流れ星を届けに

 流れ星をポケットに入れて、あたしはうきうきと宙を舞った。ポケットがきらきらと光っているのが分かる。これ、アオにあげるんだ!


 あたしは精霊のニナ。神さまのお気に入りなのよ。アオはね、雷なの。七代目のセント・エルモなんだよ。雷撃出せるの。かっこいいでしょう。アオはあたしの仲良しなんだ。


 夜ね、眠っていたら、きらきらひかるものが、空から落ちてきたの。

 群青色の空にひかる筋を作って、光をにじませて落ちて来た、星。

 あたしは、地面に落ちた流れ星をそっと拾ったの。すっごくきれい。

 手の上で、ひかる球体は、光の波動を空気に伝えながらじんわりとあたたかく、夜にやさしさをもたらした。あたしは流れ星を見ていたら、すぐにアオに会いに行きたくなったの。これ、アオにあげたいな。だって、すっごくきれいでやさしいんだもの。


 そんなわけで、あたしは夜のお散歩に出ている。アオんちはもうすぐだ。

 あたしはアオのうちの扉をノックした。

「アオ、開けて。あたしよ」

 すぐに扉が開いた。

「ニナちゃん! どうしたの? こんな時間に」

「あのね、あたしね、アオにこれあげたくて」

 あたしはポケットから流れ星を出してアオに渡した。

「わあ、きれいだね」

 アオの手のひらに乗ると、それはちっちゃくなっちゃったけど、でもやっぱりきらきらしていてきれいだった。

「ニナちゃん、ありがと」

 アオはあたしをそっと手のひらに乗せた。あたしは嬉しくて、アオの親指にしがみついた。


 そのとき。

 空から、いくつもの光のつぶが降って来た。

「アオ、見て!」

「ほんとうだ。流星群だ!」

「きれい」

「うん」

 あたしはアオといっしょにしばらく流星群を見ていた。


「ねえ、あっちの森の方に落ちたみたい」

「行ってみよう!」

 アオはあたしを頭の上に乗せると、森に向かって歩き出した。森はオーロラの泉がある森だった。森に入って、流れ星の光の筋をたどっていくと、流れ星はオーロラの泉に吸い込まれていた。きらきらした星ぼしが、尾を引いてオーロラの泉に吸い込まれ、オーロラの泉はしろい光を出して輝いていた。


「ねえ、アオ。この流れ星、取れる?」

「うん、取れるよ」

 アオはポケットから布袋を出して、流れ星をいっぱいに集めた。

「はい、ニナちゃん」

「あのね、これね、モーブとライラにあげたいんだ」

「いいね! 虹のふもとに行こう!」

「うん!」

 あたしたちは虹のふもとに向かった。


 そうして、虹のふもとにある鏡の池から人間界を見て、モーブとライラの姿を見つけた。ふたりとも眠っていた。脱いだブーツがふたりが寝ているベッドのわきに置かれていた。

 神さまの娘リリー・ホワイトの子孫たち。どうか、しあわせになって。

 鏡の池に流れ星を垂らす。

 すると、流れ星はモーブとライラのブーツの中いっぱいに入った。流れ星で満たされたブーツは、きらきらと光を放ち始めた。そして、流れ星の輝きはふたりの部屋いっぱいに広がって、やさしいしろい光でモーブとライラを包み込んだ。


「しあわせになってね」あたしは小さくつぶやいた。

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精霊ニナと小鬼のレイと雷のアオの物語 西しまこ @nishi-shima

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