第4話 魔法 鎖剣《チェーンソード》

 「そう、あなたの魔法を教えてほしいの」


 「そんなこと言われても、俺にも分からないんですよ」


 「うーん、魔力を感じてみて」


 「魔力を感じる、ですか?」

 

 そう言われても...いや、ラノベとかだとこういうときどうしてたんだっけ。うーむ、難しいことを...。せめて、アドバイスがあれば――


 「やっぱり、難しいわよね。目を閉じて、自分の身体の中を覗くように瞑想をしてみて。きっと、身体の中心にあるはずよ。不思議な感覚が」


 「やってみます」


 ふぅ...と深呼吸をして、ゆっくりと目を閉じる。

 暗い。真っ暗だ。俺の身体の中には、何がある?血が流れている、心臓から脈を感じる。ゾンビになってからは、そういえば鼓動を感じなかったな。じゃあ、これは一体なんだ?覗き込むように、身体の中心を想像していると微かに光のようなものを感じた。これは、魔力か?


 「師匠、白い光のようなものが見えます」


 「それは、魔力よ。私たちがもつ、根源的なもの。魔法や魔術を扱うのに必要なもう一つの命。その奥に、さらに隠れたものは見えるかしら?」


 さらに奥か。渦を巻くように、包まれているな。ん?小さな四角形、いや三角形か?...変形してる何かを感じた。まさか、これが魔力に隠されたもの?


 「師匠、魔力の中に形が定まらないのですが黒い何かを感じました」


 「形が定まらない?...そう、それが魔力に守られた核よ。魔法が、そこに刻まれているはずよ。それに、魔力を制御するためにも必要なものよ」


 「核?」


 「ええ、それがあれば魔力を制御できるわ。それに、あなたの場合は複数の魔法がそこに刻まれているはずよ」


 「刻まれている...?」


 「そう、よーく見てみて。感じられるはずよ、初めは一つや二つかもしれないけどあなたはきっと多くの魔力が刻まれているはず」


 この黒いものに刻まれている?...何かが見えるわけではないけど、確かに感じる。何かが、読める?


 「感じられたようね、さぁ、口に出してみて」


 「は、はい。鎖剣チェーンソード


 俺が口から鎖剣チェーンソードと、発するとジャラジャラという金属同士が衝突しているような音が鳴りその瞬間、右手に鎖が出現した。それも、ただの鎖ではなかった。


 「鎖のようね。それも、伸縮している。それは、あなたの意志で操れるの?」


 「はい、完璧に制御できるかは分かりませんが確かに操れます。それも、重さを感じない」


 「重さを感じない。...もしかして、浮いてるってことかしら。言われてみれば、微かに――」


 俺の握っている数mの鎖は、地面に付くことはなく微かに浮いている。それも、俺が少し念じれば頭よりも高く浮く。それに、この鎖は切れ味が抜群のようだ。鎖で首を絞めるとか、鞭のように振るうというわけではないようで少し安心した。

 それにしても、どうやって使えばいいんだろう。


 「ケント、右手を離してみて」


 「は、はい――....まだ浮いてる?」


 鎖を離し、そのまま地面に付くと思ったが手から離れても落ちることはなかった。


 「どうやら、あなたから魔力をもらい続けている間は浮き続けるようね。それに、あなたの意志でその鎖のように長く刃物ように鋭利な物体を動かすことができる」


 「師匠は、これを知らないんですか?」


 「ええ、私も初めて見たわ。不思議な魔法というと、魔王という存在が異系と呼ばれる不思議な魔法を扱うと聞いたことがあるわ。もしかしたら、あなたは魔王なのかしら?」


 「え、そうなんですか!?」


 「いえ、別に深い意味はないわ。ただ、魔王の復活を感じることは出来たのだけど魔王がどこでどのように誕生したのかは分かっていないの。だから、あなたの可能性もあるって、そんなわけないわよね。魔王は魔族から生まれると聞くし、そうなれば人間に恨みを抱いているはずだし、下級のゾンビであるあなたが魔王のわけもないか。それに、魔王だとしても私があなたを討伐するだけだしね」


 「え、あ、はい。そうですね」


 正直、俺も分からないんだよな。俺が魔王とか、いざという時は俺を殺すとか。いきなり言われても実感できないし、想像するのも無理がある。でも、師匠の考え方はこの世界では必要な危機管理能力としても必要なのかも。

 ――『どう?おいしい?』

 なんで、朝の師匠の顔を今思い浮かべたんだ。


 「偉いわ、すごいわよ。ケント、あなたは本当に天才ね」


 「し、師匠?」


 「どうかした?面と向かって、褒められるのは恥ずかしい?」


 「い、いや。そんなのじゃないよ」


 「じゃあ、頭を貸して」


 「こ、こうですか?」


 師匠は俺のほうへ寄ってくると、褒めてあげると言って俺の差し出した頭を撫で始めた。


 「し、師匠!?な、なにしてるんですか!」


 「あら、嫌かしら?」


 「そ、そういうわけじゃ。ちょっと、驚いただけで」


 ぐぬぬ、こんな美人に頭を撫でられて嬉しくないわけがない。ここは、この幸せを享受するしかない。それにしても、師匠はこう見ると綺麗だな。考えたこともなかったけど、ここに来る前は何をしてたんだろう。

 まさか、ずっとここで暮らしてたわけないし。


 「はい、終わり。もう、こんな時間よ。昼食を準備するわ、さぁ中に入って。疲れたでしょう?今日は、ゆっくり休みなさい。ケント」


 「は、はい。師匠、ありがとうございます」


 「ありがとうございますって、私が言いたいぐらいよ。私のために、いえ私の弟子になってくれてありがとう」


 師匠はそう言って、笑って見せた。

 俺は、師匠に置いていかれないように小屋へと入っていった。


 「そういえば、鎖剣チェーンソードはどうしようかな」


 消えろ――解除――


 そう念じてみると、静かにどこかへと消えていき成功したことが分かった。師匠に教わっていないところも、出来たぞ。やっぱり、俺は天才なのかもしれない。そんなわけないんだろうけどね。


 *


 「さぁ、昼食を召し上がれ」


 師匠はそう言って、笑顔を見せながら料理を机に並べた。




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転生したらゾンビでしたが 国家MAP ベル大陸 (国家名、国境)

https://kakuyomu.jp/my/news/16817330660067246151

転生したらゾンビでしたが 地理MAP ベル大陸 (森、川、山脈)

https://kakuyomu.jp/my/news/16817330660068025778


小説内でも説明しますが、事前に出しておきます。こちらのほうが、分かりやすいと思いまして。

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