8.初陣

 カ・ル・ネルズの要塞から出撃して。

 ガラウ・ル・ガエッダの平原に出撃し、敵の魔軍との激突が始まった。


「我々の獲物は、あの個体だぁっ!!」


 少尉天使セプナエルが。十人の俺達の隊を督して叫ぶ!!

 俺達の目の前には、黒い体毛を持った……イノシシオオカミ? みたいな敵がいる!!

 実にコイツはデカく、全長4m、高さ3mぐらいあるバケモン魔獣だった。


「……まずは。私がやってみるか」


 ミツグの奴が、背中の長弓を下ろし、矢を番えて弦を引く。


「それ!!」


 十分に引き絞って、放たれた矢は。


『グガッ!!』


 おおー! 見事にイノシシオオカミの目を貫いた!!


『ブルッ!! ブガァアアアアアア!!』


 しかし何というのか!! 実際それが、俺達の修羅場の始まりだったんだ!!


「ボアウルフは怯んだぞ!! 貴様ら、一気に寄せて討ち取れっ!!」


 セプナエルのクソやろー!! 自分だけは空中に飛び上がって、翼をはためかせて滞空。安全地帯から見守って、指示だけ出してきやがる!!


『ガッガァアアアアアア!!』


 ミツグに目を射抜かれた、ボアウルフとかいうらしいイノシシオオカミは。激怒していて、俺達の小隊に向かって全速力突撃してくる!!

 冗談じゃねえ! こんなの4tトラックが突っ込んでくるのと何が違うってんだ!!


「ミツグ、エイタ。見ていろよ? こういう時にはカウンターが入りやすい。俺が見せてやる」


 俺達の隊で、前からセプナエルの下にいたというローボールという名の木こりっぽい奴が、ニッと笑って背負っていたポールアクスを構え。


「みな、離れていろ!! ボアウルフの全力ブチかましをまともに喰らったら、内臓破裂で即死だぞっ!!」


 そう言いつつも、突っ込んでくるボアウルフに向かって、自分は突っ込む!!


「ずぁあああああいっ!!」


 そして、距離が近づいたとき! 裂帛の気合声を放って跳躍!! ポールアクスをボアウルフの頭に向かって振り下ろし!!


『!! ガギャァン!!』


 強烈な相対速度が転嫁されたカウンターアタックを叩き込むと!!


「ほらよっ!!」


 掛け声を残して、ポールアクスの長い柄で棒高跳びをするかのように、ボアウルフを飛び越えてあの魔獣の後ろ側に飛び降りるのだった。


『ガッグ……! ガハッハ……、ガラァ――――――――――ウゥ!!』


 だが、ボアウルフの生命力クソヤバい!

 ミツグとローボールの攻撃を受けてなお、満々たる戦意を全身から放っている。


『ボルァアアアアアアアアアア――――――――!!』


 むっ!! 何だこのボアウルフの叫び声!! 腹の底に、恐怖感を覚えさせるような。強烈な圧力!!


「しまった!! バインドボイス!! 貴様ら、動けるか?! 金縛りにかかったか?!」


 セプナエルの奴は、相変わらず滞空中。口だけを出してくる。


「やられた……!! 動けねぇっ!!」

「コイツの声、ヤバいよ!! 身体が勝手にビビっちまって……動かねぇっ!!」

「俺も、やられたみたいだ……!!」


 なんてこったい!! 俺とミツグ、後はローボール。そのほかに一人。

 それ以外の六人が、ボアウルフのバインドボイスにやられて、金縛り状態!!


 動きが取れなくなってる!!


「おい、ミツグ、エイタ、ローボール。私の刀で、あのボアウルフを殺る。手を貸せ!!」


 金縛りでやられなかった内の一人。コイツ確か……。シュルヴとか言ったな。着流しに刀装備の、軽装刀士。そいつが声をかけてくる。


「シュルヴか。やれるのか? また奴が突撃してきたら。動けない味方六人は甚大なダメージを貰う。それを見過ごすことは、この小隊という組織に所属している私には出来ん」


 ミツグが、意外に。組織大事という発言をする。


「アンタの腕が立つのは、俺は承知だ。シュルヴ。アンタのその刀で、あのボアウルフの腹かっさばいてくれよ」


 ローボールは、前からのシュルヴとの知り合いのようで。強い信頼を覚えている様子が見える。


「俺は……。どう動けばいいんだ? 済まないが、戦闘素人でさ」

「エイタ、君は。ローボールが突撃するから、その後ろにつけ。とにかく、あのボアウルフの注意を上の方に向けるんだ。そうしたら、がら空きになった腹を私が掻っ捌く!!」


 腰の刀をカチャリと動かして。


 シュルヴは自信満々にそう言うのだった!!


「さて、やるぞ。先ずは。私が奴のもう一つの目を撃ち抜く。それが合図だ」


 ミツグが、長弓に矢を番える。


「つづいて、出来た隙に。俺が突撃」


 ローボールがポールアクスを担ぎ構え、突撃の準備。


「それから、俺が。ボアウルフの背中に飛び乗って、槍を突き立てる」


 俺の役割はこう。


「最後に、注意が背に向かったボアウルフの腹を、私が刀で掻っ捌く」


 ドスの利いた視線を浮かべる、シュルヴ。


「「「「じゃあ、行くぜ!! 戦友っ!!」」」」


 俺達は声を揃えて、ボアウルフへの攻撃を開始した!!

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パーティカルプロダクション・ワールドストーリー ~召喚されたら特殊粒子生産世界で末端戦士に「ならされた」事~ べいちき @yakitoriyaroho

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