第15話 ガビ
「風よ、全てを飲み込め、全てを荒らせ、暴殺せよ。
可愛らしい声でガビは、そう叫ぶ。
風系の最上級魔法
「地よ、叩き落せ。
「地よ、全てを均せ、全てを崩せ。
俺は、地系の中級魔法の
師匠は、地系の最上級魔法である
「っちぇ……、めんどくさいの」
舌打ちにも聞こえる音を、鳴らすとガビはすぐさま行動に出た。
「
氷の槍を、俺の壁に突き刺すと壁に隠れている俺に対して雪崩を起こした。壁ごと俺を、押しつぶす気か。
「
俺は、
「逃げてばっかじゃ、勝てないよー」
「そんなの、分かってる。でも、俺は一人じゃないぞ」
「……!」
「私のこと、忘れないでよね。
俺のことを追っていたガビは、師匠のことを目線から外した。
「
……
「ぷっはー、危ないとこだったよ。それにしても、そこの少年。その魔法をどこで覚えた?」
猛攻から逃れたガビは目を開き、威圧させるような声で俺に尋ねた。
「これは、俺の核に刻まれてる魔法だ。どこで覚えたなんて、分かんねぇ。生まれときから持ってた」
「……!?嘘だ、嘘をつくんじゃない!」
こいつ、どうしたんだ?
この異系と呼ばれる魔法に何か隠された秘密でもあるのか?
「ケント、後ろ!」
師匠からの警告が無かったら、死んでた。風系の中級魔法なら、無詠唱で行使できるのか?中級魔法の
時間が掛かれば、死んでもおかしくない。それに、ここで師匠の魔法を使わせるわけにはいかないしな。
「
魔力の消費は、上級レベルだが効果は折り紙つきだ。
「貴様……なぜ、異形魔法を扱えるんだ!」
どうやら、ガビは異形魔法に過剰に反応するようだな。でも、それのおかげで冷静さが無くなるなら楽だ。
「
――速い、この速度ならいける!
「風よ、導け、封じよ、無へとなりて、飲み込め。
神級の風魔法――!?
「
真正面を突っ切る!俺の右足と左手にすべてのダメージを肩代わりさせる。
腕が弾け飛び、足も引き裂かれる。だが、この体になってから痛覚はない。
そして、これで届く!
「
「そんな魔法、私には効かない!」
異形最上級――触れたモノのすべての生命エネルギーを無へと変える魔法。……代償は、俺の痛覚だ。
「
「なぜ、魔王様の魔法を―――……」
ガビは、言葉を言い終える前に息絶えた。そして、
「うああああ、ぐっ……あああぁぁ」
痛い。痛みがどこか別次元に感じる痛み。これが、身体が弾け飛んだ痛みか。
「うああああああああ」
落ち着け。師匠が、治療してくれるはずだ。気を失うな、慣れろ。これからは、痛みを感じるようになるんだから。
「生命を癒し、身体を修復せよ。
「う、うぅぅ……」
「大丈夫よ、落ち着いて。治癒したわ、痛みも引いていくはずよ」
師匠の、上級光魔法
「師匠、俺――勝ちましたよ」
「ええ、本当にすごいわ。大丈夫、ゆっくり休んでちょうだい」
「でも、魔王が――」
「ダメよ、今は貴方の体調の方が大事なの」
「師匠……?」
「だから、もうこんな無茶しないでよね」
師匠は、涙を浮かべていた。
ああ、そうか。俺って、師匠にとって大事な弟子なんだな。
――なんでだろ、俺……なんだか嬉しいや。
「分かりました、師匠。だから、師匠も……死なないでよ?」
「もちろんよ」
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