第17話 天童


「ヒッヒヒ!」

「天童出てこい!いるのは分かってるんだぞ?」

「ヒッヒヒヒ」

「天童、お前何やって」

「こいつはアイツの肝だ!こいつがあればアイツを殺せる」

「天童……お前」

「さっさと呼んでこいよー!じゃねーとこいつ死んじまうじゃねぇーかよ!」

「行けっ!早く太郎さんに知らせろ!」

「分かった!」


 

「レクト!秋葉クラブの太郎から連絡!」

「は?なんで俺に?」

「いいから、焦ってるみたい!」

 ヒナからスマホを渡される。

「はい」

「レクトってお前がそうか?いますぐ!新宿駅裏の安井ビルに来い!早くしろ!」

「なんで?」

「お前松崎っての知ってるだろ!」

「な、お前松崎さんになんかしたのか!」

「早く来い!俺もすぐ向かう」


 車、いや走ったほうが早い!

「レクト!」

 急がなければ!松崎さん!



「どこだ!どこだよ!」

「こっちだ!」

 太郎が呼んでいる方のビルに走る。

「遅かったじゃあないか!」

「松崎さん!」

「やぁ、僕が松崎だよ」

 ボロボロになった松崎さんを持って天童が声を出す。

「テメェ!」

「まーだ生きてるよ!まだ死なせたら行けないからね」


「お前は助けろ」

 太郎が小声で言うと、

「天童!やめとけば見逃してやる!」

「はぁ?俺は秋葉クラブの為に動いてたのにクビにされたんだぞ?いまさら何を許すって?」

 俺は『収集』で松崎さんを目の前に連れてくるとありったけのポーションをぶっかける!

 シュウシュウと音を立てて治っていく松崎さんに安心していると。

「す、すまないなレク」

 “パンッ”と音がする。

 松崎さんの頭がビクッと動くと途端に血が吹き出す。ポーション!がない!

「これ使え!」

 太郎がポーションを投げつけるのでそれを使って松崎さんにかける。

“パンパンッ”と音がするが俺の背中に当たって弾ける。

「やっぱり銃じゃ殺せないかぁ」

「天童ぅ!テメェは!」

 太郎が天童の胸ぐらを掴むと天童は笑ってる。

「ヒッヒヒ、いまだろ?あいつを殺せるのは?」

「そんな卑怯な真似するわけねぇだろ!!」

「ヒッヒヒヒ、やれよ!秋葉クラブの為だろ?」

「テメェ天童!」


「松崎さん」

「松崎さん?」

 松崎さんは動かない、ポーションをかけて傷はなくなっているのに。

「松崎さん……松崎」

「起きろ!起きてくれよ!!」

「あ?う、うるせぇよ」

「松崎さん!!」


「あら、生きてたよ?死に損ないが…チャンスだったのに」

 天童は笑っている。

「あ?テメェは俺が殺す!」

「待て!うちの問題だ。悪いがこのまま連れて帰る」

「お前も殺してやるよ」

 魔刀雪中を出すと構える。

「やめろ!お前と争うつもりは無い!」

「関係ない松崎さんまで殺しそうになってもまだ我慢ができると思ってんのか?」

 俺は一閃を放つ。

“ガキンッ”

 三人の男が俺の一閃を止めに入る。

「ま…て。アイツを殺してどうする」

「そ、そうだよ。殺す価値もないだろ」

「お、お前が傷付くだけだ」

 同じ顔の男達が俺を止めている。

「太郎!急げ!」

「天童!こっちに来い!」


「まて!天童ぉ!」

 太郎が天童を連れていく。俺は三人に抑えられたままだ。

「うおぉぉぉおぉぉぉ!」

「や、ヤバい!」

「やめろ!」

「ウガァァ」

 俺を止められるのは誰もいない!


「や、やめろ」

「ま、松崎さん!動いたらダメですよ」

「らしくないぞ」

「そんなことないです!」

「また、こんど、飲みに行くだろ?」

「おい!ポーション持ってこい!」

「ここにある」

 ロン毛のやつがポーションを差し出すと取り上げて松崎さんに飲ませる。

「ぷはっ。何本使ってんだよ?高級品だろ?」

「松崎さん!」

 どうにかなった。良かった。

 松崎さんを抱きしめて無事だったのを喜ぶ。


「天童は俺たちがケリをつける」

「悪かった」

「悪かっただ?こっちは人一人死にそうになってんだよ!」

「本当にすまない」

「もうすぐ救急車がくる。それに乗って治療を受けてくれ」

「クソっ!!」

 救急車がすぐに来て松崎さんを乗せると俺も一緒に乗っていく。

 幸い弾は貫通していてポーションも使ったので異常はのこらないそうだ。


 能力者がノーマルを襲う。これは死刑になる。

 天童は警察に渡されて死刑囚として今も生きている。

 そのあと、秋葉クラブは誤りに来たが俺は会わなかった。ミアとヒナとマスターが、ことの顛末を知って怒っているのが聞こえたくらいだ。

 俺は会ったら何をするかわからないからな。無事だったアズサと部屋でテレビを見ていた。

 天童は諜報部員だったらしく俺のことを調べたらしい。そこで松崎さんを知って事に及んだ。そんなところだ。


「松崎さん!」

「おう!今日もゴチになるぜ」

「当たり前っすよ」

「なんだと、このやろう」

「ハハッ」

 松崎さんとは距離を置こうと思ったがそれだと守れないからなるべく近くにいる事にした。


 俺からは大切なものをもう奪わせない。

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