには侍がいた。

「あー、話できるか?」

「はて、拙者に話でござるか?」

「あぁ、ここが何処かわかるか?」

「ダンジョンでござろう」

「それはわかるのだな。で?」

「某がダンジョンボスと言うのもわかっておる」

「そうか、やはり戦わなくてはいけないのか?」

「あははは、そう言う御仁に会ったことはないでござったが面白い」

「そうか?やる気満々に見えるが?」

「強いでござるな、さて、わしの技が何処まで通用するかのぉ」

「名前は?」

「名無しでござる」

「そうか、じゃあ、やるか」

「いざ」

 間合いを図る事もなく、滑るように走ってきては斬る。

「残念」

 それは避けて『雪斬り』を使ってみる。

 柔らかくしなやかな軌道で相手を斬るが避けられる。

「驚いた。それを使いこなすとは」

「俺も初めて使ったよ」

 あのスケルトンも相当な手練だったのかな?

 後ろに回り込む、刀で返される、横に一閃、同時に一閃で相打ち。

「ほう。なかなか」

「そちらも凄いよ」

「交わす言葉も少なくなりましたな」

「次で最後かな?」

「では」

 素早い斬りに合わせて全てを弾いていく。突きの応酬で互いに傷がつく。

「わしの負けじゃな」

「そうだな」

 核の壊された名無しはケムリになって消えて行くと刀を残した。

 『無刀名無』宝箱が出て来て巻物が入っていた。『千手』巻物を読んで習得する。

 奥にオーブがあるが赤く光っているので触ってみると『このダンジョンは無くなります。出ますか?』もちろんYESだ。


 屍ダンジョンが無くなった。

 外に出ると鳥居が崩れていた。

「レクト!」

「無事だったのね!」

「よかった、師匠」

「あぁ。このダンジョンはなくなったけどな」

「やっぱり変動があって何か変わってた?」

「あぁ、変な奴がいたよ」

「えー。なにそれ!ちゃんと教えてよ」

 ヒナが言うが、名無しの侍のことは言わないでおこうと思う。


「武士の情けかな?」

「なにそれ?」

「あ、新しい刀ですか?」

「あぁ、託されたよ」

「託された?」

 これくらいは言っていいだろ?

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