第23話 侍ダンジョン


 寒くて布団から出たくないのはいつものことだが、この部屋は暖房が効いているのでそこまで苦ではない。

 眠気まなこで顔を洗って、昨日コンビニで買ったサンドイッチを食べる。

 テレビをつけるとまだアイテムボックスがどこで発見されたとかやっているな。

 もう一度眠りにつきそうになりながらも着替えて外に出ると寒さに身が裂かれそうになる。足早に事務所に入ると暖かい。

「おはようございます」

「はいおはよう」

 朝早くから書類仕事をしている斎藤さん。

 ケントとダイスケはもう学校に行っている。

 二人分コーヒーを淹れると斎藤さんに渡して自分は事務所のソファーに触りスマホをいじり今日のダンジョン情報を探す。


「おはよ!」次にヒナが起きてきた。

「おはよう」そのすぐ後にミアが起きてくる。

 最後がアズサだ。「…おはようございます」

 まぁ十八の頃なんていつまでも寝ていたいから起きてくるだけマシか。

 

「今日はダンジョン行くか?」

「「「行く」」」

「んじゃどこにしようかなぁ」

「あ、あの、あたし行きたいとこが」

「んじゃそこにしよう」

 車に乗り込むと朝食べてないと言うのでバーガーショップで持ち帰りで、朝飯を取ると、高速を使って海老名サービスエリアへ。

「ここにあるのか」

「はい!こっちです」

 どうやら調べておいたらしい。

「ここです。行きましょう」

 入ってみるとやたらと和風なダンジョンだな。

 『ゴールドスライム収集』カードはもちろん収集する。

 二層から忍者や虚無僧など敵も和風だ。

アズサに任せて俺たちは適当に倒している。

「師匠できればレアモンスターも倒したいんですが」

「わかった。忍者収集」

 わんさか出てくる忍者の中に赤いくのいちがいた。キチンと倒しておくとクナイがドロップした。

「クナイじゃないみたいだな」

「そうなんです。師匠みたいに巻物が欲しいんです」

「ならボスが落とすと思うぞ」

「えーそうなんですか!」

「俺のもボスドロップか宝箱だったし」

 でもレアモンスターは見たいな。

「まぁ、出るか分からないしフルで行こうか?」

「はい!」

「「はーい」」

 ここは中級ダンジョンの侍ダンジョンらしい。

 十層で侍が出た、アズサに任せるとすぐに倒してしまい。巻物を落とす。

「やった!」

 巻物は一閃だった。宝箱には刀も入っており小太刀だった。

 それからも追尾手裏剣などのレアモンスターからのドロップにボスからは巻物が手に入った。アズサは喜んでいたが、俺も欲しい。

 五十層で、ボスを倒すと免許皆伝の巻物が出た。桜花乱舞と言う技らしい。宝箱からは業物、桜花が入っておりアズサは大層喜んだ。

 俺も上級で侍ダンジョンを探すか。

 みんなは海老名サービスエリアで買い物をしていると言うので、一人で入って速攻で倒して帰ってくると、

「師匠と同じですね」

 と言われる。少し恥ずかしかったがよしとしよう。

 刀は変えないが技が増えたのが単純に嬉しい一日だった。

 ミアとヒナは面白くないのか、今度は私達の所!と探し始めた。帰りの車では刀を持ったまま眠るアズサが可愛かった。



 ホープクランにはいつもの様にアイテムボックスの依頼が来ている。渡しても良いのだけどキリがない。あまりにも激しい時は俺たちが出ていくがそう言う奴は二度と来ない。

「オークションに出品しますか?二枚くらい?」

「えー。僕がまた大変だよー」

「いや、毎日来るくらいだからオークションに出るってなったら来なくなるかなーって」

「それもあるなー、うーん」

「いやなら別に良いんですけど」

「いや、出品しよう。そうしよう」

「なら二枚渡しときますね」

 カードを二枚渡すと持っておいてくれと言われた。オークションの開催日まで待っておく。


「まーた、アイテムボックスだすみたいだな?」

「あぁ、このままだとうちに来るのがそれ系の人しかいなくなるからな」

「オークションにだしてそっちに向かせようってことか」

「そういうこと」

 いまは太郎と松崎さんと飲んでいる。

「いっそのこと注文は受け付けませんって出来ないのか?」

 松崎さんが言うが、

「それで来ないなんてこたないでしょ」

 太郎が突っ込む。

「それもそうか、定期的に出したら安定するかもしれんな」

「カードなんてそんなにでませんよ」

「そうそう、カードが出るんやったら目一杯活動してる」

 焼き鳥を食べながらしゃべる太郎。

「まぁ、普通よりは出やすいだけですよ」

「なに!そんな方法があるのか!」

「俺だけの秘密だ」

「なんだ、お前だけの特技かい。でも気をつけろよ?アイテムボックス狙いは梅田のやつらもいるからな」

「梅田って大阪クランの?」

「そう、ゴッツイのがいるみたいだから気を付けろよ?」

 大阪かぁ、秋葉クラブと同じくらい仲良くできれば良いけどな。



 ようやくオークションの日になった。

 またテレビ中継をやるみたいで、そこに集まったのはホープクランの面々に太郎と何故か三郎、松崎さんがいる。

「三郎はどうしたの?」

「なんか来たがったから連れてきた」

「うっす。よろしくお願いします」

「おう!」

「さあ、こんかいはどんだけになるか賭けるか?」

「えー、どーせ二枚あるんだし、そんなにはならないだろう」

「二枚とも欲しい奴らがいるはずだし五億は固いと思うぞ」

「まじか!」

「ほら始まる」

「では一億から」

「五億!」

「でました、最初から五億です」

「六億」

「六億一千万」

「六億二千万」

「六億二千万で落札」

 テレビの前では唖然としている。まだ一枚あるんだけど。

「二枚目も一億から」

「五億!」

「七億」

「七億で落札」

 十三億円っていくらだ?

 みんな黙っている。

「いや、これはやばいな」

 太郎が口を出す。

「だよな、こんな大金」

「そっちじゃなくてホープクランがだよ」

「え?なんで?」

「いまじゃアイテムボックスのカードはホープクランからしか出て来てない。絶対狙われるぞ」

「マジかよ」

 でもそうなんだよな。

「秋葉クラブでも出すか?」

「出しても良いけど代理ってバレるだろうな」

「だよね」

 はぁ、ダンジョンは少し休みだな。

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