26 緑の奇跡を起こす皇太子妃

 サスペンダー公爵令嬢の騒動から一年。私は枯れた木々を蘇らせ、新たな命を吹き込む。私を人々は「妖精王の愛し子」や「緑の奇跡」と呼んだ。私が触れた木は不思議な力で再び生命を取り戻し、新緑が広がっていくのよ。


 私が触れた瞬間、木々は再び芽吹き、根が地中深くに張り巡らされるのを感じた。荒れ地には綺麗な花々が咲き乱れ、それは花だけにとどまらずその地全体を活気づけ、命を宿らせる肥沃な土地に変えていった。


 そんななか、私とヴァルナス皇太子殿下は愛を育む。


「結婚式はしなくて良いです。だって私はルコント王国では亡くなった身ですから」


「いや、結婚式は盛大にする。あちらの王族を招き、ステファニーが幸せになったことを知らせてやろう。もちろんステファニーの両親も招くさ」


「え? お父様達も? お父様やお母様達はお元気なのでしょうか? 来て頂けるのかしら?」

「俺がステフの両親を放っておくと思ったか? かなり前から連絡をとっていた。逐一ステフのことは知らせていたし、あちらの屋敷の警護も帝国の騎士達を向かわせ、邪悪な王妃から守っていたのだ」


 私は今までずっとお父様達には二度と会えないと思っていたのに、それが会えるとわかりヴァルナス皇太子殿下に抱きついた。


「ありがとうございます! 最高の私へのプレゼントですわ」


 ヴァルナス皇太子殿下は満足そうに微笑んだ。私は大好きな彼の耳を優しく撫でた。彼の尻尾は穏やかに揺れていて、リラックスして機嫌がいいことを物語っていた。








 その頃ルコント王国ではブリュボン帝国からの、皇太子の結婚式の招待状に騒然となっていた。

「なぜあまり国交のない小国の私達に招待状がきたのかしら?」

 キャサリン王妃が首を傾げる。


「とにかく、あちらは豊かで軍事力もなにもかもが我が国より上だ。この機会に仲良くしておけば損はない」

 国王は大国に取り入る気満々で下卑た笑みを浮かべた。


「そういえば皇太子妃になられる方は緑の髪をもち、「妖精王の愛し子」と呼ばれているそうです。荒れ地を緑豊かな土地に変えることができると聞きました。このルコント王国にも手を貸してくださるようにお願いしたらどうでしょうか?」


 レオナード王太子は期待に胸をはずませ、傍らには王太子妃となったバーバラが寄り添っていたのだった。


 

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