後日談

数日後、ゼノはアグリーツァの酒場に、なんとあのリヴィドの女王様から招かれた。その場面にはローズ、マキナ、ベルナ、リン、ナターシャも同行した。


広間に入ると、大きな机の上に豪華な料理が並べられ、リヴィドの女王は笑顔で出迎えた。


「おかえりなさい。みんな」


「おう、ただいま」


「お母さん!」


リンが女王に抱きついた。まだ若く見える。成人をギリギリ迎えたくらいではないだろうかというほどだ。


「え?リンのお母さんって…」


「教えたら萎縮しちゃうかなって…あはは…」


「そういう大切なことは伝えないとダメでしょ?」


「あはは…ごめんなさい」


「それで…えっと、ほかの人たちは?」


先には女王の他にすでに4人、席についていた。その中によく知る顔が1人…


「や、また会ったね」


「え、エンバージュ!?」


「今はクロードだ」


そう言うクロードは笑いを堪えられていなかった。


「家族だけを招いたと聞いていたがな」


ゼロも少し訝しげに言う。


「よく考えてもみろよ、僕、君のコピー人間だろう?ならそれは実質君の子供ってことさ。ほら、お父さん?」


ゼロは照れる顔を隠した。


「うるせぇ!200歳年上の子供がいてたまるかってんだ!」


「心外だよ父さん…しくしく…」


「「「あの…」」」


口を揃えた3人。ナターシャ、ローズ、マキナだ。


「どうして母さんまで?」「「どうして先生が?」」


クロードの隣に座る赤髪の女性。こちらもまた、先生という割に随分と若く見える。この女は…かのマリー・メリア・ベルナールだ…


「クロードがゼロの家族なら、クロードの妻たる私も家族でしょ?」


「…え!?エンバージュとベルナールが結婚してたってこと…!?」


「…マリー、実の娘に隠してたの?」


これにはクロードすら驚いていた。どうやら、てっきりナターシャは知っていると彼は思っていたわけだ。


「全部包み隠さず言えと?それはそれで問題じゃない」


「まぁ…そうだけど…こほん、まだ紹介が済んでいない人がいるだろ?」


女王を軸に、クロード、マリーと対照の位置に座る2人の女性。随分と若い。だがおそらく、この2人もそれなりに歳はとっているだろう。


「僕からでいいかな?やぁ、ゼロの息子君。ヘルミナ・アラン・モロー。ローズの母親さ。僕のことも母として扱ってくれて構わない。娘が世話になったね」


「よ、よろしく…」


「ふふ、緊張しているのかい?でもメインは僕じゃないんだ。そうだ、愛しのローズ、おかえり」


「…ただいま」


この空気はどうしてくれると言わんばかりに、ローズも恥ずかしげに顔を背ける。


「じゃあ貴女は…?」


最後に残ったのはお淑やかな女性。白い髪を後ろで束ね、この中で最も肌の弱そうなこと、見ていて心配になる。


「ユイ…氷雨結と申します。貴方の母でございます」


「母さん…?」


「ええ、母です。此度の騒動、助力に間に合わなかったことを悔いておりますゆえ、今後は何卒よろしくお願いします。ね?」


視界の端が歪む。ようやく、ようやく両親に会えた。これ以上の幸せはなかった。


「そうそう…貴方にとっては初めましてですが、私にとってはお久しぶり、ということです。ですがここは宴の場。私ばかり目立ってはいけません。ささ、皆様方、お食事に手をつけないと冷めてしまいますよ?」


それからというもの、皆は思い出を語り、嫌なことを忘れて盛り上がった。ゼノは宴会が解散した後、1人で夜空を見上げて涙を流した。誰にも見られず、誰にも見せなかった。


「…この幸せが、どうか俺の運命でありますように」


そう祈りながら…






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ヤンデレな女王様から逃げて冒険者に!進んでも退いても地獄なんだが? Jack4l&芋ケンプ @imo_kenp

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