第14話 四天王

 「師匠、終わりましたか?」


 「ええ、ケントも終わったのね」


 「はい、結構危なかったですけどメガリアさんの助言のおかげで」


 「そう、私の相手はかなり強かったわ。正直、狡猾でなかったのが幸いしたわ。賢いけれど、卑怯な手は使わなかった。もし、使われていたら私も体力の温存は出来ていなかったかも」


 「それほどですか……」


 師匠は、俺と共に鍛錬を積み重ね。魔術による神級魔法の再現に成功している。つまり、一撃必殺を隠し持っているのだ。俺はまだ、最上級魔法までしか使えないが魔力量は大きく伸び師匠にも引けを取らない。

 つまり、余裕があるのだ。


 「指揮を失った魔王軍は、おそらくは散り散りになると思うの。だから、邪魔が入らないうちに魔王四天王ガビを倒しておいた方がいいわ」


 「ガビですか、神級まで使えると噂の風系魔法を極めた魔族。彼女が、この森に?」


 「そうよ、森の管理人ガビ。それが、彼女の二つ名よ。おそらく、この魔の森にいるわ」


 「気配でも感じるのですか?」


 「気配とは違うわね、勘よ。四天王は、一つの場所に二人以上は現れない。もちろん、今までの歴史の傾向だからイレギュラーな今回は違うかもしれないけど」


 「今までの戦争では、魔の森にいたと?」


 「ええ、そういうことよ」


 師匠は、そう言うと「付いてきて」と言って足早に走り出した。


 *


 「師匠、どう考えてもここにいますよ」


 「そうね。どうやって、壊そうかしら」


 森の中、不自然に集まるツタの塊。魔力も感じる。

 きっと、この中にいる。だが、反応はない。


 「俺がやりますね、炎爆裂エクスプロージョン


 大きな火柱が立ち、そのツタを燃やす。

 ――その中から、現れたのは緑色の髪をたなびかせる女性。


 「ガビ……か」


 「これが、四天王」


 「ハハハハハ、私を起こすのが人間とはね。魔王様は、まだ復活していないの?」


 ――何を言ってるんだ。


 「あれ~?なんで、懐かしいんだろう。魔王様は、居ないのに」


 ガビ……まさか、こいつ。今の状況を知らないのか?


 「あなた、ガビよね?魔王四天王の」


 「ん~、そうだよ~。でも、魔王様は見えない。どこにも、見えない」


 師匠の質問に、不思議な表情で答えるガビ。魔王が、四天王を起こしていない?

 イレギュラー、そうか。魔王は、違う……人なんだろうか。


 今までの、魔王じゃない?


 「まぁ、いっか。人間殺してれば、魔王様は喜ぶよね」


 そう言って、彼女は風魔法を展開した。

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