第9話 液体図書

 液体図書館に行くと液体図書がずらりと液体書架に並んでいる。どうして図書館だけ、本棚のことを書架というのかぼくは知らない。知らないけども書架という言葉をぼくは使える。スマホと同じだ。こんなかまぼこ板がなんで世界と繋がれるのか、仕組みは知らない。


 液体図書には液体作家の書いた本があり、表紙を開くとどろりと中身が溢れる。甘酸っぱい恋愛小説、毒々しいサイコホラー、若手作家のみずみずしい文体。


 借りれるのはだいたい十冊までだ。ぼくはなるべく内容量の多いのを好む。貧乏性というか、図書館は、無料なのだけれども、やはり分量が多いと何故か得した気になる。なので京極汁彦や貫井毒郎なんかが好きだ。


 液体図書館に来るのは液体人間ばかりだ。あちこちどろどろしちゃって困る。駅前には乾燥人間に向けた乾燥図書館もあるという。どこもかしこも、パサパサしてるんだろうなあ。

 

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