第3話 天国と命と人間と

天国。


善人が行くところ…というよりは通常、死後に全ての生命が行くところという感じである。

ちなみに人間以外の生き物は全て天国行きだ。


大王とは言わないが閻魔という存在はいる。

地獄の魔(下界では鬼と呼ばれている)のリーダー格、それが閻魔である。

その閻魔が天国行きか地獄行きかを精査する。


その精査をするにあたって特に修羅場と化すのが人間が起こす『戦争』である。

お馬鹿な国の長が自国の民を巻き込んでやる大喧嘩のことだ。

人間という生き物には創造した僕らの予想を越えた知能があるのだから他に方法はいくらでもあるだろうに。

僕らがせっかく創った魂や体をあっさり大量に壊しまくってくれる。

おかげで一時、天界は人間の霊体でぎっしりになってしまう。

国の長の命令で仕方なく殺しあった、という複雑な状況ゆえ、天国か地獄か?というところで分けるのがまぁ大変なのだ。

戦争という状況に乗じて殺しを楽しんだ者、性暴力に走った者なんかは否応なしに地獄行きであるが。

理不尽な死を迎えた大量の霊体たちが混乱している中、しっかり精査して逝くべき方へ案内する。

ちなみに霊体は人間の型を成したままの姿で霊魂はいわゆる『人魂』というやつである。

人魂になるのは死後数年が経過してからで個人差がある。

転生する覚悟を決めた者、望んだ者が人魂になるのだ。

転生は強制ではなくあくまでも本人意志だ。


しかし何より殺された命というのは死を迎えた自覚がなかったり、未練が強かったりで導くのがなんとも大変なんだな。

人間に限り、だけどね。


人間以外の自然界の動物たちは命を奪われる際に生きるために必死に抵抗して生にしがみつきはするが、人間と比べて欲望が少ないせいか天界に来てしまえば割りとあっさりしている。

食う寝る遊ぶを繰り返した後、霊魂となり僅かな期間で転生していく。

人間が飼育している動物となると魂や心の在り方が変化するため、飼い主への情か未練か主がこちらへ来るまで待っていることもある。


人間は良くも悪くも同族から他種族まで影響を与えながら進化していく生き物らしい。


本当に創造した僕らにとっては想定外の『珍獣』なのだ。



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