最終話 「ずっとお友達でいたいです」

【場面転換、藤吉ふじよしの部屋】


藤吉(心の声)「今日も疲れたなぁ……呑むか……」

(缶ビールを取り出して開ける)


(グビッと一口飲んでため息をつく)

藤吉「……はぁ~、うまい。やっぱり仕事終わりはこれに限るよなぁ……」


藤吉(心の声)「……毎日、こんなに静かだったっけか。なんだか寂しい感じがするな……。毎朝かかってきた電話もなくなって、もう何日だ……?(スマホのカレンダーアプリを開いて)……五日か。そんなに経ってないはずなのになぁ……」


(少し間をあけて)


藤吉(心の声)「まぁ、元の生活に戻っただけなんだけどな……。でも、なんていうか……物足りないんだよなぁ……。なんだろうな、この感じは……」

(風が窓を揺らす音)


藤吉「はぁ……テレビでも観るか……」

(テレビの電源をつける)


(ちょうどホラー映画が始まるところだった)

藤吉(心の声)「……おっ、ホラーか。これ、観たことあるけど面白かったんだよな。よし、今日はこれでいくか」


(しばらく映画を観ている)

藤吉(心の声)「確か、この辺りでゾンビが現れるんだよな……」


(ゾンビの唸り声とヒロインの悲鳴)

(ガタッという物音)

藤吉(心の声)「ん? 今、別の音がしなかったか? いや、気のせいだよな……」


(また画面上にゾンビが現れ、唸る)

(再び物音、少し大きめ)

藤吉(心の声)「なんか、隣から聞こえてくる気が……」


(ドタドタと走る足音)

(少ししてインターホンが鳴る)

藤吉(心の声)「ん? こんな時間に誰だ……?」


(ドアを開けると、星見ほしみがいる)

(星見は無言のまま、藤吉に抱きつく)

藤吉「うわっ!? 星見さん……!? どうしたんだよ!?」


星見「フジヨシさぁん……こわいぃ……(頭をぐりぐり押し付けて)」


藤吉「わかったから、一旦離れてくれないか? とりあえず中に入ろう、な?」


星見「うぅ……ごめんなさい……(離れる)」


藤吉「いいよいいよ、気にするなって。それより、何が……」

(部屋に入る二人、ちょうどテレビ画面いっぱいにゾンビが映し出される)

星見「ぃやあぁぁっ! ふぇぇぇ……(藤吉にしがみつく)」


(怯える星見を見て、なんとなく察する藤吉)

藤吉「あー……もしかして、星見さんもこの映画観てた?」


星見「ふぇっ!? な、なな、なんで……」


藤吉「あ、いや、その……さっき隣から物音がしたからさ、もしかしたらと思って……」


星見「そ、そうだったんですね~……。あはは、恥ずかしいなぁ~……(照れてる)」


(しばらく無言になる二人)


星見「あの……フジヨシさん……。やっぱり、わたし……フジヨシさんとずっとお友達でいたいです……。だから……これからも仲良くしてくれますか……?」


藤吉「星見さん……」


星見「一人でも平気だと思ってたんですけど……やっぱり無理でしたぁ~……。わたし、寂しがり屋みたいですぅ~……えへへぇ~……(照れたように)」


藤吉(心の声)「星見さんも、俺と同じ気持ちだったのか……。なんだ、そうだったのか……」

藤吉「……もちろんさ。今度は期限なんかなしで、これからもよろしくな」


星見「……!! はい!! こちらこそよろしくお願いしますぅ!!(嬉しそうに)」


藤吉「ああ。……そういえば、怖いのになんでホラーを観てたんだ? 観なければ良いんじゃ……」


星見「だってぇ……やってたら気になっちゃうじゃないですかぁ~!(半泣きになりながら)」


藤吉「ま、まぁそれもそうか……」


星見「うぅ~……一人じゃ怖いので、一緒に観てくれませんかぁ……?」


藤吉「え? ああ、構わないぞ」


星見「やったぁ~! ありがとうございますぅ~! えへへぇ~♪」


藤吉(心の声)「まったく……世話の焼ける隣人……いや、友人だな……」


(二人で鑑賞する)

星見「……手、握ってもらってもいいですかぁ?」


藤吉「ん?良いよ」

(手を握る)


星見「ふふっ……♪」

藤吉(心の声)「……うん、やっぱりこういうのが良いな」

(おしまい)

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ハーフエイリアンの星見さんは、地球人と仲良くなりたいらしい。 夜桜くらは @corone2121

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